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モッチリ遅いコメの距離感

オーディオルーム、シアター、注文住宅などに関してのblog。

窓に棚型の引き戸と付けるという考え方

2021-09-18 07:36:44 | オーディオ
仮想のリスニングルームで正面壁をどのようにデザインするかというのは以前から悩んでいた。
なぜならリスニングポジションで鑑賞する際に、毎回その壁と相対するので必然的にその部屋の顔となる主役となる壁だからである。何度もその壁を見る機会が多いので相応に考えられたデザインをすべきである。
一つの発想として、床の間のアレンジを加えたものを以前考えたが、機能として必要なものを具備しつつデザインとして定評のあるものを借りることで一定のデザイン性を担保したかったという動機が否めない。
もう少し機能の面を突き詰める姿勢が足りなかったのではないかと感じ始めているので、そのあたりを少し考えてみたい。

リスニングポジションの正面に坪庭鑑賞用の窓ガラスを設置する発想は維持しつつも、以前の床の間のデザインだと窓の大きさが一次反射面を避けることを目的に細長い小さなものに制限しなければならなかった。
窓に内扉を設置することで窓ガラスの悪影響を排除したいときに閉めればいいという発想だったが、内扉を開放したときの見た目があまり配慮されていなかったし、内扉を閉鎖した時にも窓ガラスの影響を排除できるが内扉自体の音響調整が十分出来ないことも問題だった。
そのためこのあたりの設計をもう一度やり直すことにした。窓の内扉を障子戸のような引き戸にしつつ、引き戸自体を厚みもあり背板もある棚にして組み込んでみる。



これだと内扉を閉鎖したときにも音響処理の自由度がかなり高い上に窓ガラスの悪影響も排除できる。窓ガラス部分を一次反射面と干渉するほど大きくしてもあまり問題ない。

棚型の引き戸を閉めたとき。

ライティングや配色をし直せば分からないが、デザイン性はイマイチなのでその辺りは再考の余地はあるだろう。

床柱をまた付けてみる






胸を張れるほど煮詰められた設計ではないが、生活という側面と音響という側面の双方が相反しづらい設計としては以前よりは改良されている感触はある。

アンプ収納に床下空間を利用する案

2021-09-16 17:48:54 | オーディオ
一般的にはスピーカーとリスニングポイントの間の空間の床にはあまり物を置かない方が良いと言われている。特にその3点が作る二等辺三角形に言われることもある。

物というのが剛性が高い物低い物問わず言われる傾向にあり、
自分としても排除した方がすっきりした音になるという印象を感じることがあった。

原因としては反射率や吸音率が変わってしまうことも考えられるが、剛性の高さに関わらず言われるものであり、それだけでは説明がつかない。
反射特性の左右対称性が崩れてステレオフォニックの音像に影響がでるからとも考えられるが、左右対称に物を置いたとしたらすべてが解決するとは思えない。
おそらく物を置いた分高さが出て、その部分の反射音が早く到来することにより、同一音として知覚される直接音の聴感上の印象に影響が出ていることがメインの原因ではないかと思っている。

話題は変わるが、スピーカーからアンプの距離を最小としたい場合、スピーカーの間が最短距離となる。もちろんモノラルアンプを使えばそうとも言えないが、プリアンプからモノラル処理をするケースはあまり多くないので、ケーブルを短くしたいのであればプリアンプのみかパワーアンプも含めてかは別としてスピーカーの間の空間にアンプを置きたいという気持ちはある。

またアンプなどのオーディオ機器をゴテゴテと目立つ場所に置きたくないという感情もある。

その3つの懸念を統合すると、スピーカーの間のどこかに音響的に問題が起こらないようにしつつ、かつ視覚的に目立たないようにアンプを設置できないかと考えたくなってくる。

以前に少し考えたように全て床を下げると建物の剛性が下がるので、一部のみを下げるというコンセプトを応用してアンプを収納する床下スペースを作ると良いのではないかと思えてくる。それは床下を通してケーブル接続もしやすくなるメリットもある。

オットマンの少し向こうにアンプ用床下空間を作った場合

あまり収まりが良くないようにみえる。ど真ん中に穴があるのも邪魔に思える。

スピーカーのちょうど中間に床下空間を作った場合


ケーブルは最短化できるがあまりきれいに収まっている感がない

床の間の下に床下空間を作った場合

収まりは比較的良いが、ケーブルの長さの節約効果はあまりなくなってしまった。
そこまでしてアンプを隠したいのかとも思える。
今回の案はあまり良い物ではなかったようだ。

ビクターのプロジェクター新モデル

2021-09-13 12:50:30 | ホームシアター
以前も正式発表されていないながらもJVCから出ると言われていた新しいプロジェクターについて書いたことがあったが、
今回DLA-V90R、80R、70Rが正式発表された。
税込みで125〜275万で、全てのモデルに画素ずらしで8Kを対応しつつ、オールガラスレンズを装備し、レーザー光源を採用している。

正直ずらし8Kやオールガラスやレーザー光源のうちのどれかは80R、70Rでは省略されているのではないかと想定していただけに良い方向でのサプライズ感はある。

8Kはテレビでも高額なだけにローエンドモデルは単純に8Kコンテンツの再生機器としてもコスパが良いのではないだろうか。ただずらしの8Kである上にコンテンツが追加される見通しが厳しいので需要があるかは別の話にはなってしまうが。

認識としては4Kコンテンツをさらにアップスケーリング余裕を持って再生でき、
レーザー光源で俊敏な立ち上がりと長寿命を実現し、
8Kも対応できるであろうにじみの少ないレンズを採用しているという印象で、
今後マイナーチェンジはあるかもしれないが、今購入すれば当面陳腐化はしないであろうスペックと思われる。

4K対応に買い替えるとしたら、ほぼ一択な状態かもしれないが、4K以上の映像コンテンツの利用状況を考えると個人的には急がなくてもよさそうだ。

慣れと飽きと欠点について

2021-09-10 13:35:25 | オーディオ
仮に極上のオーディオシステムと極上のリスニングルームと極上のセッティングが手に入ったとしよう。恐らく完成直後はその音に大きな感動があるだろう。
ただ数年使ってみるとどうか?
最高のものであれば不満に感じることはないかもしれないが、当初のような大きな感動が維持できる訳では無いだろう。その音に慣れて当たり前になってしまえば良い音かもしれないが音質的な感動は薄れていくのは宿命である。
何もこれはオーディオだけでなく他の事にも当てはまる。

飽きてきた場合にオーディオ機器の買い替えを行いリフレッシュさせることはよくあるがリスニングルームの場合そう簡単に買い替えられない。
そういう意味でも響きの可変性の高さを最初から重視して作るべきだという持論は堅持すべきものと改めて思うのだが、その観点から見ると他のことも見えてくる。

音質的音響的に良いことを突き詰めて行くと、究極的なものは視覚的に異質で居住性が微妙なものになる傾向がある。
先の話で、音質的な感動は利用時間とともに多少は薄れていくものだが、欠点の不満感に関しては多くの場合は利用時間とともに不満感が増大する傾向があるのではないかと思う(慣れることもできるという見方もできるが)。

なぜかというと、ある程度オーディオをやっている人というのはオーディオに関して向上心を持っているからである。
向上心を持っていないなら最初に買ったコンポーネントから良くしようと思わないので壊れない限りは音質的に満足でも不満でも買い替えない。なのでオーディオ趣味を持っている人のほぼ全てがオーディオリスニングに対して多少は向上心を持っているということになる。

向上心を持っている場合、現状のシステムの改善点がないか常に自省し、改善を模索する。なので不満に思っているところがある場合、改善しない限りは改善しなければという心理が繰り返し働くので時間と共により不満に感じるようになる。

つまり一般的な傾向としてはリスニングシステムは使えば使うほど感動は薄れていき、不満な部分は増大していくことになる。

そこで「音質的音響的に良いことを突き詰めて行くと、究極的なものは視覚的に異質で居住性が微妙なものになる傾向」の問題に戻る。
居住性や視覚的な異質さを無視して音質的音響的に良いことを突き詰めていった場合、直後は音質の良さに感動はするものの、使い込んでいくうちにその感動は薄れていくが、居住性の悪さへの不満が強くなっていくことが予想される。
そういうところまで考えていくとやはりリスニングルームは音響的な配慮も重要ではあるが、あまり居住性を犠牲すべきではいうことになる。

究極的な性能を実現するために尖った特徴を持たせるというよりも、欠点が目立たないようにうまく処理しつつ性能も良くするというようなバランス感を重視するものがリスニングルームに関しては理想の方向になっていくのではないかというのが現状で考えているところである。

インシュレーターに関する科学的見解を抄読する。

2021-09-04 15:32:18 | オーディオ
以前にフリー公開されたら是非読みたいと書いていた
オーディオインシュレータにおける円柱や円錐の振動伝搬特性の解析と実験的考察

がフリー公開されたので読んでみた。
正直和文とはいえ久々の論文だったので、眠い頭ではなかなか入ってこず何日かかけて理解できる範囲で読んでみた。

・円柱と円錐と逆円錐でインシュレーターとしての特性を比較
・円柱インシュレーターは割とシンプルな振動減衰を示す。
・円柱型はトリッキーで、電気でいうところのダイオードのように一方の方向にのみ振動伝播のインピーダンスが高い。円柱の底面から先の方向に振動を伝達しづらくなる。
・ただその片方向の絶縁は交差周波数より低周波のみで発揮されるものであり、それより上の周波数では絶縁性能は十分発揮されない。交差周波数は円錐の角度や素材によって決まる。
・角度によって様々であるが円錐真鍮インシュレーターの交差周波数は2k~8kHzである。私見ではあるが円錐の角度90度のインシュレーターが30度、60度と比較して絶縁性能が良いようである。

床方向にスパイクを刺した場合に期待される効果としては
「低域〜中域の周波数で床が振動している場合に、その振動がオーディオ機器に伝わってしまうことを防ぐ」
という効果が期待できるようである。

裏を返して言えば、
「スパイクを刺す床が強固ではなく共振しやすいのでスピーカーの振動を床に伝えたくない」
「中高域〜高域の音を絶縁したい」
というのであればスパイクは不向きということになる。

またオーディオ機器からスパイクを通して床に振動を伝えるインピーダンスは低いことから、
スピーカーから生じる余分な振動を床に逃がすことで、止めたいときに早く止めることに寄与できる。制動のきいたキレのある音にできると思われる。
床に振動を逃がすとすれば、逃がした先で適切な処理が必要である。スパイクを受ける床は強固でなければならないが、内部損失が小さい素材だと受け止めた床で振動が続いてしまうため、多少絶縁しているとはいえ振動の逆流の懸念がある。内部損失が大きい素材で強固なスピーカーベースとするのが合理的である気がする。
スパイク受けがある場合は挙動がさらにややこしいものとなるが、スパイク受けは床がある程度優れたものであれば、基本的にはスパイク受けに流入した振動をそのまま床に伝えて床で受け止めて貰うものが良いのではないか。
もしくは、床とスピーカーの間にスパイクとスパイク受けが入るという構造は円錐型のインシュレーターと円柱型のインシュレーターの両方を重ねおきしている状態とも解釈することもできる。その場合両方の特性を取り入れているとも解釈できるがどうなのだろうか。

床の中高域の振動をスパイクが絶縁できないことに関しては論文にあるとおり、床の振動する周波数を考えれば低域に偏っているので大きな問題にはならないように思われる。

スピーカーベースの強度に不安がある場合にはスパイクよりも円柱のインシュレーターの方が良さそうである。

ということでよく分からなかったインシュレーターの使いこなし方に関して科学的見解を多少取り入れられることができ、おまじないとか当てずっぽうとか雰囲気でチョイスするという状況から脱出できそうでありがたいことである。


リスニングルームを緩く区切るという発想

2021-09-03 13:29:22 | オーディオ
リスニングルームの音質を追求すれば一定程度の広さが必要なことは定説としてほぼ確立している。
大きな床面積があるならある程度有効活用したいと思ってしまうのは人の性である。

多用途に使おうとして、しっかり部屋を区切ってしまうと狭い空間の響きになってしまうので避けなければならない。格子や格子戸などで緩く区切るというのは1つの手にはなると思われる。
以前のルーム案でリスニングポジションの後ろにデスクを置くと捗るという考察をしたが、デスクの後ろに壁があった方がいいのではないかと思っていた。壁があればデスクが不意にずれることも少ないし、ディスプレイが後ろに倒れる心配がないからだ。

また壁構法の場合は土台の上に床の構造用合板を張ることによってプラットフォームフレーム構造が働くため、現在のリスニングルームは床を下げて建築したが、プラットフォームフレーム構造を満たしておらず強度に影響が出る設計になってしまっている。
以前に後方部のみ小上がりにする設計を1度考えたが、むしろスピーカーとリスニングポジションのの三角形だけをピットにして掘り下げて、他はプラットフォームの床高さにするというのでもいいのではないかと思える。

リスニングポジションとスピーカー周囲はできるだけ天井が高い方がいいが、それ以外の部分は天井が高いメリットがそこまででもなく、天井高さが一定で無い方が定在波の癖が出にくいこともあるので、一部だけピットにするのは十分ありなのかもしれない。





シミュレーションでそれを取り入れてみたが、悪くはない感じである。
ただ緩く区切ることもピットにすることも、それをどうしてもやらなければならないという必然性がない。欠点として完成後にレイアウトを変更するという可塑性は確実に低くなる。
悪くはないけど、フラットに区切りなしと明確に優劣が付かない感じでありやや微妙な印象は否定できない。

オーディオファイルにとって悩ましくなる音楽ストリーミングサービス

2021-09-01 13:31:11 | オーディオ
音楽ストリーミングサービスは以前からあったが、アマゾンやAppleがハイレゾ含めたHD音源のストリーミングを値下げして以来新たな局面になりつつある。

Appleがクラシック音源に強いPrimephonicを買収したと発表。専用のクラシック音楽アプリを公開する予定という。
Primephonicとの統合により作曲者やレパートリー別の優れたブラウズ・検索機能、クラシック音楽のメタデータの詳細表示などが利用可能とのことだ。Primephonicがどのようなものかは良く知らないが、クラシックに特化しているのでそれなりに期待してよさそうだ。

クラシック音源用に現在ローカルネットワークで「作曲者→作品別→指揮者orソリスト→オーケストラ→同一のものがあればアルバム別でブラウズできるようにしているが、いかんせんメタデータの編集が大変で、楽曲を追加するにも手間が一苦労である。
ストリーミングで不満がありがちであったクラシックのブラウジングの最適化に特化したサービスがあればそれは注目に値する物であるし、そういったマニアックなところがに手が届かないイメージがあったAppleがそこを克服してくるとは意外性が高い。
クラシックのマニアックなブラウジングに対応するのだから、そういうものを求めている層にアジャストする意欲があるということなのだろう。そうであればネットワークオーディオプレーヤーに対応するなどの動きがあってもいいのかもしれない。Airplayのように参加しやすいものであれば理想的だ。

その他、Esotericなど一部のネットワークオーディオプレーヤーで対応しているTidalの日本国内でのサービス開始目前ではないかという情報もある。
オーディオ好きにはどれもサービスが本格的に良い物になってきておりどれが良いのか悩みどころではないだろうか。

オーディオファイルに向いていそうなストリーミングサービスだと
・mora qualitas:ハイレゾ込みの高音質ストリーミングサービス。排他モードあり。基本的にはPCからの出力。音質には定評あり。楽曲数は少なめ。料金やや高い。
・amazon music HD:通常プランでハイレゾや可逆圧縮を利用可能になる。デノン、マランツ、Bluesoundなどのネットワークレシーバーが対応するが完成度微妙との情報あり。楽曲数は多め。先述の理由で料金安め。
・Apple music:不可逆圧縮音源のサービスであったがハイレゾや可逆圧縮音源、空間オーディオなども提供開始。クラシックに特化したサービスも提供予定。対応機器が未知数。楽曲数多め。先述の理由で料金安め
・Tidal:ハイレゾがオプションになっているストリーミングサービス。海外でサービス運用中だが、近日日本でサービス開始予定。ネットワークプレーヤーで対応機種複数あり。楽曲数はジャンル次第?日本での価格未定だが若干高め?音質は定評あり。

このあたりで注目するといいのかなという印象


自分の考える理想的なオーディオルーム像の暫定的総括(総論)

2021-08-31 08:16:52 | オーディオ
何年か前に石井式風リスニングルームを実際に建設して、部屋として改善の余地があることを測定したり室内音響について調べてみたりするうちに気付いた。
そこでどういった室内の響かせ方が良いのか過去の文献などを参考にしつつ、自分の好みも加味しつつ、考察した。
ところがリスニングルームの建築が大規模で変更が大変である割に、完成時の特性が不確実である、特性が予想通りだとしても個人の嗜好に合うか分からない、嗜好が経年と共に変化することに対応できないことが一番の問題であることに気付き、視覚的に調音しても見苦しくならず、しかも特性を本格的に可変できることに重点を置いた設計が望ましいことに気付いた。
ただよくよく振り返ってみると、現在のリスニングルームへの不満は響きだけではないことに気付き、どの辺りを改善すると不満が解消されるのかを考えた。割と無意識や深層の心の不満であったため洗い出すのに時間がかかったし、まだ未発掘のものがあるかもしれない。
最も代表的なものは居住性であり、響きの特性の良さを重視すると犠牲になりやすい部分であるが、人間は測定器ではない。特性を良くすることで鑑賞体験を良くすることは理にかなっているが、特性を良くすることにばかり傾倒しすぎて室内を不快な環境にしてしまい鑑賞体験の質を損ねてしまっては本末転倒である。その辺りを高いレベルで折り合いを付けることが理想的なリスニングルームと考えるようになった。

ある程度その辺りのエッセンスを列挙して、後で自分で見返すために総括した今回の記事である。


・オーディオルームの前にプライベートリビングルームとして良い部屋にする。

室内音響としてそれなりに理想的な環境とすれば床面積として大きく、上階を作れない程度に天井高が高くなる。それなりに面積を取る部屋がオーディオリスニング用途以外に向いていない、しかも真剣なリスニングに特化していてリラックスした鑑賞に向いていないのは勿体なく不適切である。
仮に延べ面積がすさまじく大きい大豪邸の一角に作るのであったとしても、用途が極端に限定された部屋は利用する時の心理的ハードルが大きいので滅多に使わなくなってしまうのが自明である。
音楽を聴かないときでも滞在したいような部屋にまずはすべきで、機器や部屋の特性の良さの恩恵を預からないようなカジュアルなリスニングもしやすい部屋にするのが前提と考えている。

・窓は鑑賞用と間接照明的な採光用で室内音響に配慮した上で付ける。

24時間365日同じ光学的に安定した環境でなくなる上に、反射音の響きが悪いガラス窓を入れるメリットは特性上は存在しない。だがリスニングルームは生身の人間の視聴体験を対象としたものである。24時間365日光の刺激が同じ部屋というのは飽きを感じる原因になる。窓に内扉を設置すれば窓ガラスを簡単に封じることもできるし、内扉で音響調整もできるから致命的なデメリットになりづらい。
朝焼けを見ながらペールギュントの朝を聴く、雨のしずくを見ながら雨だれ前奏曲を聴く、名月の夜に月光ソナタや月の光を聴く、そういったことは窓がなければできないことである。
そういった時季の移ろいを鑑賞しつつ音楽の鑑賞ができる部屋を理想と考えるか、若干の特性の有利のために窓を排除した部屋が理想と考えるか、どちらを理想的なリスニングルームとするかというのは一考に値するものである。

・真剣な音楽鑑賞以外に利用できる生活の環境を用意する。

防音や音響を完璧に行えば真剣なリスニングの鑑賞体験の質が向上することへの異論はない。ただ音の細部を聞き逃さないような真剣な鑑賞というのは聴き疲れするような聴き方である。先史時代で言えば狩猟の際に獲物の場所を探知する、外敵の気配を察知する時に用いられる機能を動員して行うものであり、毎日長時間利用するのはは苦痛な面も否めない。
リラックスした状態でも利用できるように柔らかな採光や照明、神経を澄ましすぎない適度な環境音、ながら聴きができるようなアメニティなどを用意すべきと考えられる。
当然ながら真剣なリスニングができなければ本末転倒なので、シリアスモードとリラックスモードで部屋のオンオフができるような機構が照明や防音に必要であるとは思う。

・防音があまり必要ない立地

高S/Nのためにリスニング中に環境音が入ってくることは本格的なリスニングであれば避けるべきだが、強力な防音と常に静かすぎる環境は居住性にとってはネガティブな影響もある。
そもそもオーディオリスニングはホームシアターや楽器演奏よりも比較的騒音レベルは低くなり易いので立地をどうにかすれば強力な防音は必須ではない。
理想を言えば近隣に距離を置きつつ母屋からも物理的に隔離した離れのような建築物で閑静な立地が理想だろう。その条件であればそこそこの防音で十分であり、そこそこの防音で済むなら居住性も犠牲にならずに済む。

・十分なスペースと調音スペース
以前考察したように、部屋の響きを客観的にそれなりに良いものにするには壁とスピーカーとの距離を適正なものにしなければならず、反射のさせ方も工夫が必要である。
適正な距離にすることを考えると相応の広さが必要になるし、時間軸としてほどよく分散された望ましい反射の仕方を考えると反射壁に相当する部分に厚みを持ったスペースと反射挙動の非統一性が必要である。

各論は以前の記事の中にとっちらかっていたり、ろくに考察していなかったりするが総論としてこのあたりを留意すると良いのではないだろうかというのが現時点の自分の考えになっている。
オーディオリスニングは波動物理学と電気工学と生理学と心理学の混在する奥深さは感じていたが、リスニングルームそのものを考えると、部屋はそれ以前に所有者の生活の場であることを忘れてはいけなかった。生活の場というのは人生の一部を過ごす器であり、その事実と向き合わなければ理想には到達しないと思う。まだ十分考察しきれている感じではないが、そこを深く追求するのは学問的なところから外れてしまいかねず、正解を見つけづらい分野かもしれない。また考察する機会を持ちたいところではある。

何は突き詰めるべきで何はバランス取るべきかという基準を考える③

2021-08-28 15:14:57 | オーディオ
第1回で前回は機材や室内音響のアップグレードをする動機を考察し、その動機に見合った形での室内音響の突き詰め方について考察した。

第2回では聴く者の感受性や聴力が年齢と共に衰えるという避けられない不都合な事実に向き合い、それでも音の響きを追求する必要があるのかという疑問について考察した。

第3回の今回は防音についてである。
外からの音を入れない静かな部屋というのはより良いリスニング環境にとって当然のように必要であり、そこに議論の余地がないように思える。
S/N比が良い環境がより良い音と言われており、LEVがノイズ成分ではあるが適度に存在した方が良い音と言われていること以外はそれは事実だと思われる。
せっかく微細な信号まで音として拾い上げられる高性能システムがあったとしても、外部から侵入する騒音や室内家電の動作音などが存在すると微細な音楽表現が環境音に埋もれてしまい性能が活かせない。
もちろん再生音量を大きくすれば微細な音楽表現も環境音に埋もれずに済むが、そうすると再生音量が大きすぎて聴き疲れを起こしてしまう。

それならば防音性能を極大にして環境音がほぼゼロという状態がシンプルに最高ではないかと思える。自分も実際に思っていた。
だがそれなりに防音性能の高いリスニングルームを実際に使用してみた結果、防音室内の環境は「音楽の再生中は至高」というのが実態であり、音楽が停止した時間はそうでもないようである。
音楽を停止すると防音室内の環境音は非常に少なくなる。静かすぎると人間としては様々な事に敏感になり落ち着かず、逆にストレスになるのである。
環境音が非常に少ないときに感じる生理的耳鳴りも音が少なすぎるときに内耳が自発的に音を作ろうとする結果であるらしく、音がなさすぎる状態というのは人間にとっては快適な環境とは言えないようである。

もちろん真剣に音楽鑑賞をしたい場合は防音室内の静かな環境で感覚を鋭敏にして鑑賞するのがベストであろう。だが音楽鑑賞をしたいときというのは毎回のように交感神経優位な聴き方をしたいわけではない。リラックスして体を休めつつ副交感神経優位な状態でアバウトに聴きたい時もあるだろう。
防音室内の静かな環境は強制的に交感神経優位な聴き方を誘発し、副交感神経優位な聴き方をしづらい状態になっていることになる。実際に防音室を使用していてもそれは実感として感じるものがある。

つまり外部からの騒音を完全にシャットアウトし、室内でのノイズ源を完全シャットアウトした部屋は、音楽を再生し真剣に聴いている時には素晴らしい部屋ではあるが、再生を止めた途端に不快な部屋に変わるのでさっさと他の部屋に退散すべき部屋ということになる。
音楽を聴くが楽しいにしても休憩したいときはあるし、そもそも音楽を聴くときだけしか使えない部屋というのは勝手が悪すぎて親しみが沸きづらいので他の事も快適にできる部屋が良いと以前から述べてきた。
その事を考慮すると、ただひたすら防音されただけの部屋では親しみやすくはならないし、つい滞在したくなる部屋にはならないということになる。

騒音環境下では就寝する際に適度な雑音があった方がよく眠れるらしく、意図的に環境音を発するグッズがある。音楽再生を切った後にそういうものを使ったり、再生システムで小さなホワイトノイズや環境音を再生したり、サブシステムにそういうのをさせたりすれば適度な環境音を作ることはできる。
ただ音楽再生が終わったところでそういった環境音生成システムを起動し、また音楽再生するときに環境音生成システムを停止するというのをいちいちやることを考えると理想的な部屋とは言いがたい。

それを考慮すると「自分の考える理想的なリスニングルーム」には可変式に環境音が入る機構が必要と考えられる。

一つはリスニングルームに隣接する部屋は適度な環境音が発生もしくは侵入する普通の部屋であり、真剣に聴いていない時や音楽を再生していない時には防音ドアを開放しておける仕組みにするという手段がある。
ただカジュアルにまったり音楽鑑賞するときも防音ドアを開放しておくことになるので、それが許されるほど騒音問題が起こらない立地にリスニングルームを設定しなければならない。

別の手段としては極端に防音効果の高い窓を使用せずに多少の環境音は入るようにする。真剣に聴きたいときは窓の外側か内側にシャッターを付けて二重層にして防音できる機構にするというものである。
毎回その開閉をするのは大変なので電動シャッターをすべての窓につけなければならないが、比較的現実的かもしれない。

もっと手軽な手段としてはエアコンを防音でない一般的なものを使うなどがある。真剣に聴くときには停止して、再生していない時には起動して環境音にする。むしろコストとしてはマイナスになる手段である。

環境音にも快適に思えるかどうかは種類があると思うし、その辺りはしっかり考察できていないが、防音は高性能であれば無条件に良いわけではないということに気づいたので今回記事にしようと思った次第である。

何は突き詰めるべきで何はバランス取るべきかという基準を考える②

2021-08-27 13:17:04 | オーディオ
前回はそもそも機材のアップデートやルームチューニングで室内音響のアップグレードをする動機を考察し、その動機に見合った室内音響の突き詰め方について考察した。

今回は人生と老化と感性という観点からの考察である。最近ますます物理学的な考察から離れているが、これを外して考えるわけにもいかない。

ピュアオーディオにおいて、そこそこの到達点と言えるような目標としていた機材を揃えつつ、それを鳴らすリスニングルームもそれなりのものとするには、社会に出てから多少の蓄えを得ないと実現できず、早くても30歳前後、多くはそれ以降となる。

自分のように1度目だとあまりよく分かっていなかったから2度目をどうするかと考察をしている場合にはさらに年齢は進んでいるし、1度目のことであったとしても、それを長い期間使うことを考えると使用者の年齢はさらに高いことも想定せねばならない。

30歳以降となると、やはり20歳の時には余裕で聞こえていた超高域にまったく聞こえない周波数が出てきたりするなど聴覚の劣化は避けられない。

可聴帯域よりも問題なのは感情を司る脳領域の働きが鈍ることである。昔のように音楽で心を動かされる体験が起こりづらくなっている。

何が言いたいかと言うと、人生の中でオーディオシステムのそれなりの到達点やリスニングルームを手に入れて利用する頃には聴覚や感受性が劣化していることが大半なので、そこまでする価値がないのではないかという疑問に向き合わなければならない。

その疑問は昔から感じていたが、自分の体に老化を感じ始めるようになってみて、ある程度は否定できるものであると実感している。

聴覚の劣化はあるが、超高域は特に音楽的に重要なものではなく、鑑賞にさしたる影響はない。高齢になればより高域が聞こえづらくなるだろうが結局はメインの周波数でない。
高級オーディオも別に超高域を聴かせるためだけに高級な作りをしているわけではない。

そして否定できる一番の理由は、老化すれば鑑賞体験による感情への作用が鈍るが、他の事に対しても同じように感情への作用が鈍ることである。
リスニングルームを造ってもオーナーの感性が鈍っているのでは造ることに意義はないと考えたとしても、他の事に対しても同様に昔ほどには面白さを感じる感性があるわけではない。
むしろ積み重ねがない趣味を新しく始めようとしても感性が鈍っている状態では途中で飽きてしまいやすい。
特に体を動かす趣味は若い頃よりも確実に長時間できなくなるので、楽しいと感じたとしてものめり込むほどやるには体がついていかない。
趣味の移り変わりというのも30歳越えるとそんなにしょっちゅう変わる訳では無いと思うので、今までやっていた趣味が今後飽きて無駄になるというリスクはそこまで考えなくていい。

つまり過去と比べて感性も耳も鈍ったからオーディオやルームチューニングをやる価値がないという理屈は、それを言ったとしても過去の自分に戻れる訳ではないのだからナンセンスな考えである。
オーディオではない別のことをするべきかというと、他の事も同じくらいに楽しむ感性が鈍っているのだから、老いてもなおオーディオを続けるべきか他の趣味をするべきかという疑問は、五十歩百歩だろうというのが解答になる。

少し年齢のピークを過ぎただけで可能性を閉じるような思考をするのはどうかとも思うが、若い頃のように無限の可塑性があることを前提とした考えでなく、閉じていく可能性の中での現実的な将来を見据えた考え方はピークが終わったからこそできるのかもしれない。

書斎とか趣味部屋とかシアタールームとかリスニングルームとかそういったものを好きなように設定できるのは大概は身体能力的なピークを過ぎた後になる。だからこそ今後可能性が閉じていく自分を見据え、それでも続いていく人生を見据えた終の棲家となれる空間を造っていくべきなのではと思う。音の響きの良さを考えるのもいいのだが、そこだけではない課題に向き合うべきなのでは思う今日この頃である。