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モッチリ遅いコメの距離感

オーディオルーム、シアター、注文住宅などに関してのblog。

室内音響のハウツー方式の解決策をまとめ

2022-04-03 17:26:03 | オーディオ
今までどのような室内音響処理がいいのかと考えることが多かったが、今の音をこうしたいと言うときにどのようにすべきか、という観点でまとめたことはなかった。
考え方の整理として、備忘録として、早見表として今回の機会に記事にしてみる。
理屈的な観点からもある程度妥当性があるだろうというというもののみを扱うので実践でどこまで効果があるかは断言できないところはある。
今回言述するものは全てステレオ再生のみのケースが前提となる。

●音像を明確にしたい
 →間接音の不整を改善する。直接音の割合を増やす。
・室内を左右対称にする
・できなければ吸音を多くする
・スピーカーをリスニングポジションに近づける
・ホーンスピーカーを採用する

●音像に奥行きを付けたい
 →ITDGを増大させる。早期反射音の割合を減らす。
・スピーカーと壁との距離を離す
・スピーカーとリスニングポジションとの距離を離す
・大きな部屋に設置する
・拡散体を設置する(特に早期反射面)

○音像を近づけたい(ボーカル等を前に出したい)
 →ITDGを縮小する。早期反射音の割合を増やす。
・スピーカーを壁に近づける
・スピーカーとリスニングポジションの距離を近づける
・小さい部屋に設置する
・反射板を設置する

●音像をワイドにしたい(横に広げたい)
 →ASWを増大させる。早期反射音の入射角を大きくする。
・スピーカーと側面の壁との距離を広げる
・側面の壁を拡散させる
・大きな部屋に設置する

●音像を大きくしたい(縦に広げたい)
 →音源を縦に大きい物にする。下方からの反射音を減少させて合成音像が下方に移動する要因を除去する。
・スピーカーとリスニングポジションを近づける
・床を吸音させる(特に早期反射面)
・アレイスピーカーを採用する
・仮想同軸のスピーカーを採用する
・ホーンスピーカーを採用する

●音場感を出したい
 →LEVを確保する。
・後壁と側壁と天井を拡散させる。
・天井高を確保する

考えがまとまり次第適宜加筆予定。

物価高時代のオーディオについて考える

2022-04-02 12:41:05 | オーディオ
ピュアオーディオ関連の値上げはここ数年ではオーディオ業界のニュースの大半を占めるくらいの日常茶飯事だが、コロナ禍とウクライナ情勢の影響でそこに拍車がかかった様相を呈している。
ソニーやヤマハやパナソニックやオーディオテクニカなど大手も耐えきれずに値上げを発表している。


https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00112/033000069/


記事の無料部分にもあるように家電製品の中でオーディオの値上げが顕著のようである。
ハイエンドオーディオのように独自かつマイナーすぎる市場で値上げをされても他の要因を疑う余地があるが、
ゼネラルオーディオのメーカーが相次いで値上がりしつつ、それがニュースとしても取り上げられるくらいなのだから、オーディオ製品の製造コストの大幅上昇は否定しがたい確固たる事実となりつつある。

なぜオーディオ製品でコスト上昇が顕著なのかと考えてみると、
・そもそも市場が縮小中であり規模拡大によるコスト低減を生み出しにくい。
・技術進歩によるコスト低減が期待できない。(CPUやメモリの場合プロセスルールが微細化すれば従来機のハイエンドと同等の性能の廉価モデルを作れるが、オーディオに関して同様の事例はほとんどない)
・物量や重量を要求されるため材料費や輸送費の高騰の影響を受けやすい。
・半導体や金属など高騰が著しい分野の使用量が多い。
・材料に輸入品が多く、海外ブランドも多いため円安の影響を受けやすい。

この辺りが原因となってくるのだろうか。
そもそもプロ用はまだしもコンシューマー用途の高品質のオーディオシステムは必需品化と言われれば全くそんなことはない。いわゆる贅沢品である。

・疫病の大流行で供給や物流が滞っている。
・戦争の影響で物資が少ない。
・現在の我が国の中央銀行が極度なハト派であり円の価値が毀損されている。

この辺りの要因が重なっている中であえてオーディオシステムを買い進めるという時期ではないのかもしれない。
来年の2023年以降にそれぞれの要因が和らいでくるとは思われるので、それ以降に大きな買い物は検討してみようとは考えている。
俯瞰してみると今の時代は世界的に見ても豊かとは言いづらい状態にはなってきている。ピュアオーディオのような贅沢な趣味はその時代には逆風なのは仕方ないように感じる。

書評:「音響聴覚心理学」 誠信書房 大串健吾

2022-03-29 09:29:48 | オーディオ
音響心理学の本について一度読んでみたいと思い標題の本を読んでみた。

実際の所はどうなのかは不明だが、非専門家が一読した印象としては基本的には大学レベルの教科書という印象の書籍である。
幅広い観点からの基本的な学術的観点が網羅されている。非専門家にはやや難解な点も多く、100%理解しようとすると厳しい印象がある。発行が2019年であり情報として新しいのが素晴らしい。

「心理学」と銘打っているものの、非専門家からしてみると生理学的な内容が多く感じる。一般的なイメージの心理というより感覚の部分を多く扱っている。そのため、一般人のイメージする心理学というファジーなイメージと違って、数値や数式や図表などが多く扱われており、信頼性や客観性が相当に担保されている情報を扱っている。

オーディオに関連するような項目はあまり多くはない。実際にオーディオに直接活かせるような知識も少なかった。聴覚に関しての基礎的網羅的な知識を備えておくという意味では良い本であるとは思われる。

ライブな部屋で高域をイコライザーかけるべきかを考える。

2022-03-15 21:31:38 | オーディオ
今回の疑問点に関しては専門家が答えを出しているかもしれないが、自分がその答えを見つけられているわけではないので、疑問だなというだけで答えはない。

音楽鑑賞において、部屋の響きがある程度存在することが望ましいとは常々言われている。
そして間接音というのは基本的には中低域よりも高域の方が減衰しやすい。
なので響きも含めて周波数特性を計測すればハイ下がりのデータが出てくるのは必然となる。

ただし、製作現場では果たしてそうなのかというとやや疑問である。
スタジオは割とデッドな環境が多いため、間接音が少ないと考えられ、ハイ下がりの間接音が少ない現場で音楽が作られやすい。
そもそもライブなスタジオであるにせよ、デッドなスタジオであるにせよ、イコライジングによってスタジオの周波数特性は平坦化されることが多い。
なのでリスニングルームのようなハイ下がりになっているとは想定しづらい。

また、ヘッドホンでのマスタリングにおいても、ほぼ直接音のため、これもリスニングルームのハイ下がりが反映されていない可能性が高い。

リスニングルームで高域がなまることを予測してハイ上がりにマスタリングしてくれている可能性もあるが、ヘッドホンリスナーのことも考えれば、そこの配慮をすることが絶対的な正解とは思えない。

つまりスタジオでのスピーカー、ヘッドホン、リスナーでのヘッドホンではハイ下がりにならず、リスナーのスピーカーでのリスニングにおいてのみハイ下がりになるということになる。
これは当然のことと受け入れるべきものであるのか?部屋の響きがある方が良いというのは高域がなまってまろやかな音になるからなのか?どちらかというと高域減衰は副作用であり、主作用は間接音による音の適度な厚みや音源の幅や音の広がりなどであろう。

個人のオーディオリスニング環境にとって必要な要素を整理してみる。

2022-03-04 18:06:41 | オーディオ
 今までも音が良い、部屋がいい、システムがいいということについて考えたことが何度もあった。その際に1つの要素が良いだけでは良い訳ではないだろうという結論にいきつく事が何度もあった。

 どういう要素があれば良いのか、それだけではいけないのかについて整理できるのではないかと考えたのが今回の記事である。

 検討の結果、以下の5つの項目がどれだけ達成されているかがリスニング環境の評価項目になるのではないかと考えられる。

・物理的特性
・心理的効果
・室内環境
・愛着
・可変性


・物理的特性
 オーディオにとって特性は客観的評価として主要なものである。これを無視したシステムが良いというのは独りよがりな評価と言わざるを得ない。
ただ、特性の良さだけを追い求めたシステムを最上と評価する人が少ないのも事実である。
特性はオーディオ環境の一要素として重視すべきものと考えられる。

・心理的効果
 当該環境でオーディオリスニングを行った場合のエモーショナルな作用、感動させられる、心にしみる、おおっと思わせるなどの心理的作用がどの程度あるかという評価である。
物理的特性の項目によっては心理的効果と相関関係はあり、特性と心理的効果は明確に分離できるものではない。
ただ、音を歪ませることでもプラスの心理的効果が生じることがあるのはギターアンプなどにより実証されているのが事実である。そのため、ある程度の音源の忠実再現が求められる再生音楽にとっては、物理的特性と心理的作用はある程度分けて評価すべきもと考えられる。
 特性や他の項目が優れていたとしても心理的効果が低いものは「悪くはないシステム」という評価に落ち着いてしまうだろう。
 ただ心理的効果のみを追求したシステムは「個人の好み」だけに依存した独りよがりなシステムと言わざるを得ない。そしてその独りよがりなシステムのオーナーも人間である。人間は使っているうちに飽きてきたり好みが変わってきたりする。
 独りよがりなシステムでオーナーの好みが変わってしまった場合、それを好ましいと考える者が皆無になってしまうため心理的効果のみを追求したものは望ましくないと思われる。

・室内環境
 オーディオシステムとして特性が良く、出音の印象も素晴らしいと思えるものがあったとする。その特性や心理的効果を追求するあまり、その室内環境が悪くなってしまう場合がある。
 個人のオーディオリスニングは業務や修行でやっているわけではない。音が良いなら苦痛も受け入れなければならないという類いのものではない。なのでリスニング環境の居住性が良好でなければならない。
 そもそも居住性と物理的特性や心理的効果は完全に相反するものではない。物理的特性や心理的効果にわずかな妥協を行いつつ工夫を行えば室内環境と高いレベルで両立が可能なはずである。なので居住性を無視して音を追求すべきではないと考えられる。

・愛着
 理想とするオーディオ環境は人によって十人十色である。物理的特性が優れていて、心理的効果も高く、室内環境が良いというものを設計することは恐らく可能だろう。ただその条件を満たした1つの環境が万人にとっての至上の環境かというとそうではないだろう。
 それに一時はその人にとっての至上のシステムであったとしても未来永劫に至上のシステムという訳でもないだろう。
 結局のところ個人がその時点でどれだけその機器や部屋に愛着を持っているかという要素がその時点での良い環境かどうかに大きく関わってくる。どんなに良い機材でも所有者が使いたい所有したいと思わなくなったら本人にとっては至上のコンポーネントとは言えないのである。現に大抵の名機は中古に出ることを考えればその要素は無視して良いとは思えない。

・可変性
 上記でも述べたように個人の趣向は変わるので、過去での最高の解答と言える環境を揃えられたとしても、未来にそれが最高であり続けるとは限らない。
 そもそもオーディオ機器も技術の進歩により最高の機材は更新されるし、音響理論も新しくなっていくため、部屋の環境も未来の最高の環境が今と同じとは限らない。
 そういった意味でも機材の更新のしやすさや室内音響の調整のしやすさなどが必要であると考えられる。(一度搬入したら搬出できなくなる機材などほぼないので、基本的には部屋の話にはなる。)


今のシステムは自己採点100点満点で採点するなら
・物理的特性:50点
・心理的効果:45点
・室内環境:30点
・愛着:40点
・可変性:25点

くらいだろうか。あまり今の環境をよしと思っていないんだなと自覚している。

オーディオを通じて心理的な豊かさを得るための方法を考える。

2022-02-23 19:04:38 | オーディオ
若い人がオーディオをやらない、先細りが著しいなどが定期的に言われているが正直なところ思うところは多くある。
基本的には時代の価値観に合っていない趣向だからというのが大きいのだと思う。
物を所有することに重点を置かない価値観が優位になりつつあること、音楽鑑賞を趣味とする人口が減少していること、都市部の人口集中により集合住宅に居住している人の割合が増加していることなど時代に合っていない点が多すぎる。

ただ最先端の価値観を持っている人達がケチだったり貧乏だったり酸っぱい葡萄の自己正当化をしたりしているわけではなく、むしろより正しい価値観を持っているとは思える。
一昔前の世代の人間が車や腕時計などでやっているような、よりグレードが高い物を競い合うように買い集める価値観の方が望ましいとは言えないのではないか。

ただし、オーディオ機器や音楽鑑賞に時間をかけて浸っていることで、人生における充実感や心の豊かさを感じる人がいるのはいるのは、どの世代でも自分を含めて一定数いるのは事実である。
そういう人種が自らの充実感や心の豊かさのためにオーディオ趣味を続けていくというのはどの時代の価値観であれ概ね肯定されるべきものである。

逆説的な例を挙げてみる。オーディオ機器を買い揃えることで充実感を感じ、他に特に趣味と言えるものがない人に対して、物を買い集める行為など悪趣味だと批判して抑止して、余裕資金を有効に使わせないまま一生を終えさせることが良いことなのかというと違うだろう。

ただ、オーディオ趣味であったとしても音質を追求すること、良い高価な機材を買うということは心の豊かさを得るための手段の一つでしかないということは留意せねばならない。
オーディオ趣味は機材を吟味することで音質を追求する過程に充実感を感じたり、音楽鑑賞による心理的な充足効果を高めることが目的であると考えている。
良好な音質や高価な機材はその目的を達成するために有効な物ではあるが、高価な機材で音質が良くなったからと言って必ずしも心理的な充足感を得られる訳では無い。
音質的にはプラスに働きそうではあるものの、心理的には豊かにならない方向のものは採用に慎重になった方が良いのではないか。
例を挙げるとするなら、機材の価格がオーナーにとって高価すぎるため購入することで生活に影響を及ぼす場合、機材が大きすぎるなどして部屋の居住性を損なう場合、デザインが個人的に好みでなかったり設置により室内の美観を損なう場合、オーナーにとって取るに足らない程度の音質向上効果しかない場合、オーナーにとって望んでいない方向に改善する場合などがそれに該当する。

そして割とやりがちになってしまうことではあるのだが、同じ趣味を持つ人達に対して優越感を持つことができるようにすることを目的に機器を買い進めること、マウンティングの道具に使うのは可及的に慎むべきではないだろうか。
副次的にそう言った効果が多少はついてきてしまうのは仕方ないにしても、メインとすべきではないと思われる。

理由としては、ある一面では優越感に浸ることで快感にはつながるが、それで人生として豊かになるかというと微妙な気はしている。
オーディオ趣味は上を見ればキリがないだけに優越感を感じるには効率が相当に良くないし、一般人にも理解されないから他者から承認される機会も限られる。
間違いない優越感を得るためには最新世代のウルトラハイエンドを買い換え続けなければならないがそれが現実的な人は相当に限られる。
また、同じ趣味を持つ他者をマウントすることで優越感という快感を得る行為は他者を踏み台にして自分を楽しませるため、他者から批判されやすく、批判されても仕方ない行為である。

そういった人生を充実させるためのオーディオという視点を大事にしていきたいものとは考えている。

ワンルーム一人暮らしの延長線上のリスニングルームを設計する。

2022-02-22 00:04:34 | オーディオ
しばらくブログの更新が止まってしまった。
理由はいくつかあるのだが、1つは現在の家族構成的に防音室に1人で籠もれる時間が取れないためあまりオーディオをやっていないことにある。
さらに言えばあまりオーディオ関連で注目するような新製品や新技術がなかったこと、日本音響学会のフリーアクセスで扱いたいと思える新しい論文が見つからなかったことなどもある。

それに加えて、仮想リスニングルームがある程度まとまったこともあるのだが、仮想ルームのコンセプトとして引っかかっていた部分が1つあったことに気付いた。

仮想リスニングルームは室内音響も重視しつつ、日常生活の中で自然と音楽鑑賞ができるようなアクセスの良さを重視すべきと考えている。防音や調音だけをひたすら突き詰めたリスニングルームは日常生活からは隔絶されたアクセスの悪い部屋になってしまうからだ。

真剣なリスニングを家族の迷惑をかけず、リスニング中は家族の干渉を受けないようにしようとするならリスニングルームは別棟にすべきだが、日常生活の中に良質な音楽と共にありたいと思うならリスニングルームでもある程度の生活ができる機能が必要だ。

なのでリスニングルームに隣接して一般住宅も備えているようなアメニティを設置した小部屋を以前に設計したのだが、そこで生活ができるように水回りなどを設置していくと12畳くらいになってしまった。24畳のリスニングルームに対して12畳ものスペースを用いて音響的に寄与しない部屋を追加しないといけないというのは、ややコストが大きすぎる気がする。





そのあたりをより合理化しようというのが今回の記事での試みである。
なるべく生活に寄り添ったリスニングルームを想定すると先述したが、まずどのような生活スタイルを想定しているのかというのを考え直してみた。
別棟になるので、自宅で家族と関わる用事がない上で1人でいたい時間でありかつ、仕事場にいく必要のない時間を愉しむという目的になる。

その時間をどのようにして音楽とともに生活したいのかということを考え直してみたが、結局のところ自分は大学生で一人暮らしをしていたときのように気ままに音楽鑑賞を追求したいというのが一番のようだ。
大学時代は狭い1Kの住宅で一人暮らしをしていたので、室内生活のすべては概ね1部屋内で完結していた。その部屋にオーディオシステムがあるので何をしながらでも音楽が聴けたし、気が向けば即時に真剣なリスニングができたのである。

今の戸建ての現在の住宅では食事スペースや生活スペースや寝室が分けられている上で、専用のリスニングルームが設定されている。しかも家族という同居人もいる。
そのため大学時代と比較すればオーディオシステムのグレードも防音も室内音響も向上したものの日常生活と音楽鑑賞が切り離されてしまった。その隔絶を解消したいけれども、大学時代に大きく妥協を余儀なくされていた音量とシステムのサイズと室内音響を気兼ねなく好きに出来るという部屋が個人的には理想的なのだと思う。

そのあたりを加味した結果、1Rの住居の間取りの居室部分をそのまま音響調整されたリスニングルームにするという発想で部屋を設計してみることにした。



間取りの下方はそれほど特殊ではない1Rとして(水回りが左右に分割されているのは一般的ではないが)、居室部分が上下に延長された形でリスニングルームが設置される。
リスニングルーム部分は高天井となっている。






居室部分とリスニングルームは緩い区分けはされているが同一空間となっているため、音響的に考えた場合の容積は両方の和となる。
居室部分とリスニングルームの区切りはある程度拡散効果がある仕切りを作ることで居室部分の左右対称性が完全でなくても音響効果の左右差が現れないようにする。
リスニングのみに集中する時はリスニングルーム内で鑑賞し、作業時や食事時や寝転がりながらなどの視聴の場合は居室スペースでの鑑賞を行うというコンセプトである。



マイホームクラウドというページで外観のシミュレーションもできるのでやってみた。
ただの箱になっていないいので外見もそこそこにはなっている印象







これによって、リスニングルームの容積と関係ない空間が12畳→7畳に減少した。リスニングルーム+居室の面積として24畳→27畳と増加した。
リスニングルーム+居室部分は高天井の部分16.5畳と一般的な天井高の部分10.5畳の領域ができることになり、高さ方向の定在波が分割されることになった。
後方のみ低天井のため天井が低いことによるデメリットはあまり多くなく定在波が分割されることの方がメリットが大きそうである。
そして1R型の居室部分は特に高コストを必要とする構造にはなっていないのでコスト低減になると思われる。
またリスニングルームと居室部分はどちらも単独でも成立する建造物となっており、それをつなげたものとなっている。
そのため見た目上は大部屋だが、設計上は中くらいの部屋が2つ連結しているだけなので設計的強度的に無理がなく、その分強固に作る分にも有利となる。

2個体で1つのスピーカーの可能性について考えてみる。

2021-11-14 07:00:06 | オーディオ
コンポーネントを用いたステレオスピーカー再生はゼネラルオーディオの市場変化により相当に先鋭化しており、
ハイエンド帯では超高価格かつ超弩級のものが目立ってきている。

そしてそれらの相当に巨大なハイエンドスピーカーの内部構造の紹介を見てみると、
大きすぎて一塊で作ることができないし、輸送も困難であるため、いくつかに分割して作られ、オーナーの設置場所でそれらを合体させて1つのスピーカーとして機能するというものも多い。
修理時のことなども考えるとそれは合理的な手法なのだが、そもそもの話として大規模なスピーカーシステムの場合、ツィーターからウーファーまで全ての振動板を一つの物体に納める必要があるのか疑問になってくる。

スピーカーはやはり100kgを超えると扱いがかなり困難になってくる。
オーディオ趣味はやはり音を良くするための試行錯誤が楽しみの中の相当なウエイトを占めているだけに、設置場所の調整を行うのが困難なことは良いことではない。
趣味性の高い弩級スピーカーを買ったらオーディオ趣味の醍醐味の一つであるセッティングが満足にできなくなったというのでは本末転倒とも言える。

そのため、ハイエンドスピーカーの中にはウーファーのみを独立したタワーにして2個体で1チャンネルとするものもある。
2個体に分けるのはそれなりにメリットが多い。ウーファーは振動板の反応が比較的遅いので、タイムアライメントを考えればリスニングポイントに少し近めの方が良いが、2個体だとウーファーのみ近づけることが容易にできる。
そして低域は部屋のモードに強く影響される帯域であるが、モードの負の影響を緩和するような位置が存在する。つまり中域高域で具合の良い設置場所と低域で具合の良い設置場所は異なることが多いが2個体だとそのあたりをフレキシブルに対応できる。
そして2個体に分ければそれぞれの重量を減らすことができるためセッティングのしやすさも改善が望める。

という理由で2個体のメリットが多いように考えているが、ホームオーディオにおいて個人的な理想をしっかり叶えてくれる機種はなかなかない。
YGのハイエンドのようなウーファー別個体の場合、規模が大きくなりすぎてしまっており、そもそも別個体であってもそれぞれの重量が大きすぎてセッティングのしやすさの改善にはつながっていない。
Genelecのようにブックシェルフのスタンドにもなるウーファーをオプションで販売する手法はセッティングのしやすさは期待できる。だがオプションウーファーが別売りのため、ブックシェルフだけでも成立する仕様になってしまっている。なので別個体の重低音専用のウーファーが存在することによって低域〜中低域を担うウーファーへの負担を軽減するという効果を期待できない。

自分の考える理想の2個体は合計4wayスピーカー構成で
メインの個体には直径20cm未満の応答が良く歪みの少ないウーファーを搭載し、ある程度の指向性を持った帯域の低域を再生させる。バスレフで無理にローエンドの帯域の拡張をしようとせず、50Hzくらいで一気に鳴らなくなるようなものでいい。要は周波数帯域は狭いが制動が良く効くウーファーを搭載する。
そして別個体に直径30cm以上のサブウーファーを搭載し、50Hz以下の再生を担当させる。こちらは制動よりも周波数特性が重視の性能とする。そんな仕様にすると個人的には良いスピーカーな感じがしてくる。

結局のところこれは素人の考える最良でしかなく、現実的には大してメリットがないのかもしれない。
ただそういった物が出てこないのは机上の空論だからというだけではない気がしている。

別個体はミッドとウーファーの位置関係をオーナーが設定しないといけないので敷居が高い。
そしてこのスピーカー専用に設計されたサブウーファーは開発コスト的に非効率である。
さらに別個体にするとモニュメントとしての優美さが損なわれる。
などの事情があるのかもしれない。

というハイエンド界隈のスピーカーを見つつ自分の今後欲しいと思えるスピーカーの理想像について思いをはせてみたというのが今回の記事であった。

リスニング時以外におけるリスニングルームの音環境を考える

2021-11-01 13:36:33 | オーディオ
以前に考察した事項であるが、
室内音響学的な観点で言えばリスニングルームはある程度の広さを取ることが望ましい。
ただ自宅敷地内で大きな面積を確保した部屋がリスニング用途のみにしか使えないのでは効率が悪い。
富豪の豪邸のように自宅の延床面積や予算に余裕があるとしても、部屋の用途が限定されすぎてしまえば利便性の低さゆえにリスニングルームへの足が遠のいてしまい、リスニング体験自体が縁遠いものになりかねない。
そのためリスニングルームとは言え、セカンドリビング的もしくは書斎的のようなリスニング以外の用途としての使い勝手の向上が必要と言えるのだが、そのための課題の1つとしてリスニングルームの防音により静かすぎる環境が他の用途として使いづらくしているのではないかと問題提起をした。

ちょうどフリーアクセス解禁となった日本音響学会誌の77巻5号が音環境に関する特集であり、それに対する根拠のある知見が多分に含まれていたためピックアップしてみる。

引用雑誌は上記の通りで
明日の図書館の「音」——対話と体験によって循環をつくる——

寺澤 洋子

岡部:新しい図書館を作るときによく行政側から相談を受けるのは「賑やかとうるさいをどうやって区別したらいいのか」ということです。
社本:賑やかとうるささの区別,僕の個人的な仮説ですけれど,音の響き具合で,マイルドになりうるささが低減するというのが一つあります。
もう一つは,どこから音が鳴っているかも関係しているように感じます。人の空間は前方向に開けているそうです[18]。後ろの方で喋るのは賑やかだなと感じるけど,目の前で喋っているとちょっとうるさく感じるとかありませんか?
岡部:なるほど確かに。目の前で奇声を出されるとうるさいけれど,隣のテーブルで議論しているのは賑やかだなと感じますね。
寺澤:騒音レベルの高くない音がたくさんあると,賑やかだと思います。沢山の音が,クラスタというか,面で鳴っているイメージです。でもそれだと,ざわめきと区別できない。ざわめきは雑踏とか足音などでも感じられますが,賑やかには,元気や活気があって,コミュニケーションがいろいろな場所で起こっている感じ,多方向での人の声の掛け合いが不可欠だと思います。それがあるのが,理想の賑やかな図書館でしょうか。

引用終わり

絶対的に静かなだけの図書館ではなく、ある程度コミュニケーションが取れたり、知的体験ができるようなスペースなどを作りつつ、それによって音が生じたとしても書物を読むのに支障がないようにするにはどうすればいいのかというのを考察している上での見解である。
定位感がない、もしくは後方からの音、残響成分、もしくは間接音の多い音は環境音としてうるさく感じにくいようであり、ノイズ自体が多くてもそれぞれが大きい音でなければ環境音としては悪くないようである。


さらに同じ雑誌から
コワーキングスペースにおける知的生産性への音環境の影響とそのデザインの考え方

辻村 壮平

オフィス環境を共有できるコワーキングスペース(CWS)のおいてどのような音環境にすると知的生産性が向上するのかを他の論文を引用して総括している。

個人の「知識処理活動」や「知識創造活動」に関しては暗騒音(その環境でのできるだけ音が無い状態)と比べて、「クラシック音楽」や「自然音」を付加した条件の方が心理的な作業効率は高まっている。これに対し,音声マスカは僅かな音量でも作業し易さの印象は低下している。

プロジェクトチームで会議を行う状況に関しては50dB程度の騒音がある状況が一番会議しやすいという結果になっている。さらに知識創造に関する会議では静かであればあるほど会議がしづらいという相関が出ている。

騒音やBGMの音源の種類と会話の弾みやすさに関しては、音楽をBGMとしている場合49dBくらいまでであれば静かな空間であるという印象は保たれているのに対して、音声雑音が騒音である場合50dBくらいからうるさい空間であると感じるという。

打ち合わせのための場所に求める音環境の印象は「いい意味でざわつきがある」,「静かな印象」,「音が漏れない」ことが重要であるという知見が報告されている。

CWS のような空間において,ワーカの意識構造には「静かすぎる不快感」の心理評価モデルが存在するという知見が幾つかの既往研究で報告されている。
①周囲の音環境が“静かすぎる” と,自身が発生する音が目立ってしまう(聞こえすぎる)ため,発話や行動を抑制してしまう。(会議など複数人の場合に相当する)
②周囲の音環境が“静かすぎる” ことによって,普段は気にならないような音に意識(注意)が向き易くなり,気になってしまう。(個人作業の場合に相当する)
③ 周囲の音環境が“静かすぎる” と,音の情報が少なすぎると感じ,聴覚システムが正常に機能しているかどうか不安になる。(災害や緊急時などに相当する)

以上編集しつつ引用

上記から今回一番問題となるのは個人での知識の処理、創造に関してになる。多少の騒音があった方が作業しやすく、騒音なら何でもいいというものではなく音楽や自然音などがいいようである。


2つの論文の情報をピックアップして、リスニングルームでオーディオリスニングを行わない時間の居住性を改善するために必要なことを考える。
・室内が防音により静かすぎるため、そのままだと様々な音に注意が向きやすくなり気になってしまう。
・オーディオ的なリスニングではなくBGM的用途での音楽再生を必要とする。自然音の再生でも良いが、音楽で問題ないのであれば普通に楽曲再生すれば良いのではないだろうか。
・音楽の種類としては音声が入っていないものの方が良いようである(インストゥルメンタル)
・BGMの音量的には40~49dB程度が良いとのことであるが、オフィス用途での話であり、暗騒音のレベルが低いリスニングルームではもう少し低いかもしれない。いずれにしろ利用者本人が煩く感じない音量にすれば良い。
・音源定位としては後ろにある、もしくは定位感がないことが望ましいようである。反響音、つまりは高域が鈍っていて締まりの良くない音が多い方がいいようである。

これらを統合すると、オーディオリスニング用のシステムとは別にBGM用のシステムを用意する必要があるということになる。
オーディオシステムは音像が前方に明確にあるため、作業用のBGMとして集中力を上げる用途にはあまり適合していないためである。
ただBGM用にシステムはあまり優れた特性は必要ないようであり、どちらかというと向いているのは指向性が弱いスピーカーであり、無指向性のスピーカーやダイポール型スピーカーなどが向いているようだ。セッティングに関してもリスニングポイントに直接音をスムーズに届けるというよりも間接音が多くなるようなセッティングにする方が良さそうである。
音源は色々実験すれば適合するものは見つかるかも知れないが、文献である程度証明されているのはクラシック音源である。声楽が入っていないものが望ましい。

閑静な住宅街でのリスニングルームという条件下での必要な防音を考える。

2021-09-28 21:46:40 | オーディオ
音楽鑑賞にとって最適な音量を出すことが近所トラブルになることはもっとも避けるべき事であり、その趣味を持つ人の不幸である。
そして音楽鑑賞中に内外の騒音が入ってくることも上記のもの程ではないにしろ再生音楽のS/N比を悪化させる要因となるので忌避されるものである。

なので基本的にリスニングルームを新規に建設する際には可能な限り防音には力を入れることが多い。

ただ、1度リスニングルームを作ってみた際に、ある面では防音が足りず、ある面では防音が過剰であったと感じる。
そして部屋単位での防音を強力にすればするほど対費用効果が悪化する上に、居住性が良くなるとも限らないという印象を抱いている。

そこで、どういった形の防音であれば必要十分なものとなるのかを今回考察し整理してみようと思う。大抵の防音はそれなりに騒がしい立地での防音が多く、閑静な住宅街でのオーディオを楽しむのに必要な防音というのはあまり考察が少ないので良い機会と考えた。

自分が作ったリスニングルームの防音の気になる点としては以下が挙げられる
・屋内の音はリスニングルームと他の部屋で多少は行き来する。
・沿線の車の走行音は多少聞こえる。
・近所迷惑レベルの騒音にはまったくならない。近所迷惑防止の観点から考えると過剰な防音スペックである。
・車の走行音以外の環境音はほぼ入ってこない。鳥や虫の声、雨音、近所の人の声など完全に防いでいる。

このように十分すぎる位に防音できている面と、許容できる範囲だが十二分な防音とは言えない面があることがわかる。


騒音は音量と透過損失の引き算でシミュレーションできる。
再生音量の平均は人によって異なるが、今回は85dBとする。
ピーク時にはもう少し行くかもしれないが、瞬発的に多少大きくなってもあまり迷惑になるとは思えない。
そして再生音をリスニングルーム外から騒音として聞いてしまう隣人の聴力は30dB以下ならあまり聞こえないと考える。聴力検査で30dBが聞こえていれば正常と判定されるので、そのレベルまで減衰させれば、静かに耳を澄ませばかろうじて聞こえるレベルの音量と考えられるので十分防音されているといえるだろう。
つまり55dBの減衰を目標にすれば近所迷惑にはなりづらいわけである。

距離により音量は減衰される。

引用:日本騒音調査
途中までは距離による減衰量も多いが途中から効率が徐々に悪くなってしまう。
10mで-10dB、20mで-15dBあたりの減衰を利用するのが現実的だろう。

リスニングルームの防音であるが、ダイケンの防音グレードで考えると
引用元:https://www.daiken.jp/product/lp/sounddesign/plan/
30dB 低域減衰  シンプル★防音-掃除機など家電製品や車の音が小さく-
40dB 低域減衰 スタンダード★★防音-他の部屋ではピアノの音が小さな声くらいに-
50dB 低域減衰 プレミアム★★★防音-他の部屋ではピアノの音がひそひそ声くらいに-
くらいの減衰量となる。

防音のボトルネックとなりがちな窓では、シャノンウインドSPGのプレスリリースを参考にすると、
引用元:https://news.panasonic.com/jp/press/data/2021/04/jn210414-2/jn210414-2.html
通常のトリプルガラスサッシは平均-25dB
真空断熱ガラスサッシは平均-35.1dBとのことである。

そして隣の住宅の宅内に騒音が入ってしまうことを想定すると、隣の住宅の防音性能も考えなければならない。これはコントロールできるものではないが、ゼロであるはずはない。
-15dBくらいの防音性能が想定される。

以上の情報から、リスニングルームで出した85dBの音が、10m離れた隣接の家に侵入する時には何dBになっているかを考える。
リスニングルームの防音がダイケンで言うところの-30dBの簡易防音である場合、
リスニングルーム壁の減衰:-30dB
距離による減衰:-10dB
隣接した家の壁の減衰:-15dB
で合計-55dBの減衰量が期待できる。

85dBの再生音だとしても隣の家には30dBにしか聞こえないので、実質的にはほぼ聞こえない。
つまり窓ガラスをしっかりしたものにしつつ、距離を十分取ってしまえば、壁の防音は簡易なものであっても、近所迷惑にはならないと言える。
不要ではないにしても、必須と言えるものではなく、安全域の確保という面が強くなる。

今度は法的に騒音を定義されたものを用いて必要な防音レベルを考えてみる。
環境基本法の規定に基づく騒音に係る環境基準についての告示で地域別・時間帯別での騒音の基準量が定められている。
引用:https://www.env.go.jp/kijun/oto1-1.html
これによると夜間の住宅専用地域では45dB以内にすることが基準となっており、隣の敷地に音が入るまでに45dBまで減衰するとシミュレートした上記に計算と一致する。つまり法的に騒音と見なされない可能性が高いため法的責任に問われる可能性が低いだけでなく、当然のことながらそれは実際にも隣人が騒音として気にする可能性がかなり低い音量だということになる。

ただこのシミュレーションは再生音量が85dBということが前提となっており、それでギリギリ基準値以内というのは安全マージンが足りないと考えることもできる。
なので療養施設、社会福祉施設等が集合して設置される地域など特に静穏を要する地域の基準となる40dBまで減衰させようとするなら室内で35dBの低域減衰(ダイケンでいうところのシンプル防音とスタンダード防音の中間)が必要になるし、一番厳しい地域の基準値内に余裕を持って満たせる程度の防音が必要と考えるなら40dBの低域減衰(スタンダード防音)が必要となる。

換言すれば、しっかり隣との距離を確保しつつ、再生音量が爆音という程の音量でなければ、そこそこの防音(-40dBの低域減衰)で理論的にも法的にも十分だということになる。


では話は変わってリスニングルームを独立した一棟とせずに屋内の一室とした場合に室内に音漏れさせないようにするにはどうすればいいか。
85dBの再生音として距離の減衰は-5dBとすると、-50dB減衰させないと30dBまで小さくできない。ダイケンで言うところのプレミアム防音レベルである。
そして室内防音ドアもその構造だと必要になってくるが-50dBの性能を担保するには相当な特注のものでないと不可能である。
つまり室内騒音を完璧に防ぐのは相当に困難であることが分かる。
困難なものを物量でゴリ押しして弩級の防音性能を付与するか、室内の同居人に多少の我慢をしてもらうか、などの選択肢もあるが、そういった難のある選択肢を取るよりは可能であればリスニングルームを独立した一棟とする方がいいだろうと考える。
自分がリスニングルーム専用棟を良しと考えている根拠の1つがこれでもある。


では今度はリスニングルーム棟の土地に沿った道路で車が通った時の騒音を聞こえないレベルまで防音するにはどうすればいいか。
これは正直難しい。なぜかというとネットに存在する走行音の規制などは高速走行している時の音量であることが多い。ただリスニングルーム棟のある土地は閑静な住宅街を想定しており速度制限と道路事情からして高速走行していることは想定しづらい。
ひとまずトラックの高速走行時の7.5m先で測定したときの騒音が80dB程度に規制されていることから、実際の閑静な住宅街を走る際の騒音は距離による減衰を含めても75dBと考えてみる。そして室内に入ってくる音量は以前までの計算と同じ30dBではなく20dBまで減衰させる必要がある。音楽鑑賞中に入ってきてしまう音としてはかなり絞り込まないとノイズレスな環境とはいいづらい。
そう考えるとリスニングルームの壁だけで55dBも減衰させなければならず、窓も含めるとかなりの減衰をさせないといけないことになる。
道路沿いに防音フェンスを設置すると低域でも-10dB程度の防音効果は期待できるし、コンクリートブロック塀も同程度の防音効果はあるらしい。そういったものを積極的に利用して建物での防音に頼りすぎないような配慮をしてもいいのかもしれない。

それであればむしろトラックなどが滅多に通らない盲腸線のような立地を選ぶなどの工夫をする方が、(立地の選択が可能であれば)良いように思われる。
旗竿地も道路から距離が取れるので良さそうに思われるが、一般的に旗竿地は近隣土地の家屋と近接しやすいので、自室に交通騒音を持ち込みづらくなる代償として隣人に騒音を持ち込みやすくなるという選択を意味する訳であり注意を要する。不規則な用地だったため結果的に旗竿っぽい形になっただけの土地などはいいのかもしれない。
いずれにしろ、一般的に不人気と言われるような土地がリスニングルーム棟に向いている可能性があり、そういった意味では別邸としてリスニングルーム棟を作る場合にコスト削減と交通騒音の削減を両立できる可能性を秘めている。


まとめると
閑静な住宅街で隣人の建物との距離が10m程度確保できる場合
・隣人に迷惑がかからないための部屋の防音は中等度で十分。簡易防音でもギリギリ許容範囲。
・同一棟内の隣室の完全な防音は非常に困難。別棟が理想。
・沿線のトラック走行音の防音はシミュレートが不正確ながら、割と困難と思われる。沿線沿いのフェンスや塀を併用したり、そもそも車が通らない道路の立地が理想。

という考え方になる。
これは防音をどれだけ節約できるのかという話だけでなく、予算が無制限の場合でも考えるべきものである。

強力すぎる防音は室内の開放感がある程度犠牲になってしまう。開放感が失われた部屋は居住性に多少の負の影響をもたらす。
そして防音が完璧であれば良いのかという話にもなる。例えば雷鳴や緊急警報放送など不意な外の情報を全てシャットアウトすればいいのかという問題がある。イレギュラーな音は安全のためある程度聞こえても良いのではないか。よってリスニングルームに音を完全に入れさせないのが理想、というより滅多に入ってこない立地という方が理想的であるように思える。
またリスニングルーム程度の大きさだとどんなに工夫しても部屋のモードの影響は避けられない。低域の再生能力を上げるために効果的なことは低音を透過させて逃がしてしまうことである。完全な素通りなどは現実的ではないが、低域の再生を考えた時に完全防音の部屋がいいのか、そこそこ防音が良いのかというと多少の透過損失が期待できる分だけ後者が有利かもしれない。