モッチリ遅いコメの距離感

オーディオルーム、シアター、注文住宅などに関してのblog。

あえて理詰めでリスニングルーム内装デザインについて考える①

2023-01-11 17:34:54 | オーディオ
リスニングルームは比較的よくあるパターンとして、「木の部屋」という感じの内装になりがちである。
塗装が少ない方が高域が吸収されづらいためそれを期待してと言うのもあるが、リスニングルーム内装には木目の美しい硬質の木材を使うことが多いので、木材の美しさを隠す必要性を感じないという意味でもそうなりがちである。
コンサートホールのような内装感を出すというのもあるかもしれない。
ただリスニングルームにとって上質な木材の美しさや木の色の落ち着く色味が無難すぎるだけに、思考停止して木材の色を多用しすぎている印象があるのではないかと思えてくる。

リスニングルームのインテリアデザインについて考える際にデザインは感性の話にはなってくるので理屈でどうこうするよりもデザインセンスが重要であるという話にはなりやすい。
ただ理屈で追求した場合に、○○といったデザインが適性があるという発見もあるとは思う。
なので理詰めでリスニングルームはどのようなインテリアデザインが適性が高いのかを考えていきたいと思う。

まず内装について考える必要として、音の空間印象が視覚情報と相互に影響を受けているということがある。言い方を変えればプラシーボなのかもしれないが、実際の知覚に影響があることが証明されているのであれば、それを無下に扱うわけにもいかない。
音源の距離感、音の奥行き感、音の親密性、音の広がり感、残響感が視覚による影響を受けていると言われている。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/78/8/78_437/_article/-char/ja

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/72/11/72_684/_pdf
などなど

視覚情報を誤魔化せば音が良くなるとまでは言わないが、視聴覚統合感覚として良好な再生環境であることはリスニングルームにとってそこそこ大事なものではないだろうか?
視覚情報の聴覚への影響の論文を広く深く読んでいる訳では無いのだが、空間として広く感じさせるインテリアデザインによって音の距離感、奥行き感、広がり感、残響感を広げるもしくは増やす方向の作用を期待できるだろう(過信は禁物であはあるが)。

インテリアデザインで部屋を広く見せるというノウハウは蓄積されている分野ではあるので、それを積極的に取り入れた方が良さそうだという理屈にはなる。

部屋のインテリアデザインと再生音質との関連としてもう一つの懸念がある。
それは視覚情報が脳内情報処理においてノイズとなり得るということである。
音楽鑑賞している時にも聴覚情報以外に様々な感覚情報を脳内では処理している。
その中でも聴覚情報以外の感覚で大きなウエイトを占めているのは明らかに視覚情報である。
目を閉じていれば視覚情報は入ってこないが、音楽再生中にずっと目を瞑っている訳にはいかない。
なので目を開けていても視覚刺激が少ない方が音楽鑑賞に支障がないということになり、より深い感動へと結びつくものとなりうる。
視覚刺激を少なくするためにどうするかと言えば、強い光刺激を避ける(目に直接光が入らないようにする)、彩度の低い色調を多用する(極彩色<モノトーン)などが良いと考えられる。

ただ問題となるのは前半で述べた「広い空間に見せた方が広い空間の音のようになるので望ましい」ということと、「穏やかな光でモノトーンにした方が音に集中できるから望ましい」ということとは一部矛盾をした部分を持っている。
モノトーンで黒い壁にして暗めの部屋にした場合は音には集中しやすいが、黒い内装は部屋を狭く感じさせ圧迫感を感じさせる作用があるので、視覚情報の影響で音像が近く狭い響きに感じさせてしまう可能性が高い。
これに関しては視覚の刺激を不用意に増やさないことを優先すべきな気はする。
室内が実際より広いと錯覚させるための視覚刺激をたくさん与えて「広い空間の響き」に錯覚させることに脳のリソースの多くを消費させたとしても、
それによってこの視聴体験が良い音だと感動してくれるものになるかというと、そうならない可能性が十分ありそうだからだ。

とは言えそういった別の要素とバッティングしない程度に、より広く見せるようなインテリアを意識するのは音にとっても有益とは言えるので、軽んじるべきでは無いと思われる。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする