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インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅      薬物後遺症と心の傷・・・52

2012-10-23 | 3章 デリー中央精神病院・入院記録

   12月27日(水)(入院して24日)

 ドラッグの闇のトンネルから抜け切れない、入院して24日間では当然だろう。アシアナで50日間スタッフを断ったけどその後、1年間も吸い続けてしまった。良い薬を使ったとしても後2週間ぐらいは肩の痛みと不眠は残るだろう。上手くいけば日本へ帰った頃、ちょうど抜け切るかもしれない。昨夜から新しい薬に替えるとドクターが言っていた。ぼくの体内に残っているドラッグをプッシュアウトするための薬だ。今まで薬が多かったのは肝臓やダメージを受けた脳を治療する薬が含まれていたらしい。後2日で退院し外へ出られる。しかし今、入院しているのはぼく1人だけなのか、男性の大部屋を見てきたが誰もいない。
日本の精神病院には大部屋があるのだろうか、患者にはそれぞれに異なった病状や症状があると思うが、もしぼくが精神科に行くとしても入院はしない。アシアナのように同じ薬物症状の患者が多くいると何となく気分が紛れた。暗く寒々とした病院に後2週間も1人ぼっちでいたら鬱になりそうだ。
 午後5時頃、3人のシスターがぼくの病室に入って来た。いつもの彼女達とちょっと違う、顔の表情が硬い。何かあるなと思っていたら、
「今から注射をします」
これか、ドクターが言っていた注射とは。容器に入った注射器や血圧計等がテーブルの上に置かれた。
「細心の注意が必要だ、健康状態を見て決める」とドクターは言った。
ベッドの上で横になり左腕を出すと血圧や脈拍数をシスターが調べている。普通の静脈注射のようだ、そんなに神経質になる事はないだろう、とぼくは思っているが彼女達は真剣だ。担当のシスターが上腕部に黒いゴムを巻き注射器を受取った。大切な注射だというのにドクターは姿を見せない、左腕の中を冷たいものが流れた。

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