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モッチリ遅いコメの距離感

オーディオルーム、シアター、注文住宅などに関してのblog。

何は突き詰めるべきで何はバランス取るべきかという基準を考える①

2021-08-26 17:54:22 | オーディオ
以前の記事で、いろいろ考察していく中で、低レベルではあるものの室内音響的にこういう部屋にすると良いのではないかというのをある程度は明示してきた。
ただ、それを備えた部屋をシミュレートするにあたって、部屋としての魅力を高めようとすると室内音響のあるべき要素とバッティングしてしまう事案が複数発生した。
その中で仮想上の理想の部屋であろうとも、ある程度は音響的な妥協をすることも必要であると考え、具体的に妥協すべき部位を考察した。

今回はどのようなポイントを妥協してもよいものなのか、妥協すべきでないのか、今までは感覚で決めていたものをしっかりした価値基準を明確にすることでブレない、応用しやすいものにしていこうという記事である。

コンシューマーオーディオの大前提として自己満足のために行うものである。なので「〜すべき」というのは基本的に存在しない。
他人に関してのスタンスはそうであることに違いないのだが、自己に対するスタンスは別である。仮想として考察している音質的に良好な部屋に関して、音響的に好ましい影響を与えるであろう仕掛けを積極的に付与すべきというのは間違い無くやるべきことである。
ただ、音がいい仕掛けだけをただ単純に付与し尽くしただけでは「ただ音が良いだけの穴倉」になってしまう。
まったく音質向上への配慮がされていない部屋が良いとは言えないが、ただ音を良くする為の仕掛けを極限にまで施した部屋が良いとも言えないので、その間のどこかに理想があると言える。それがどのあたりなのかを考察する。

今回の記事ではオーディオファイルがグレードアップしたいと思いコンポーネントを買い替えたりルームチューニングを行ったりする動機について整理し、その観点から室内音響処理の取るべき対応について考えてみようと思う。
理由はいくつか考えられる。


①再生音楽の特性の向上により、好きな音楽を聴くことで得られる心理的効果を向上させたい。

聴くのが好きな楽曲があって、それを聴いた時に得られる「気分の良さ」や「感動」をより増強させるために良い機材が欲しいと思う。
この希望は根源的には音響に拘る人の最大のモチベーションの理由であり、世の中で行われている大半の買い換えの建前上の理由はこれである。ただ実際はそれが理由とも言えないケースも存在するのも事実と言える。
「好きな音楽を聴くことで得られる心理的効果を向上させたい」というのが理由で室内音響の改善に取り組むのであれば、そもそもそのリスニングルームが居室中の人間に与える心理的効果を良くすることも当然のように大事と言えるのではないだろうか。
「この部屋は音が良くて好きな楽曲がより美しく聴こえるので良い気分になれる。でも部屋自体の雰囲気は異様で居心地の悪さを感じる。」というのではよろしくないと思うのである。
部屋の音響処理によりリスニングの心理的効果にプラスの付与効果は見られるが、居住性の悪さによるマイナスの効果も付与され、折角のプラス効果が相殺されてしまう。
①の理由でリスニングルームを設計するとしたら、居住性の悪い部屋にしてはいけないのである。研究目的の実験室とは明確に正解が異なる要素はここにあると思われる。


②今よりも良い特性になることが期待できる機材を導入することで、保有システムがどのような音になるか興味がある。もしくはより良い特性になっているという安心感が欲しい。

「①」の理由で買い替えができるならそれが理想であるが、試聴や前評判で分かることはごく一部である。
自分のシステムにその機材を組み込んだときにどこまで心理的な向上効果があるのか、聴けば判断できるものなのか、聞こえ方の変化による短期的な印象の変化だけなのか、耳が慣れてもプラスの心理的効果が継続する長期的な効果なのか、そんなものは買って導入するまでは分からないことが大半である。
そのため今の機材よりも特性の良さそうなものに買い替えるというのは一般的によく行われる。自己に対する心理的効果が不明なのであれば客観的な数字に頼ろうとするのは当然と言える。
今考えている仮想のリスニングルームも結局はそれである。特性によって心理的効果を予測しているだけに過ぎない。
もし機材の導入による変化が明確でなかったとしても(もしくはアクセサリーなど細かいところの変更のため明確な変化がそもそも望めないとしても)、前よりも理想的な特性に少し近付いたという心理的満足感や安心感を得ることはできる。精神衛生上の効果は保障される。

この効果をルームチューニングにそのまま適用しようとすると、「自分が気に入るか分からないが、客観的には良い」と考えられる音響処理を進めていくということになる。
その考え方だと音響処理というのは部屋設計の絶対最優先事項ではないと考えられる。
やった方が特性上はプラスに働くと思われるが効果がどこまであるのか分からない、というものであれば居住性が確実に犠牲になる場合に犠牲を払ってまで音響処理をやるべきではないと考えられる。
実際にはどういう場合かというと、音響処理は比較的効果が大きい場所と比較的小さい場所がある。効果が小さい場所でかつ居住性に支障が出る部位に関しては音響処理よりも居住性を優先させてよいのではないか。具体例で言えば一次反射面以外の床などが挙げられる。


③資金と時間と情熱を注いだシステムならそれに見合う豪奢さが欲しい

この理由単体で機材を購入することはまずないと思われるが、だからと言ってオーディオ機器に途方もない金額と情熱を注いでいる人が「音は良いけれども地味な外観の機材」で満足する例は少ない。
この不都合な事実に関しては別記事にして書く機会を作りたいとは思うが、いずれにしろオーナーがいかにオーディオシステムに情熱を注ぎ込んできたのかというのが一目見れば分かるような豪奢さはオーディオ機器にとってかなり重要な要素である。

では室内音響にとってこの要素はどうか。音響処理として現在では拡散が重要視されている。拡散壁は一般的には特異的な視覚上インパクトの高い外観になりやすく、幅広い周波数を拡散しようとすると相応の大きさや厚さになる。
つまり本格的な拡散体を隠すことなく見せつけるように設置すれば、再生音楽にいかに情熱を注ぎ込んできたのかを一目見れば分かるような豪奢な視覚的効果を持たせつつ、音響処理もできるということになる。

オーディオシステムとして豪奢さを見せつけるようなシステムを志向する人ならそれでいいのかもしれない。ただ自分の考えとしてはそういった志向から離れてきており、機材は見た目が地味でもいいし、目立たせず設置する方がいいと思っている。拡散体もあまり目立たせずに視覚的なカオス感はあまり無い方がいいと思っている。
自分のような考えの場合であれば音響処理は視覚的効果が大きすぎない範囲でやるべきだろうとは思っている。ただこれは結局は考え方の方向性の違いではあるので絶対的なものではないと思う。

④音にインパクトを与えるため癖や歪みを付与したい。

実際にこれをやっているのは上級者なので自分がその域にはなかなか行けないのだが、特性が比較的正しいという音は明確な欠点はなくなるが、案外パンチ力がない心を打つ音になりにくいという傾向はある。
むしろ歪んだ音の方が、少なくとも短期的な試聴では心の琴線に触れることも珍しくない。真空管アンプなどがその一例である。

これは室内音響でも起こりえることではある。キレがいいとかボーカルが前に出るとかそういうものは特性としてあまり良くないこともある。
壁面処理でより好みの音にするという目的で特性上はあまり良くないかもしれない処理を意図的にするというのはあまり無いがアリだとは思う。
特性に縛られない機材の選び方はあるのに、響かせ方は特性に縛られないといけないとは思わない。特性の良くない音だけれども一聴したところ良いと感じたという事象に対して、自分自信のかけがえのない優れたセンスが解釈した感性と受け止めるのか、聴き方を間違えているだけと受け止めるのかということがある。
評価の確立しているピカソの絵を自分は良いと思わないと思うのは問題ないと思うが、世間が良いと評価していない無名作品を自分が気に入るのも問題ないとは思う。
だがピカソよりも無名作品が良いとあたかも揺るがない事実のように吹聴したとしたら、それは自分の感性の過信と思い上がりと言わざるを得ない。
特性を逸脱して癖を付けるとしたら慎重さと謙虚さは必要なのではないだろうか。

B&Wの800シリーズ新モデルに関する感想

2021-08-25 19:38:03 | オーディオ
B&Wのダイヤモンドツィーターを搭載したシリーズとして4世代目、かつメジャーアップデートから2世代目の800シリーズが海外ではおおむね発表されたようです。
https://www.phileweb.com/news/audio/202109/01/22726.html

https://www.youtube.com/watch?v=7Y4BjZ2_f1k

25cmのダブルウーファーを搭載する800相当が801という番号が付けられています。
801が欠番なのを詰めた形ですかね。

ウーファーの天板が金属製になっており、見た目としてチェリー色に相当するカラーが復活しているようです。
その他に一度D3で短くなったツイーターのエンクロージャーが以前のように長いものになっているようです。
804や805あたりには上位機種同様にアルミの背板が入るようになりました。
ダンパーなど細かい部分も改良されているようです。

総合的な印象としては元々マイナーアップデートが予想されていただけにこんなものかなとは思いますが、他のブランドの変遷などと比較するとかつては新進気鋭のブランドのイメージだったものが今はむしろ保守的なイメージが先行しているように感じます。

Matrix時代も十分評価はされていましたが、B&Wの商業的なピークとしてはOriginal Nautilusでバッフル反射を抑えつつ、逆ホーンで後方の逆位相音を消音するというスタイルを作り、
Nautilus800シリーズでそれを現実的な価格やサイズに落とし込み
次の800Dシリーズでは人工ダイヤモンドで振動板を造るという技術的インパクトの高い手法を取り入れた辺りがピークだったのかなと思います。

その後も地道な改善や振動板の素材の改善、1つ前の世代ではメジャーアップデートも行われましたが、大枠の設計思想としては大きな変化は無いような気がします。


他社の大まかなトレンドからすると、バッフル反射を流線型で可能な限り減らすよりも高中低音の指向性が同じくらいになるよう揃えることが意識されやすくなり、バッフル反射は適切にコントロールすればあった方がよいという考え方が現時点では優位に思われます。
背圧のコントロールの仕方も複雑なシミュレーションが可能になったことから進歩しており、高度に計算されたバスレフ、板振動での吸音、密閉型、metamaterialなど様々な手法を行われるようになった今となっては、逆ホーン型がベストな背圧消音手段とは言えなくなっているような印象があります。
また3wayの特徴として高中低で音の出る位置が異なることにより音域で音像が異なる印象がある、頭の位置がずれた時に音色が変わると言われていた問題は、
3wayの宿命、つまりは豊かな低音との引き換えに多少は許容しなければならないものとかつては思われていた節がありました。ただ最近は同軸や仮想同軸の設計により積極的に解消しようという流れがありますが、B&Wの設計思想からはそれは感じられません。

トレンドに乗って他社と同じような設計にしたところで商業的に成功するとは限りませんのでB&Wとしては妥当な方向性なのかもしれません。
とはいえ近未来的な流線的フォルムとダイヤモンドというプレミアムなイメージを押し出しつつも、設計思想は2000年前後という古き良き時代を懐かしむようなブランドになっているような気がします。
今後のトレンド次第では再評価がされる流れがあるかもしれませんが、個人的にはもうあまり新型を欲しい、聴きたいと思わせてくれないブランドになりつつあるような印象です。

SACDによる周波数帯域の拡張やマルチチャンネルオーディオの勃興(結果的には不発)、ホームシアター隆盛によるビジュアルシステムの高度化の時代に
他にはない流線形と新素材と手に届く価格帯で提供する姿勢にかつては確かに魅了されました。世間一般ではオーディオブームは遙か昔に過ぎ去っていましたが個人的には熱い時代だったなと思います。

800シリーズは価格帯や今後の予想される販売量から考えても、かつてほど絶対的なコンシューマーオーディオのリファレンスになりづらくなっているような気がします。
そうであれば今後は何がリファレンスになるのか気になるところです。性能として妥当なだけでなく相応のシェアを有していることが必要なので、スピーカーの善し悪しだけでは予想できません。
シェアがあればリファレンスと相性の良い製品を作っておくと一定割合でベストマッチングで使用してくれることが期待できるわけです。そういうスピーカーは今後何が選ばれるのでしょうか

レーザー8Kプロジェクターの登場だが。。。

2021-08-20 12:43:42 | オーディオ
個人的にはプロジェクターとしてレーザー4Kが普及機の大本命であり、それが普及機として成立するためには上位機としてレーザー8Kが広く販売される未来が必要と考えていた。

そしてビクターからようやくレーザー光源の8Kプロジェクターが登場するようである。
だが現実は想定したような素晴らしい状況ではなさそうだ。

まずは4K8Kの普及速度の鈍さである。
8Kなどというのは現時点ではBS8K以外の映像ソースはほぼ皆無である。
BS8Kもデモンストレーションの域を出ず、普及する気配が見当たらず、番組も再放送ばかりなので
五輪終了したので今後電波整理の対象にされるとも噂されている。

映像作品に8Kはほとんどなく、4Kですら広く普及したとは言い難い。UHD-BDのセル版を買うか、一部の高品質配信で視聴できるという程度で、相当意識してチョイスしてこないと現在流通しているものの大半は2K版という状況である。

ここから大幅に4K8Kが普及するとは考えづらい。
少し前までは4Kシフトを幾つかの界隈で試みていた気配があったが、
当面の間は普及品のクオリティは2Kで必要十分であり、4Kは追加のコストを負担する意欲のあるマニア向けという考え方が概ね確立しまっている感があり、むしろ後退しているように見える。

そういった現状で8Kレーザーが出ても、一昔前だったら「今後末永く使えるスペックの上級機が出たな」と思えるが、今となっては「時代が不要と判断したオーバースペック機をバカ高い価格で買ってもなあ」と思ってしまう。

そういう意味では「今後末永く使えるスペックの上級機」を求めるなら4Kレーザーのプロジェクターと言える。価格がこなれていない、サイズが大きい、騒音が大きいなどの問題が改善するかどうかが当面の興味の対象と考えられる。

音響的には理想ではないけれども理想の部屋に必要なものを考える

2021-08-19 19:22:20 | オーディオ
先日の記事で仮想上の自分が理想的と考える部屋にも音響的な妥協が必要だという内容を書いたが、具体的に挙げてみようというのが今回の記事

①窓
現リスニングルームも窓は最小限にし、今は塞いでいるので実質窓なしの部屋になっている。
窓は音響的防音的にはメリットはあまりなく(壁との凹凸を作れることくらいか)、デメリットの方が多いと考えられている。
なので音響的には窓無しの方がより望ましいと思われる。
ただ窓なしの部屋は実際に長い期間過ごして見るとあまり居心地が良くない。
窓がないからなのか、天井が高いからなのか、壁が多くて木目色をしているのかは分からないが、現オーディオルームの居心地という意味ではあまり評価していない。
なので窓だけが原因とは言い切れないのだが窓はあった方がいいとは思っている。
ただ音響的に有害にならないよう配慮はしなければならない。
採光目的であれば高所であったり地窓であったりなどあまり一次反射面にならない場所に最小限の面積で設置すべきだし、
外の景観の鑑賞目的であれば鑑賞する場所を絞って窓を設置すべきだとは思う。

②ベッド
以前のこれについては書いたことがあるのであまり今回は書かない。
ベッド自体はそのものが吸音材になるので音響を必ずしも悪くするものではないが、ベッドを設置した上で左右対称の音響にするのはやや困難である。
さらにリスニングルームにベッドを付けるというのはなんというかカッコ悪く理想とは言えないようにも思える。
ただ居心地の良さを支援する物としては必要と思っている。
ソファベッドなどあまりカッコ悪くないものにしつつも、あった方が理想的だとは思っている。

③映像デバイス
ガラスとプラスチックでできた薄型の大きな面積の平面板であるディスプレイは音響的には明らかに悪影響の方が強い。
そして今回想定しているのはシアター機能を必須としないリスニングルームである。
なので基本的には排除していいものと以前は考えていた。
ただ排除してしまうと、その場所で映像を伴うコンテンツの鑑賞が難しくなる。
現代の娯楽の中で映像がなく音だけのものというとラジオと音楽鑑賞くらいなもので、それ以外は持ち込みのスマホかタブレットでないと鑑賞できないとなると、今現在の感覚でいうと不便な部屋と言わざるを得ない。
今はインターネット媒体が動画と音声付きのものが飛躍的に増えている。ニュースを見るにも動画が多くなっているし、調べ物をするにも解説動画などが増えている。音楽家もプロモーションのために動画コンテンツを作っている人が沢山居る。そういった媒体の音声の再生に対応していない部屋というのはどうなのかと思ってしまう。
それならスクリーンを入れてシアター機能もサブで備えるリスニングルームにすればいいと思っていた。
サブでシアター機能を入れること自体はアリだとは思うが、スクリーンでネットサーフィンを行うか、デスクワークを行うかというとスクリーンに文字を写すと視線の移動量が多くなり、不便で使い物にならないだろう。
だからシアター機能の有無は別としてモニターはあった方が良いだろうと今は思っている。
大きな物ではなく20インチ前後の文字を読むのにも使い勝手の良いサイズが想定している物である。
それくらいの大きさであれば音響的悪影響はそれほど気にしなくて良さそうだが、さらに影響を減らす努力として、使わないときに仕舞えるようなモバイルタイプのものがいいのではないかと思っている。
サブでシアター機能があっても良いと書いたがあくまでサブの機能に留めておくべきと今は考えている。遮光を本格的にやろうとすると居住性の意味でやや不利に働きかねないからだ。本格的なサラウンドスピーカーを設置することも居住性に不利に働く可能性が高いが、空間オーディオの普及具合によってはリスニングルームでもサラウンドスピーカーが必須と言わねばならない未来があるかもしれない。

④デスク
机はリクライニングチェアやソファとの相性が悪く、組み合わされることはまずない。
そしてリスニング位置の目の前に机という平面の板があると耳に机の反射音が至近距離から入ってくるので無視できない影響がある。
なので基本的にはリスニングルームのリスニングポジション周囲には机を置かない事が多い。
だが趣味であれ仕事であれ作業の多くは机を使用して行われる。デスクワークと言われるのもそのためだ。
リクライニングチェアを用いた第一のリスニングポジションにはさすがに机を置くことはできないが、その後ろにセカンドポジションとして机があると書籍を読んだり作業用の音楽の再生装置としてステレオシステムが活躍してくれる。
作業をしながらというのもあるが、机に肘を置いて座る姿勢が落ち着く時もあるのも大きい。そういう姿勢が取れる場所が部屋の中にあるのとないのとでは居住性の良さに影響があると思う。

⑤Bluetoothレシーバー
Bluetoothは可逆圧縮の伝送のため音質的には明らかにベストではない。ただ無線で取り回しが良くモバイル機器の多くに搭載されている。
先にも述べたとおり、音声付き動画を視聴する機会が急激に増大しているのに、その再生に対応できず、CDやファイル再生だけできるリスニングルームというのは、使い勝手を限定しすぎていて理想とは言えない気がしている。
だがネット上の動画の音声の大半はクオリティとしてベストを追求したものとは言えない。高音質再生を最大限まで追求するという挑戦の対象ではないと思っている。なのでそれなりの品質を確保した上で取り回しの良さを追求した方が良いと思われる。
無線で接続性の良いBluetoothがその用途ではベストと思われる。
なのでステレオシステムにBluetoothを受信してデジタル音声信号としてDACに送信するレシーバーを付けておけば、スマホ、タブレット、ノートPC、デスクトップPCで動画付き音声や音楽配信の楽曲をステレオシステムで再生することができる。
音響的にベストを目指せばBluetoothレシーバーなど入る余地がないと思われるが、自分にとっての最高のリスニングルームを考えた場合必要と思える。

こういったカジュアルな用途は別の部屋やサブシステムでやればいいと思っていた。
ただそういう考えでカジュアルな用途をどんどん排除して使えなくしていくと、音は良いけれど使い勝手が悪く面倒な部屋になってしまい、面積やコストをかけた割に使わない部屋になってしまう。
そういう部屋が理想とは思っていない。音響の良さを求めると多少は不便になってしまいがちなので、付与しても大きな問題にならない便利なアメニティは積極的に付けていき、不便さの改善と居住性の良さをなるべく向上する努力はした方が良いと考えている。

理想的なリスニングルームに音響的な妥協は必要か

2021-08-18 13:36:16 | オーディオ
これまでシミュレーターなどを用いて、仮想のリスニングルームについて考察してきた。
予算として自分が負担できて作れるものなのかは一旦度外視しつつも、
明らかに無理な設計や明らかにコストがかかりすぎるものではなく一定の現実性は確保してきたつもりではある。

熟考の上で出来上がった仮想のリスニングルームが作る価値があって自分でも作れるものであれば、具現化を検討する。
理想的なリスニングルームのアイディアは出来たものの、新築しなくてもあるべきスペックを満たせる、ある程度妥協しても良いとという結論となれば、今のリスニングルームや中古住宅などを改装したりして具現化を検討する。
仮想のリスニングルームが現リスニングルームから移行することによる価値とコストが見合わないという結論になれば、その結論を尊重する。

人生で何度もできることではないので作るかどうかの前段階として、そういった事をしっかり考えないといけないと思い考察を続けているが(1度目の専用室は大して考えずに作ってしまったが)、その仮想であり理想と考えるリスニングルームが音質的にベストを突き詰めるべきかというのが今回の記事である。

音質の意味でベストだけを突き詰めないという意味では、以前にも考察した可変性重視というのはある。オーディオコンポーネントも定評のあるものを揃えて一発決め打ちで満足してその後一切変更しないというのが稀であるように、室内のルームチューニングも例え理論的に正しく、よく調整されたものであったとしても、それで満足するとは限らない。
より気に入ったものになるよう試行錯誤したいというのが当然の好奇心であるからこそ、理論的に正しい室内壁面処理を決め打ちで設定して建築するよりは、配慮されていない普通の部屋ではできないような本格的な音響処理を可変的に自由にできるように配慮した設計にすることが重要ではないかと考えた。

今回の主題はそこではなく、明らかに音響的にはメリットがないけれども、生活する上であるべきものを設置するかどうかという話である。
今や一昔前と異なり、スマートフォンやタブレットなどのワイヤレスでポータブルなAVもできる汎用機器がありふれている。さらにサブスクリプションサービスもかなり普及しており、購入という行為を経ること無く無数の選択肢の中から鑑賞したいものをチョイスし、そのまま視聴することができる。
つまり音質や画質に拘りがなければ、好きな時間に好きな場所で、未知の作品を鑑賞することができるのが現代なのである。
一昔前は、インターネットショッピングまたは実店舗で鑑賞したい作品を探して購入し、通販の場合は到着まで待ち、その上でプレーヤーにメディアを挿入してテレビやステレオの前で作品を鑑賞していた時代と比べると相当に利便性が格段に向上している。

ではリスニングルームであったりシアタールームであったりするような専用室での高品質視聴の場合はどうか。
サブスクリプションサービスはクオリティがベストではないので、メインメディアではないだろう。ダウンロード販売は高品質のものもありメインの1つではあるだろうが、全ての作品がダウンロード販売されているわけでもない。基本的には従来の現物のメディアが主力になるだろう。
視聴に関してはいつでもどこでもという訳では無い。専用室の中でしかも視聴に最適なポジションが事前に設定され、基本的にその場所での鑑賞となる。
本格的リスニングルームの場合、大型の映像ディスプレイはあまり設置すべきではないと考えられている。ディスプレイが室内音響的に望ましいものではないからだ。従って映像メディアを視聴したい場合はリスニングルームから出て他の部屋に行くか、持ち込みのスマートフォンなどで鑑賞することになる。
ロール可能なスクリーンであれば音響的なデメリットは少ないが、スクリーンやプロジェクターの起動や消灯など映像デバイスとしては小回りが良くないのは事実である。
本格的なリスニングルームで音響の良さを最優先にすればそういった使い方にどうしてもなってしまう。

今考えているのは理想的なリスニングルーム(少なくとも自分にとっては)である。
音響の良さを重視するあまり、隔絶された防音の洞穴のような空間に潜って、従来の不便な音楽再生しかできず、鑑賞するときのポジションや姿勢などが全て事前に設定されていて、それ以外のポジションや姿勢などでは使い勝手が悪く、映像コンテンツの鑑賞ができないような場所が本当に自分の理想的なリスニングルームなのかという疑問が湧いてくる。
その辺りが現在のリスニングルームを毎日使えない原因でもある。

かつてはカジュアルな映像鑑賞も音楽鑑賞もそれなりに不便だったので、専用室での不便さも目立たなかった。だがカジュアルが今便利になりすぎているので、専用室でクオリティを重視した鑑賞の不便さが目立ってきているのである。不便でもひたすらクオリティを求めるというのは修行僧のようであり、そもそもクオリティを重視する根源的な意義が疑問になってしまう。

音質的な悪影響はなるべく小さくなるよう配慮することは大前提ではあるが、理想的なリスニングルームだとしても音響にとってあまり良くないものも受け入れて、ある程度カジュアル視聴もできるよう組み込んでいく工夫は入れていかないといけないのではないかと考え始めている。
理想とは何かと意味を考えてしまうが、理想にも妥協は必要なようである。

ライフスタイルに寄り添ったリスニングルームを考え直してみる。

2021-07-30 18:03:25 | オーディオ
リスニングルームでくつろぎ易くしたいということについて考察していて
先日リスニングポジションの後ろにソファベッドを置いて、そこで寝転がれるようにするというアイディアで記事を書いたが、書きつつも「これは満足するものなのか?」と違和感を感じていた。


考察してみて気付いたのは、寝転がれる場所が欲しいことは事実だが、寝転がれる場所が理想のリスニングポジションである必要がない、理想を追求しても仕方が無いということである。
ソファベッドを真ん中に置いたとしても仰向けやうつ伏せになるなら結局音像定位は理想からは程遠いものになってしまう。
つまり「いい音を聴きながら寝たい」という理由でリスニングルームにソファベッドが必要と考えている訳では無い。リスニングルームに滞在している間に横になりたいと思ったときに「部屋の外に出ることなく横になれる」ことにより部屋が使い勝手がよいからリスニングルームにソファベッドが必要と考えているのである。そういう場所があると疲れている時もその部屋に入りたいと思うはずである。逆に横になれるところがないと、疲れている時はリスニングルームに行くのが「かったるい」と思ってしまい、融通が利かない部屋になってしまう。
つまりソファベッドは左右的に真ん中である必要はあまりない。

どちらかというと、リスニングポジションの真後ろの比較的定位の良いポジションは映像音声を鑑賞するスペースに利用した方が利便性が良いと思われる。
リスニングルームでビジュアルと併用となると、ホームシアター兼用というイメージがあるが、ホームシアターシステムはプロジェクターの画面や大画面液晶などが前提となる。システムが大仰で長時間試聴は画面が大きすぎて疲れやすい。ステレオ音源にマルチチャンネルシステムは不要であったりする。テキストを読む作業なども相性が悪い。

PCモニターとしても使えるような20インチ前後の液晶ディスプレイを用いてリスニングポジションの後方でPCで動画鑑賞やゲームなどを遊べるスペースとするのが使い易いのではないかと思う。音声はステレオシステムで再生するようにしたいところではあるが、ガッチリ音質重視で伝送するよりもカジュアルに使えるようにBluetoothで送信するくらいが使い易いのではないか。

そこでリスニングポジションの後方は作業机とオフィスチェアを設置することにする。モニターは本格的なリスニングの際に響きの悪影響にならないように折りたたみ式で簡単に片付けられるモバイルディスプレイとする。そしてソファベッドは部屋の後方の片隅に設置するのが良いのではないかという発想になる。


音楽鑑賞は当然ながら、PCでyoutubeや動画配信をステレオシステムの音声で鑑賞することもできる。ゲームなどもできるし、机に肘をついて音楽を聴きながら読書や書き物もできる。お茶やコーヒーを飲んだりお茶請けを食べたりすることも出来る。疲れたらソファベッドで横になることもできる。

日常生活の行動を大体できるようにはなっており利便性の高い部屋になってくれてはいるものの、片側だけにソファがあるのは音響的にやや問題がある。
布張りのソファは吸音材の塊のようなものなので後方に吸音材があるのは悪いことではないが左側だけ吸音効果が高いことになってしまう。吸音率が左右で大きく変わってしまうことは受け入れがたい。

そこで左右対称に2つソファをデスクの横に置いてみる。


応接室の機能が復活することにはなる。
これだと響きとしては問題ないだろうが、デスク周りが手狭で、しかも出入り口の導線が悪くなる。ソファが2つある必然性もやや微妙に感じる

導線の問題からソファのを片側だけ小さいのにしてみる。

これで導線は確保されるが、左右対称性が前ほどではないにしろ右側の吸音が少なくなってしまう。

ソファを後壁に沿わせるように左右対称に設置してみる。


良さそうな感じがする。ソファの真後ろの音響調整用の棚はソファで吸音されるためあまり意味が無い。ソファの設置スペース確保のため、高さ100cmまでの後壁の棚を削除してみる。





高所の構造が映り込んでいて分かりづらいが平面図


これはそれなりに個人的に抑えておきたいポイントを抑えられている気がする。
左右の吸音率を揃えるためにソファが2組あるが、それだけではなく実際はほぼベッドとして使うソファベッドと、普通にソファとして使うためのソファの用途の異なる2種類のソファがあるのは問題ない。
ソファとデスクを向かい合わせる位置に動かせば応接もできる。応接は頻繁にするものではないからたまに使えればいいし、たまにであれば動かす労力も気にならない。応接しない時にはソファは邪魔になることはない。

ただ以前にあった掛け布団を収納するスペース、使用していない機材やシアター機材などを収納するスペースはなくなってしまっている。必須ではないので許容できるものだが、全面に棚がある割には大きな物は収納できない事実は否めない。





後方の床座スペースの廃止と作業用通路の固定階段の廃止

2021-07-29 13:16:14 | オーディオ
以前に設計した仮想部屋で響きや音楽鑑賞の使い勝手だけでなく、居住空間としての使い勝手を重視することで「つい行きたくなってしまう部屋」にすることを重視した。

そのために後方スペースを床座としたが、横になったり自由な姿勢を取るためというのが理由である。
ただそのためだけに床座スペースとして高さをかさ上げする必要あるのだろうかという疑問、床強度を確保しづらくなるという懸念、床座スペースなのに机と椅子があるという矛盾があった。
調べてみるとソファベッドもいろいろバリエーションがあり、別に床座にして布団を敷かなくてもソファベッドを用意すればお昼寝スペースは作れそうだ。
なので床座の床の高さをかさ上げするスペースを一旦廃止することにした。


また、作業用通路の階段は最初は左右に2つ付けたり途中から棚階段として1つにしたり、一部を可動式の脚立で代用しつつ高所は固定の棚階段にしたりしたが、ドアの近くにそういった階段を付けるのはなかなか取り回しが悪く、強度や実際に登れる設計なのか疑問もある。
いっその事可動式のハシゴ的なロフト階段にした方がいいだろうということでドアの向かい側に可動式のハシゴを設置することにした。


元々棚階段を設置していたスペースはその奥行きを利用して使っていないコンポーネントやシアター関連機器を収納するスペースとした。
敷き布団を収納するスペースは不要となったが掛け布団を入れるスペースは必要であり、布団収納スペースはそのまま残した。スペースが余ったとしても布団以外の大型の物を収納する時に使えるので。


設計的にやや無理があった部分を解消させたような感じだが、これで「つい行きたくなってしまう部屋」になっただろうか?もう少し考察する必要があるように思われる。

窓ガラスは音が悪いことについて考えてみる。

2021-07-24 13:35:03 | オーディオ
各所で言われていることではあるがガラス窓は音響的には良くないと言われる。
そこから思考停止していたが、少し深掘りして考えてみようと思う。

基本的には防音的にも優れていないものが多いのは事実だろう。
薄いので遮音能力が低くなりがちであり、一枚の板なのでコインシデンス効果で透過する周波数が出てくる。開け閉めをする機構の影響で音漏れしやすかったりする。
遮音に関してはそれらの対応を行っている製品が多く存在するので満足できるレベルかどうかは別として遮音性の高いガラスを採用するか二重ガラスにすればそれでいい。

では窓ガラスの響きが悪いということに関してだが、それも明らかに悪い要素は存在する。
先のコインシデンス効果で透過する周波数と反射する周波数が存在するので反射音の周波数特性がガタガタになる。
開け閉めする装置なので可動性と軽さが必要なので、薄さもあいまって共振しやすい。反射の際に共振すると周波数特性が悪化する。
ガラスの向こうが見えるような窓は当然のように高いレベルの平滑さが確保されている。それにより反射音がきつい感じになりやすい。

この辺りの時点で音響として望ましくないのは間違いないが、ガラスの材質的にどうかというと材質的に全否定するような情報は自分が調べた限りでは見当たらない。
鉱物の加工品なのでガラスそのものが音が悪いものともあまり思えない(特別良いとも思えないが)。
結局のところ窓用の薄い板ガラスをサッシに納めた構造自体が音が悪いのではないかと思える。

向こうが見えるような視覚的透過性を期待する窓ではFix窓にして共振を防ぎつつ、二重サッシや厚みの異なる合わせガラスを用いてコインシデンス効果を緩和するなどを行うことで若干の音の悪さの解消を図ることができるが、反射がシンプルすぎて音がきつい感じはどうしようもなさそうだ。平滑でないと窓の向こうは見えないが平滑な鉱物素材だと反射はどうしてもきついものになってしまう。

では採光のみを期待する窓だとどうなるだろう。光が入ってくれさえすればいいので平滑である必然性はなく、ある程度やりようはあるかもしれない。
ただ曇りガラスの微少な凹凸では可聴帯域にほとんど緩和効果を期待できない。共振のしやすさの解消という意味ではガラスブロックを使ってもいいのかもしれない。
内部が若干の真空になっていたり厚みが大きかったり、薄い板ではないのでコインシデンス効果や共振などはあまり起こらないのではないだろうか。
ただガラスブロックは目地の劣化で気密悪化の原因になったり目地自体の断熱性などの問題もあるので凝った割に恩恵が少ないのかもしれない。
ガラスブロックと窓ガラスの二重ガラスにして内窓にガラスブロックを配置し、ブロックは凹凸を付けて積み上げることで音の反射を拡散させるようなことをするとガラスでも音の良い窓にできるのではないだろうか。
ただそういった施行を想定されている製品ではないのでコストと手間と安全性を考えると得策とはいえず、そこまでするなら窓を排除した方がいいし、大して面積を必要としない採光用の窓にそこまでする必要があるかというとあまりないだろう。
結局沢山面積を取ることでメリットがあるのは窓の向こうの景色が見える透明なタイプの窓であり、そういうものでないと部屋の開放感は確保できないからだ。

音響のことをしっかり気を遣うなら窓を最小限にするという選択があるだけに、
音響が良い感じに配慮されたガラスで窓をデザインするというのは難しいというのが自分の中での感想になってしまう。うまい方法があればいいのにと思えるが難しそうだ。

リスニングルームの哲学

2021-07-19 22:11:48 | オーディオ
リスニングルームは室内の響きだけ良くすれば良いという訳では無いというのは少し前から考え始めていることだが、その辺りを掘り下げて考えてみたい。

理想的なリスニングルームを考える場合、アプローチの仕方は異なるにしろ、それなりの容積と面積を必要と考えるケースが殆どである。
そして殆どの場合、リスニングルームのオーナーは敷地を持て余しているわけではなく、広大な屋敷の数ある部屋の一画にリスニングルームを作るというわけではない。
さらに音楽鑑賞を行う場合、真剣に鑑賞のみを行う場合と、視覚的に何かしながら(読書、スマホ、PCなど)鑑賞する場合がある。

上記の理由から、単純に真剣に音楽鑑賞をする時だけを考えて最適化した仕様にすると、
「所有敷地の多くを占有した一室なのに利用する時間が少ない、または他の用途に利用しづらい」となってしまう可能性が高い。

そのため割と頻繁に行われるのが、ホームシアター機能とのコンパチブルであり、それを自分も実践している。
ホームシアターがメイン機能でステレオがサブ機能であればいいのだが、ステレオメインである場合、実際に利用してみると、ちょっとどうなのかなと思ってしまうのが現実である。
ステレオのセッティングに自由度を与えるためシアターのサラウンドバックとステレオを兼用とし、オーディオのフロント面とシアターのフロント面を別にしたことはそれなりに機能しているのだが、音質的な問題以外が考えきれていなかった感じがする。

ホームシアターにしてもステレオ再生にしてもPCなりタブレットなりスマホなりテレビなりで鑑賞することはできる。サブスクリプションサービスの普及もあり、そのアクセスの容易化は驚嘆に値する。
それゆえ、ホームシアターにしろステレオ再生にしろ大仰なシステムを利用する場合は、手軽さよりもそのクオリティや核心に真剣に向き合って鑑賞したい時に限定しがちである。利用アクセスの容易さは情報端末を用いたサブスクリプションサービスには決して勝つことはできないからである。
リスニングルームの中にステレオシステムとマルチチャンネルのシステムをそれなりに本気で導入すると機材だけでかなりの専有面積を占めてしまうし、シアターの暗室を作るため採光照明の手段はかなり制限されてしまう。なのでそれ以外の用途では利用しづらい部屋になってしまう。

相応の面積を使って造るリスニングルームを真剣に聴く以外でも利用しやすいものにするにはどういう活用がいいのかと考えると、他にある解決策が応接室を兼用するというパターンである。
家族との交流、同じ趣味を持つ者との交流、来賓に対する応接、それぞれで若干対応が異なるが他人と関わり易い機能を搭載するという発想である。
だがこれもよくよく考えてみると個人的には相性が良くないのではないかと思えてきている。
大前提として応接の場合、人と人が向き合うことになるが、オーディオリスニングの場合は鑑賞するときにリスニングに望ましい方角が1方向しかない。
客がリスニングに理想的な方向に向けたとして、自分がスピーカーを背に座ることになる。
そんなところにソファでも置くのか、毎回移動させるのか。
それは具合が良くないとのことでスピーカーから90度傾斜した向きで客と自分が相対する場合、両者ともリスニングに妥協したポジションになる。そして来客がいないときにはリスニングポジションの付近の左右に邪魔なソファが2つ鎮座することになる。リスニングを妥協するなら、あえてその部屋で応接する必要があるのか?
そういったことを考慮すると応接室という用途での相性はあまり良くないのではないのかなと思う。基本的には書斎の延長線上と思うので1人で居室している用途を大事にする設計思想の方がいいのではないかと思っている。

基本的にはリスニングルームは防音室である。外からの音が遮断され、隔絶された空間となる。空間として隔絶するのは音漏れによる他者との干渉を避け、他者の音が再生音楽に干渉するのを避けるからである。
そういう隔絶された空間を利用する場合、やはり自分以外の人間と共有する空間としては使いづらい、少なくともメインの用途としては自分独りが篭もるための設計を目指す方が理に適っている。

別に再生音楽リスナーでなくても独りで篭もりたいという欲求は古今東西存在する。家を建てる時に夫が書斎を欲しがって揉めるのはよくある定番の問題となっているし、落ち込んだときに「独りにして欲しい」というセリフはよく聞かれる。
独りに隔絶されたいというのは自分が耽るために必要だからだと思われる。
音楽を聴き耽るだけでなく、歌う演奏する。書物や情報端末を読みふける。嗜好品をたしなむ。絵や書をかいたり、物を作ることに没頭する。様々なことに思いをふける。激しい運動は無理だとしてもストレッチやヨガなどで体に心を通わせる。そういったものに耽る、または意図的に何も考えないような行為(いわゆる瞑想)に最適化した部屋にすることがリスニングルームに相性がいいのではないのかと思えてきている。

脳に入力する・・・読む、観る、聴く、食べる、飲む
脳で熟考する・・・過去を内省する、未来に想いを馳せる、瞑想する
脳から出力する・・・書く、描く、歌う、弾く、作る、体を動かす、表現する

こういった行動の大部分は別に特別な部屋がなくても可能ではある。だが、一般的な外界と隔絶されひたすらに自分に向き合える空間であればこそやりやすい、捗る、新たな境地で行えるのではないだろうか?
リスニングルームに他の機能を持たせるとしたら応接よりもこういった行為を行うことを支援するような部屋にすることが良いのではないか?
上記したような行為はありふれた物ではあるが人間としてかけがえのない営みであろうと思う。その環境を大事にするというのはオーディオ趣味の人間が高じて専用室を造るという行動から一歩進んだ、多くの人に理解される余地のある行動ではないだろうか?

オーディオリスニングの音質というものの大前提は自己完結であり自己満足である。
科学的であろうが独善的であろうが、その上位に自分の満足が存在する。
客観的にどれだけ良かろうが悪かろうが所詮は自己満足を達成できているかが一番の大事である。
音質を良くする為の部屋というのは大事ではあるが、上記に挙げた脳の入力、熟考、出力を支援するための部屋という発想を取り入れて「音の良い部屋」から「人生を豊かにするための部屋」への発想の飛躍をしてもよいのではないかという考えに至っている。

リスニングの姿勢は基本的に座位であるが、姿勢を正したい時、リクライニングしたいとき、横になりたいときがあるように、その他の脳の入力、熟考、出力をする際に最適な姿勢は様々である。脳は働くけれども体が疲れているときは横になりたいし、体が元気を持て余しているときは歩き回りながら考えたいとなる。
コンディションに応じて姿勢を変えることに対応できる部屋が良い部屋、使い易い部屋、満足度が高い部屋になる気はしている。

自分はどういう響きにしたいのかを纏めてみる 2021.7

2021-07-16 13:10:22 | オーディオ
割と書き残したtipsがバラバラになっているせいで、どうしたら良いのかというのが自分でも覚えていない感じになっている部分もある。

結果的に自分はどういう響きを理想とするのかというのを過去の書き残したtipsを見直しながら考え直してみたいと思う。

まずBlackbird Studio Cのような床以外高度な拡散をする部屋からの引き算で考えた方が早そうと思われる。
全面を高度な全拡散をすればある程度の問題を改善できるが、早期反射音が無くなってしまうことになる。
早期反射音がなくなることでS/Nの分子が減少するので明瞭さが落ちる可能性がある。
早期反射音がなくなるとASWの効果が得られないことになり、音像の幅が極端に狭くなることになる。
音源の中に収録された音像の幅があればそれを知覚はできるし、モニター用途であれば部屋によって作られる音像の幅は不要なのかもしれないが、リスニングルームの場合はあっても良いと思う。
なので拡散自体は肯定するけれども早期反射音なくすほどの拡散は大変だからしなくていいし、むしろ残したいというスタンスにはなる。

・ITDGは床以外で5ms程度は確保するがそれ以上は無闇に追わない。
・初期反射音はまず取捨選択する。スピーカー側の側面は残すが、反対側と後壁は拡散と屈折で排除する。天井と床はそれほど有害ではないので若干の拡散のみとする。天井や床で高度な拡散吸音は現実的ではないのも加味する。
・側面の反射音は時間軸の分散を行うことを目標とし、スピーカーの外側からの時間的に偏り無く分散された反射音がなだらかに減衰するように到来するように設計する。反射音の周波数特性をなるべく変えないようにする。
・正面壁の初期反射音は音像の近さや圧迫感の原因となりモニター用途ではあまり好ましくないものだが、リスニングでは個人の好みで音像の近さが好ましいと感じる場合がある。個人の嗜好も変化するので、現時点で一つに規定するよりも調節しながら決定していくのが良いと考える。
・他の壁はシミュレーションできる二次反射音を除いて、基本的には残響成分を作り出す目的を考慮する。500~2000HzがLEVを作り出す周波数のためそれらの1/4波長である4.5〜17cm程度の拡散体を利用する。その周波数を処理できれば材質や剛性は多少の範囲で妥協する。
・拡散処理の面積に制限がある場合は側壁後壁の耳の高さかその上方を優先する。
・拡散でも多少の吸音効果があり、最大限拡散の副産物の吸音で対応するが、拡散処理を行った上で吸音が必要な場合必要な部位に吸音を行う。
・定在波は部屋の寸法比が問題なければ多少の山谷はあまり気にせずいじらない。