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モッチリ遅いコメの距離感

オーディオルーム、シアター、注文住宅などに関してのblog。

部屋の壁の遮音性に関する論文

2023-04-30 22:06:53 | オーディオ
最近あまり書くことが無く更新が途絶えていたが、日本音響学会で壁の防音性能の論文があり注目していたが、ようやくフリーアクセスが可能となったので読んでみた。

中空層内の吸音材・せっこうボードの積層方法が乾式二重壁の遮音性能に与える影響
杉江 聡
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/78/11/78_656/_pdf/-char/ja


まずは一般的な石膏ボード1枚ずつを合わせた間仕切り壁とその中にグラスウールを入れた場合の防音性能


ひとまず感じるのは中高域に関しては内部に吸音材を入れれば、かなり単純な構造であるにも関わらずそこそこの防音性能を確保できている印象がある。そして吸音材の密度は既に制御できている高音域の防音性能がさらに積み増しされるだけで大きな意味をなしていない。
そして吸音材を入れても入れなくても100Hz未満はかなり遮音性が悪い。吸音材を入れてもあまり改善せず逆に悪化している印象すらある。
逆に言えば100Hz未満はこれだけ外に漏れているので部屋の中に貯まりづらいことになる。防音的には良くはないが、定在波が目立ちにくくなったり、部屋の長辺を超える波長の超低域を再生することに寄与している。



石膏ボードの1枚貼りと2枚貼りでの遮音性能の比較。2枚貼りの場合は2枚のボンド接着の仕方での遮音性能も比較している。
基本的に2枚貼りの方が遮音性能は高いが、接着剤を多く使っている場合、1500〜2500Hzあたりでの2枚張りの遮音性能は逆に悪化してしまっている。
これだけを見ればオーディオルームの内装のボードは石膏ボード2枚張りにしつつ接着剤は少なめにするのがベストということになりそうな気もするがその他にも考慮すべき点はいくつかある。

1つはSound Reproductionの著者が石膏ボード2枚張りは低音が逃げにくく定在波が明確に出るため1枚張りを推奨している。
業者が試聴室だからと親切で2枚張りにしてくれたが、測定結果が思わしくなく原因を探っていると2枚張りが原因と判明し、1枚張りに直して貰ったところ結果が望ましいものになったという。
もちろんこの考えが絶対的に正しいと信じるのは危険ではあるが、いずれにしろ遮音性が良い≠音が良いではあることは肝に銘じておかなければならない。

2つ目は石膏ボード2枚貼りのボンドを少ない場合、ボードそれぞれが有害な共振することで遮音性能が向上している可能性がある。その場合は石膏ボードの板振動によってバストラップのように吸音効果は発揮されると考えられるが、一部の周波数ではその板振動が部屋の付帯音として再生音を濁している可能性も考えなければならない。いずれにしろ遮音性が向上するからオーディオルームにとって望ましいと考えるには注意が必要と思われる。

最後に石膏ボード2枚の場合にボンドを多めに付けた場合に1500〜2500Hzあたりで吸音性能が低下すると述べたが、その辺りは内部のグラスウールなどの吸音材が得意とする周波数ではあるので、そのあたりの性能が低下してもあまり問題にならないのかもしれない。


クラシック音楽再生専用のApple Musicが公開間近

2023-03-10 10:12:52 | オーディオ
アップル、クラシック音楽向けアプリ「Apple Music Classical」3/28提供。日本は後日
https://www.phileweb.com/news/d-av/202303/10/57671.html



かねてからクラシック専用再生サービスの買収で登場が噂されていたApple Music Classicalがとうとう一部で公開決定したようです。
日本はまだですが、時間の問題と思われます。

対応デバイスがiPhoneとなっており、Androidは後日だそうです。
ネットワークプレーヤーで対応してくれるとかなりありがたいのですが、amazonの音楽配信もかなり対応が難航していたのであまり期待しすぎない方がいいような気もしています。

Apple Music登録者なら追加料金なしで「最高192kHz/24ビットのハイレゾロスレスで提供。空間オーディオで収録された楽曲も数千曲を提供する」とのことで、月1080円でそれであれば割安感はかなりあります。
そしてクラシックに特化したソートや検索機能、楽曲解説などもあるようで、そういったところは好感度高いです。

実際にはどうなのかは分かりませんがAirplayは結構な確率で早期対応している可能性が高く、ネットワークプレーヤーがApple Music Classicalに正式対応してなくてもAirplayは対応している場合が多いので、据え置きのオーディオで再生対応ができる可能性はそこそこ期待できるんじゃないかと思っています。

Airplayだと無線でありトランスポートの品質も一般的なので、再生の品質が万全ではありませんが、そもそもストリーミングは品質重視ではなく、しっかり気に入ったハイレゾ楽曲はe-onkyoダウンロード購入するという立場だとそれでも許容範囲であると考えています。
以上の理由からそこそこ利用する可能性が高いサービスなので注目しています。

仮想リスニングルーム後壁のデザインについて考える。

2023-02-24 14:35:17 | オーディオ
リスニングルームにおける後ろの壁は拡散性(一次反射音をそのまま返さない)と必要に応じて吸音を増やせること、そして左右対称性があればそれで十分と考えており、最近よく考えている視覚的な空間印象に関してもリスニング中に視界に入ることはない部分なので関係ない。そういう意味ではアプローチの仕方が以前から何も変わっていない部分ではある。

ただある程度自由が効くということと、視覚効果を無視して問題ないことから、リスニングルームの居住性を向上させるためのアメニティを組み込み易いためバックヤードとしての機能を期待されやすく、そのあたりとの兼ね合いを考えることになる。
またリスニング時の空間印象とは関係ないながらも、非リスニング時のくつろぎ空間としての印象も考えなければならない。オーディオシステムから出現する音場の空間印象とは無縁であるため軽視されがちではあるが、足を運びたくなるリスニングルームであるかどうかに影響しているので配慮するに越したことはない。

最初はクサビ型のオブジェを並べたが、やはりバックヤードとしての利便性と拡散性を両立させるなら棚がベストになるのだろう。



ということで拡張性の高そうな正方形の立方体の棚を並べたが、見た目上のデザイン性はイマイチだと毎回思ってしまう。



そもそもリスニングルームにこんなに収納は必要ないと思われるので、一部は収納にもできるし音響調整にも転用できる部分とし、その残りは収納はできないが音響調整はできる部分にしてもいいのではないか。


pinterstであった↑図のようなデザインを取り入れてみる。


手の届きにくいところは収納としないことにすることで、過不足ない収納力にしつつ実際にも採用実例もあるような意匠性を持たせている、縦方向のリブ部分を一次元のQRDにしたり吸音材を挟んだりなど調節性を持たせている。設計した時はこれでいいんじゃないかと思ったが、日を改めて見直すとデザイン微妙だなと思ったりもする。むしろ正方形の棚を敷き詰めた方が良いような気もしてくる。。。後壁は音の尺度とは異なる要素を考慮する部分が多く、いつまで経ってもこれはいい!という感じにはならない。

バックヤードの天井についても考えてみる。他の部分の天井と同じでいいだろうというのが普通なのだが、バックヤードのみルーバー天井とすることもできる。
ルーバー天井とすることでのメリットはリスニングルーム全体としての天井高や容積を確保しつつ、くつろぎを目的とする空間のみ天井を低くすることで落ち着きやすい空間にするという目的がある。
ルーバー天井自体にある程度の拡散性があることもメリットではある。
ルーバーの上にロフトのような空間が大きく取れることもあるため物置だったり音響調整をできる幅も広がる。



以前から後方の天井を低くすることは中2階構想などで度々俎上に載せることはあったが、今回は上での居住というものはほとんど考慮せず、天井を低くすることが主目的で副目的として音響調整を狙ったものとなる。
ただ今回の考察でも結局バックヤードのルーバー天井は採用すべきではないという考えになった。
理由は天井高を低くする必然性が低いことである。天井が低い方が落ち着く場合もあると言われているが、その効果がどの程度期待できるのかが微妙ではある。
そしてルーバー天井だと必然的に暗くなり易い。ルーバーから光は入ってくるが、当然ながら入ってくる光量は減ってしまう。暗い部屋は居住性が悪いというのが現オーディオルームの反省点だけに同じ轍を踏みたいとは思えない。
光量を補う照明もルーバー天井だと間接照明のような柔らかな光になりづらい。スポットライトのような使い方になってしまいがちである。この採光に対する制限がルーバー天井を入れることをためらうことになる最大の原因にはなってしまっている。
pinterestにあった実例



そのため他の壁と同じように、格子の作業用通路のみの設置とした。




新仮想ルームと旧仮想ルームの空間印象を比較してみる。

2023-02-17 13:09:10 | オーディオ
仮想リスニングルームの現時点でのデザインがある程度形になったところで、以前に設計した格子と棚を多用したリスニングルームと空間印象の違いを比較してみる。

新仮想ルーム


旧仮想ルーム


格子のリスニングルームの方がそもそも寸法が縦長であるが、それを抜きにしてもだいぶ圧迫感や広さの印象が変わるような気がする。
どちらも現実的には存在しない部屋であるにも関わらず、画像を見るとどんな響きの部屋かなんとなく想像できてしまう。
特に旧仮想ルームの側壁の圧迫感というのが結構感じ易い。実際に狭いというのと膨張色の木の色を使っているのと格子が視覚的主張が強いのでより大きな圧迫感を生み出しているのかもしれない。
そうした先入観が実際の音場の印象にも影響するという研究結果があるのであれば、空間の印象というのも馬鹿にはできない。

無地の空間も作ってみる。

白背景


黒背景


どっちにしろ無地だと空間の大きさ奥行きなどの手がかりが少ないという印象を与えてしまう。
具現化すれば照明の光の当たり方によって奥行きは分かりやすくなるのかもしれないが、ずっと奥行きを感じづらい無地の壁を見続けながら音楽を聴くというのは、奥行きを認識しようとしてもうまく認識できないストレスを無意識に感じ続けるのであまり良い物ではないかもしれない。

天井の音響調整について考え直してみる

2023-02-15 16:50:31 | オーディオ
以前に仮想リスニングルームにおいて天井の音響を安全に調節しやすくするための解決策として、天井をルーバーにしてルーバーと天井の隙間に音響調整材を置けば良いという考えに至った。
ルーバー自体に拡散性がありつつ、間に置くというのは取り外しがしやすい、ルーバーが下にあるので落下リスクが小さいというメリットがあるというのがその理由だが、本当にそれで機能するのか疑問に思う部分が残っていた。

設置例としてpinterestより引用




・1つは天井用のルーバーは既製品は中空のアルミ製が多い。コストだけでなく重さの問題もあるのだろうが、中空式のものが音が良いとは思えない。それにルーバーの上に重量物を設置することは設計上想定されていないので音響調整材を設置するということは重量的に危険だろう。
・では既製品に頼らず本物の木の板でルーバーを作ればいいということになるが、あまりに大規模に重いルーバーを天井に設置すると駆体の重量バランス的にどうなのかという疑問がある。
・高所作業用通路からルーバーの上に音響調整材を乗せるということを想定しているのだが、通路は必然的に壁際になってしまっている。だが高所の反射面として一番重要な一次反射面は部屋の中央付近に存在しているため壁際の通路から届くのかという疑問が生じている。
・ダウンライトは光が局所的に強いためコントラストが大きく視覚的な刺激が強い傾向にあり、リスニングの支障となりうる。そのためメインの照明は柔らかな間接照明を直接目に入りづらい高所から入れる設計が望ましいと考えているのだが、間接照明はなるべく何もない平坦な壁に照らすからこそスムーズに移行するきれいな光を得られるので、いろいろ設置する壁には望ましくない。ルーバー天井でしかもルーバーの上に音響調整材を設置するというコンセプトと相性が悪い。

この辺りが未解決であり、考え直す必要があるのではないか。

そこで重要性が高い中心部分付近にのみルーバーを付ける案に練り直した。


これで間接照明を照らす部分の平坦性を確保できる。ただこの高所のルーバー上にどうやって音響調整材を設置するのかという疑問が解決していない。見た目的にもあまり気に入らない。

そもそも天井の音響調整の調節性を極限まで高めることに意味があるのかという疑問を考え直してみる。
現実的に天井のルーバーの上にポン置きという手法を用いて音響調節するとして、
溝が10cmを超える木製の本格的なQRDを設置したり、重量のある強固な反射壁を設置するだろうか?という疑問を考えてみると、現実的にはそれを行うことはしないだろう。通常時は落ちてこないにしても地震の時に落下リスクがあり、その場合には死亡事故につながりかねないからだ。
ルーバーの上にポン置きで音響調整材を設置するとしても、それは吸音材以外は現実的ではないと思われる。
天井は吸音材のみを調節性を持たせて設置するということであれば別にルーバーにポン置きスタイルである必要はない。
ダクトレールは耐荷重20kgまであり、ライトを照らすだけでなく、物を吊すことができる。吸音材であれば耐荷重20kgあれば十分である。

引用:TOO GARDEN

また吊すスタイルであれば天井にピッタリくっつける必要もないので、背面空気層を確保できる分吸音効果は大きい。定在波の腹も狙いやすいので定在波の調節効果も高い。


グラスウールなどの多孔質吸音材も音響透過性の高い篭などにくるんで球状にして吊り下げる分にはきれいに作れば高天井の照明のようにそれ自体もインテリアにもなりうる気はする。

引用:amabro
とはいえ見た目上まともになる根拠はないのだが。

とはいえ天井の音響調整は軽量な吸音材をダクトレールで吊り下げるという手法であれば落下リスクも小さく、万が一落下しても大きな事故に繋がらないという意味で現実的なのかもしれない。以前よりも音響調整の幅が狭くなってしまったが、やはり天井を後付けでなんでもやれるようにしつつ、安全性も高いというのは無理があるような気はする。
ただ今回の音響調整の場合、積極的な反射や拡散を追加することはできない。なので最初から固定する内装で決め打ちである程度の音響調整を完成させなければならない。追加で出来ることが多少の吸音しかできないから当然ではある。
となると内装として最初から拡散体を設置することになるのだろうか。天井をあまり拡散させてはいけない理由もない、吸音は後からでもできるシステムとなるとこういう考えにはなる。天井なので拡散体も大規模だと重量による問題が出てくるので、比較的効率の良い一次元QRDが無難になるのだろうか。
天井全面に貼ると間接照明が使いづらい+コストが多大になる+壁際は作業用通路があるので後から調整できるという理由からスピーカーの内側(2.5m幅)部分のみに設置する案とした。


球形の吸音体自体が遠近感や天井高さを強調するので視覚効果自体は良さそうな気がするが、邪魔にならない程度の大きさで十分吸音できるのかは疑問は残る。本格的に吸音をしたい場合は壁際の作業用通路部分での吸音に頼らざるを得ないとは予想される。

当初よりも調整性という理想は後退したが、当初の案がやや非現実的なので仕方ないだろう。天井の広い範囲を格子天井にして格子の裏をロフトにすれば安全に天井の音響を調節することもできるが、格子からの反射が若干の天井を低くする効果があったり、デザインに制限があったりなど調節性と引き換えに犠牲になるものも多くあまりその方向が望ましい感じにはならなかった。

ASWの視覚情報による補正効果

2023-02-10 12:31:55 | オーディオ
今月から日本音響学会のフリーアクセスになった論文
建築空間における音の広がり感に対する視覚情報の影響
——建築音響分野におけるクロスモダリティ研究——
日本音響学会誌 78 巻 8 号(2022),pp. 437–442
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/78/8/78_437/_pdf/-char/ja

を読んでみた。

気になる部分を抜粋(一部改変)

・聴覚刺激のみで判断した距離感に対して,視覚情報が加わることによって,視覚刺激のみで判断した距離感に近づく傾向が見られ,判断の精度が上がるように補正されたと解釈できる。
・聴覚情報から得られたASW は,視覚情報が伴う場合,視覚によって判断(予想・期待)された ASWに近づくように補正される。一方,同一の音源から視覚と聴覚を通して得られる二つの情報は脳内で統合(視聴覚統合)されるが,両者の乖離が大きい場合は視聴覚統合が成立しないため,視覚印象と聴覚印象は独立し,相互の影響は見られなくなり,ASW は聴覚情報のみで判断される。
・視覚で期待されるASWと聴覚のASW が一致している場合には,補正の必要がないため,視覚情報の影響は現れないと考えられる。
・視覚情報が加わることによる ASW の変化は,聴覚刺激のみによる ASW と,視覚情報から予測・期待される ASW の間に生じたギャップが原因であると考え,視覚情報から期待される ASWに近づくよう補正効果が働いた結果と考えた。

これをステレオに応用することを考える。音の広がる感じや広大な音場は、広大な部屋である場合には目を開けていれば視覚効果がASWを補強して目を閉じて聴いているよりも広々と鳴るように感じる。普通の部屋であれば目を開けている場合には音場よりも小さな空間で鳴っているように補正されてしまう。
個人の楽曲再生用途のスピーカーは小空間で再生することを想定しており、大空間での出力で実力を十分に発揮できないし、そもそも個人で用意できるものではないので、ホール並みの大空間で鳴らせば良いというのは現実的ではない。

視覚情報によりASWをブーストするのは広大な庭と正面壁を全面ガラス張りにでもしない限りは現実的ではないにしろ、大幅にナーフされることは避けたい。リスニングポジションの正面は特に実際に空間をできるだけ確保しつつ、近接感圧迫感の少ない視覚的デザインにすることは必要なのではないかと思われる。

いずれにせよ実際に音を出しているステレオスピーカーの視覚効果はやっぱりあまり望ましいものではない感じはしている。コンシューマー向けのスピーカーの場合、本格的なものであればあるほど大きく派手な外見のものが多いが、視聴覚統合の際の補正効果が大きく、今回のASWに関しても悪化する方向に補正されてしまうし、左右に寄った音像が全てスピーカー部分に吸い寄せられてしまう気はしている。
非マニアに好まれがちなインテリアに馴染むスピーカーの方が視聴覚統合という観点では良いスピーカーと言える部分もあるのかもしれない。

照明シミュレーションで照明計画を考える

2023-02-08 16:26:45 | オーディオ
前回設計した仮想リスニングルームで頭の中で想定していた間接照明をDIALuxに入れてみた。
DIALuxである程度の建造物データを入力して照明を入れてみたが、なんというか本当に稚拙な感じの照明効果になってしまっている。
照明効果の理詰めがちゃんとできていないまま考えてしまったのでこうなってしまったのだろう。


1から考え直してみることにする。
正面壁の間接照明は室内の光量確保目的という意義は薄い。間接照明の柔らかい光であるとは言え、リスニングポジションの真正面から光を照らされても眩しさを感じてしまうだけでマイナスになってしまう。
照明効果により正面壁の視覚効果を補強するのが目的で、部屋の明るさを確保するための十分な光量は必要ないという考えで良いということになる。
正面壁の視覚効果の補強となると、奥行き感を強調させることと凹凸のあるウォールデザインとする場合に凹凸による陰影を強調させることが目的になる。

「奥行きを強調する」という表現が正確に解釈するならば「既にある奥行きを感覚的により深い奥行き感にする」ということになる。と言うことは実際に奥行きのある構造を作らなければならず、照明によりその奥行きを強調する必要がある。
pinterestで例示できるものは下図のようなものになるのだろうか。



モデル図としてはこんな形になるはず。



ただ問題なのは吸音や拡散を行いたくて壁の前に何かを設置したい場合、この照明効果を遮蔽してしまい、調音体が悪目立ちしてしまう可能性が高い。
拡散体自体は光を乱反射することが期待できるので良しとするべきかなかなか難しい。


そもそも照明効果で奥行き感を出させようとする場所を後から自由に調音しようという姿勢に無理があるのかもしれない。決め打ちで対応していく方が良さそうに思える。

そこで間接照明の部分をQRDの溝のように用いて、拡散体と建築化照明を兼ね備えるようなデザインを設計してみた。


溝の深さはランダムではないので実際にはQRDではないのだが、数種類の溝の深さがあるので拡散効果はそれなりに期待できる。一般的なQRDの使用法とは向きが90度違うので、拡散よりも反射の挙動の方が多いかもしれないが、反射をするにしても段差が複数あるため、時間や位相がある程度分散される効果は期待できる。

DIAlux evoで入力してみるが、設定が悪いのか線光源の設定が上手くいかない、一部の光源しか点灯しないなどうまくシミュレーションできない。




なのでカリモクのシミュレーションで引き続きやってみることに。

段差がわかりにくいので一時的に明るい色に変更

間接照明点灯した場合の光を黄色や白の物体で代用的に表現した場合



窓を開けた場合



遠近法の錯覚をさせる意味では段差は等間隔ではなく遠近法に近い段差にした方が良さそうだ。溝が拡散できる周波数的にも整数倍出ない方が良い。奥に行くほど光源が上方向にシフトすると遠近法的にはなお良いか。


のっぺりしたシミュレーション画像にも関わらず、設定値以上の奥行きを感じることができる。少なくとも圧迫感や近接感は感じないような印象はある。
所詮は視覚効果でしかなく聴音への影響は若干あることは言われているが、決して大きなウエイトを占めているというものではない。その程度の効果に対してここまであからさまな施策を行うことが正当化されるのかは結構疑問なところはある。

ただリスニングルームのインテリアは
・出音に見た目なんて関係ないから音が良くなるような物を最大限設置するのが良いに決まってるという考え方
・出音に見た目なんて関係ないから何も考えずに好きな見た目にすればいいという考え方
・視覚情報がうざったいから、黒か青か白一色だけでいいという考え方
・塗装の少ない木の音が良い反射音のはずだから全面木目を出せばいいと言う考え方
この辺りが支配的である中で、好み好みでないという基準でなく、現在ある知見を利用するととどのような内装が聴感の良さに貢献できうるか、という観点からインテリアデザインを考えるきっかけにはなったので意義はあったのかなとは思っている。

仮想リスニングルームの正面壁のデザインについて

2023-01-30 19:37:06 | オーディオ
前回整理した視覚上の要件を満たすための正面壁のデザインについて考察を進めてみる。

・視覚的ノイズを減らしたい(黒やグレーやネイビー系)
・音波の反射としては複雑な形態をしつつ派手な視覚効果は避ける。
・リビングとして成立する意匠
・奥行きや開放感を感じやすい配色

この辺りを同時に満たしたいということになる。


・視覚的ノイズを減らしたい(黒やグレーやネイビー系)
横の壁や天井は基本的には白系統に色にすることは部屋に無駄な圧迫感を出さないために必要だろう。部屋の内装としては標準的な色ではあるが、ここをあえて標準から外す意味があまり見いだせなかった。
基本的にはリスニング中はスピーカーの内側を見ている感じにはなるので、スピーカーの内側にのみ視覚的刺激の少ない暗い色を付けると良いのではないか。リスニング中の視界は落ち着いた色であった方がリスニングに集中しやすいが、部屋の内装の大部分を黒系統の色にすると圧迫感が強くなってしまう。
pinterestで黒を基調にしたエレガントな内装はいくつも例示されているが、基本的には大きな窓で採光することにより黒による光の吸収のデメリットを緩和させているように見える。
大きなガラス窓を沢山設置しづらいリスニングルームで黒まみれの内装はやりづらいのかなと思ってしまう。窓を付けずに黒の内装でラグジュアリーなイメージを持たせたホームシアターがあるにはあるが、そういったシアタールームでも居住性はどうなのか?映画見ないときでもこの空間にいたいのかと考えると微妙な気もする。


・音波の反射としては複雑な形態をしつつ派手な視覚効果は避ける。
これは壁の前に設置する音響調整材と背後の壁の色を同じにすれば音響的には複雑な反射をするが、光学的には比較的単純で平面的な効果を示すことが期待できる。
視覚的にのっぺりしたものであると、目障りにはならないのは良いことだが、奥行き感を十分に出すことができない。空間の奥行き感を出せれば、視覚的に広く感じることができ、視覚効果で音場を広くする効果があるので、そちらも両立させないといけない。それに平面的な視覚効果しかない部屋というのはあまり魅力的ではない。その部屋の居住性を良くするという意味でも平面的な見た目の内装というのがベストだとは思わない。
ただ平面的に見せた方が視覚的ノイズは減るし、立体的に見せた方が音場は広くなるということは両者が二律背反になってしまっている。ここは悩んだのだが、間接照明の照明効果で立体的に出せば良いという結論でそれを乗り越えることができそうだ。間接照明での奥行き感を出すと言うのは、邪魔であれば照明を消せば無くすことができるというメリットがある。
調節性を持たせるというコンセプトを大事にしたいと考えている意味でもこの解決策は上策であるように思える。

・リビングとして成立する意匠
これは以前に提示したような、リスニングルーム側からは音響調整材が見えないなど工夫すればそこそこのものになるのではないか。

・奥行きや開放感を感じやすい配色
これも上記のようなスピーカーの外側は白系統、スピーカーの内側は黒系統の色調にすることで、白=光が明るく見える場所=手前、黒=暗く見える場所=奥という錯覚を感じ安くなり、音場を作る部分が奥にあるように感じ易くなり、音場空間としても広さを感じやすくなることが期待できるはず。

といったところを考えた結果こんな感じの正面壁の案になった。

スピーカーの内側は奥行きを持たせるために黒に近いグレーで統一しつつ、スピーカーから外側は白に近い色として、スピーカー自体も白またはシルバーを想定した。
これによりリスニング時に視界に入るスピーカーの内側はリスニングに集中しやすい配色としつつ、外側は開放感を持たせつつ、スピーカー自体を保護色にして視覚的な存在感を軽減させる色になっている。
中心の窓は木製のドアで開閉式を想定している。ダミーのセンタースピーカーなども設置できればとは考えているが、開閉式左右対称のドアだと難しい。


スピーカーは保護色で存在感を軽減させているという意味では、スピーカーの存在を目立たせがちな一般的なオーディオマニアのコンセプトとは真逆のアプローチにはなっているが、リスニングポジション以外の視野では背景を黒い領域にして白またはシルバーのスピーカーの存在を際立たせることもできるので、リスニング時だけ保護色に出来れば良いというコンセプトでもある。


側面壁は一次反射面を二次元QRD風の棚としつつ、一次反射面以外は棚の中身をリスニングポジションから見られないようにした斜めの棚とした。


スピーカー側から見ると棚の中身が見える


ある程度、現時点で自分が望ましいと考えるリスニングルームの要件を満たした設計を入れられたとは考えているが、後は間接照明によって望ましい視覚効果が得られるかどうかという問題が残っている。
これは現時点でのシミュレーションアプリではできないので照明シミュレーションのソフトを利用する必要がある。DIALux evoというソフトで色々できるようなのだが、高性能なだけになかなか使いこなせるまで時間がかかりそうだ。今後このソフトを用いたシミュレーションをやってみたい。


N響高崎公演に行ってきた。

2023-01-29 16:22:24 | その他


コロナも5類に分類される予定となるなど制限が少なくなる中で、そろそろ高崎芸術劇場の大ホールでのオーケストラコンサートを聴きたいと考えていたが、丁度NHK交響楽団が来るということで鑑賞しに行くことになった。

バルトーク/ヴィオラ協奏曲(シェルイ版)[ヴィオラ:アミハイ・グロス]
チケット買ってから聴くようにしてみたけれども、バルトークはなかなか魅力を理解しきれず、コンサートで実際に聴いてもなかなかピンとはこなかった。楽曲に対する理解が追いついていないのは仕方ないが、ソリストはベルリンフィルの首席ヴィオラ奏者ということもあり、とても華のある迫力のある演奏で演奏自体は素晴らしかった。

ラヴェル/「ダフニスとクロエ」組曲 第1番、第2番
この曲は好きだったが、生演奏で聴くのは初めて。演奏会だと巧みなオーケストレーションがより映えて楽しかった。フルートがしっかり吹ききっていたので良い演奏だったとは思える。
席の関係かもしれないし楽譜通りなのかもしれないがウインドマシーンの音の異物感が強かったのと鉄琴が一部で音量過多で少し曲に集中できない部分があった。

ドビュッシー/交響詩「海」
コンサートで聴くのは二度目な気はする。この前のコンサートもオールドビュッシープログラムだったが、今回は交響詩のドビュッシー。
普通に良かったけど、なんか良くも悪くも録音を聴いているのと全然違う!とはならなかった。何度もコンサートの録画映像で体験しているN響の音だし、家の音響も十分とは言えないまでも一定の水準ではあるからこそなのかもしれないが、無難な印象が強かった。

ホールの音は中庸的ではあり悪くはなかったのだけれども、音楽ホール程の感銘は無かった感じだった。やっぱり大きめのホールだと音量がやや控えめになってしまう印象はあった。
今後行くとしたら音楽ホールのコンサートを優先して行きたいという印象ではあった。

リスニングルームの正面インテリアデザインの理想型がなかなかまとまらない理由を考える

2023-01-27 14:56:34 | オーディオ
ある程度の思考が進んできたので現時点での仮想リスニングルームの正面壁のデザインを作ってみようと思ったがなかなかまとまらず進まない。
なぜまとまらないのかを文章にすることで整理してまとめてみようという試みをするのが今回の記事になる。

まず、視覚的にまばらに刺激の多いデザインだと聴覚への集中が逸れてしまったり、音像の形成に支障が出かねない。プロの仕事場は正面壁は黒い壁や集中しやすい青系の壁にすることが多い。確かに視覚的ノイズ(視覚的な刺激が大きくてそちらに気が向いてしまう現象)が減っている感じがある。
日本音響エンジニアリングの建築作品集より




ただ仮想リスニングルームはスピーカーを壁に埋め込む訳ではないので、正面壁での音響調整を行う必要がある。正確に言えば必要があるかどうかは別として調整性を重視しているので音響調整を行える余地を確保しておく必要がある。
視覚的ノイズを減らすために視覚上のうるさいものを正面に置かないというのでは、音響調整に支障がでてしまう。
下は同じく日本音響エンジニアリングの建築作品集より。音声中継車の作品画像なので仕方ないかもだが見た目的には派手だが気が散ってしまいそう


ただ似た色で統一することにより音波としては複雑な反射をしつつも視覚的には刺激の少ないデザインにできると思われる。


前提に立ち返ると、今考えているのは生活空間の中のオーディオスペースである。コントロールルームの正面壁のような黒いだけの壁だとさすがに味気なく殺風景に思われる。生活空間として満足できるような意匠も組み込みたいと考えている。
下のような内装はいくら視覚的ノイズがないので音楽に集中しやすいとは言っても、生活空間としては正直味気なさ過ぎる感は否めない。


黒を基調しとするにしても、pinterestで寝室など調べると黒を基調とした落ち着きがありつつも、優美でくつろげそうなデザインも出てくる。




じゃあそういうデザインでいいじゃないかという話にもなりかけるが、部屋のインテリアデザインとして色によって圧迫感を感じる色、広々感じる色、奥行きを感じやすい配色があると言われている。視覚情報も響きの感じ方に影響があると言われているので、広さや奥行きを感じる配色にしたいと考えている。黒系の色は後退色と呼ばれ、奥に引っ込む傾向があるが、壁や天井にメインで用いると圧迫感があり実際よりも狭く感じてしまう。

つまるところ正面壁をどうしたいかというと
・視覚的ノイズを減らしたい(黒やグレーやネイビー系)
・音波の反射としては複雑な形態をしつつ派手な視覚効果は避ける。
・リビングとして成立する意匠
・奥行きや開放感を感じやすい配色
これを備えたものにしたいと考えている。

奥行きを強調しつつも、視覚的にうるさくない、そしてデザインとしてアリと思えるものがなかなか分からないというところなのかなあというところではある。
こうやって順序立てて書いてみることで何を達成したいけれども何が足りていないのかが整理できた。