ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅      薬物後遺症と心の傷・・・55

2012-12-15 | 3章 デリー中央精神病院・入院記録
昼食をしているとドアをノックする音がする。こんな時間にドクターが来るわけはないのだが、しかし病室に入って来たのはドクターだった。ぼくは急いでベッドから降りるとドクターの方へ歩み寄り、右手を出しながら
「サプラィズド」
と言ってドクターの手をしっかりと握った。2度も握手を求めるぼくの顔から、自然に笑みが込み上げていたのだろう、彼も嬉しそうだった。
「全て順調に進んだ」
ドクターは安心して病室を出ていった。
 どうやら禁断は抜けたようだし、明日の午後には退院ができる。先の事を考えるとまだ大変であるに違いないのだが、今ぼくはハッピーな気分だ。分離したリアリティーを彷徨った5年間だった。ぼくの旅は終ろうとしている。無事に日本へ帰ることが出来たら暫らくは休養をしたい。日本で何をやるのか、ネパールへ戻るのか、休養後に考えよう。5年間の長い過酷な旅に耐えてくれたぼくの心身に感謝と労わりの言葉を贈りたい。失ったものは大きいかもしれない、でもこの旅はぼくにとって必要だった。良い旅であったとは言えないかもしれないが。


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