ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

その後    帰国・・・2

2019-02-14 | その後・帰国

 照明を消すとじわじわと覆い被さってくる闇の恐怖に捕らわれた。眠れないのは分かっていた。薬が効かないのも分かっていた。だがハルシオン2錠とカトマンズで買った睡眠薬2錠を飲んだ。眠りをつかもうとして何度も何度も布団の中で掻いた。
 抑揚のない無機質で無神経な”通りゃんせ”のメロディーが繰り返し鳴り続けている。目を開けると遮光カーテンを通した街の灯りが部屋の中の僅かな家具類をぼんやりと浮びあがらせる。眠りを邪魔するように左側の窓から執拗にくり返される通りゃんせのメロディーに苛立つ。左肘を突きゆっくりと上体を起こし音が鳴る窓をじっと見た。子供の頃よく聞いた童謡”通りゃんせ”とはあまりにも異質だ。交差点の信号機に取り付けられた装置によって寸分違わない音を吐き出す。人通りの途絶えた交差点で勝手に鳴り続けるその音が次第にぼくを追い詰める。起き上がろうとすると睡眠薬の効いた身体がふらついた。だがスタッフの支配下にある擬似脳だけがギラギラと目覚め続けていた。肉体を責め苦しめれば弱い人間なんてスタッフを手に入れる為なら狂ったように何でもやる。その事を奴は知っている。それが出来ないような肉体であれば死んでも構わない。薬物に溺れる替わりの人間なんて掃いて捨てるほどいる。
 窓の前に立ちカーテンを引く。窓を開けベランダへ出た。けばけばしいネオンサインがプログラムによって正確に画像を描き点滅する。下を見ると無人の交差点で信号だけが変わり、それに合わせた別のメロディーが流れ始めた。ベランダの手すりを両手で握った。
「ジャンプしろよ」
奴は誘いをかける。

この文章は一度 深い闇に掲示していた 
ファイルの流れで書いた一部分なのに切り取って貼るなんて今でも理解できないでいる
再掲示になりますが文章の流れで読んで頂ければと思います 深い闇は削除しています
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