ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅           アシアナ(医療監房)・・・・・2

2012-12-07 | 2章 デリー中央第4刑務所アシアナ
暗い空が微かに変化し始めると鳥の声と羽ばたきが聞えた。夜から朝への移行を鳥は知っている。鉄格子を打つ金属音がして目の前を収監者達はのろ々と動き出した。10月28日、逮捕されて4日目の朝、ベッドから出るように言われた。ふら々と人の後ろについて行く、立つことも歩くことも辛かった。腰巻ひとつで朝の水浴を終えたインド人達とすれ違った。ぼくは前庭の壁に凭れ掛かり座り込んだ。そこへ着替えを済ましたインド人達が塀に沿って二列に並ぶ。彼らはサンダルを脱いで筵の上に立ちゲートの方を向いた。各列の前に一人が向かい合って立ち彼のリードで全員の合唱が始まった。ヒンズー教のお経と言うよりは宗教歌のようなものではないだろうか、二曲目も大声で歌い終わった。それが終ると食器置場から各自コップを持って来て莚に座りティーが運ばれて来るのを待った。塀側の列はどうして長くなるのか?禁断で体力のない者は塀に凭れ掛からないと座っていられないからだろう。ステンレス製のバケツに入れられたティーが運び込まれた。コップにティーが注がれその上に二枚のトーストが置かれた。全員に配り終わると短い唱和があり食事が始まる。ぼくにとって4日振りの食事なのだが食べられそうもない、トーストは隣のインド人にあげた。ティーは少しずつゆっくりと飲んだ。
食事が終ると各自コップを洗い元の食器置場に戻した。ぼくは誰もいない病棟に戻ろうとした時、入口でインド人に止められた。施錠以外の解放時間にベッドで横になることは禁止されていた。症状が良くない数名を除いてそれぞれ軽い作業分担があるようだ。前庭と病棟の両横・裏庭の掃除。玄関、病棟内それに皆が嫌がるであろうトイレ掃除。ぼく達は邪魔にならない場所を見つけては莚を引き摺って移動した。

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