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児童文学について

2016-02-18 | エッセー

 文学といってもすそ野は広い。人それぞれに得意の分野があり他へはあまり興味を示さない。ぼくもその一人だ。今回、図書館へ行って初めて児童文学書を借りた。
まず児童文学とはどういう文学なのか? そこから始めなければならない。
乳児、幼児、児童と人間の成長によって分けられているようだ。3歳頃から幼稚園児となりそこで遊戯をしたり簡単な玩具使ったりして脳の働きを刺激したり人との協調を学んだりしているのだろう、それは児童となる前の基礎教育になると思う。
小学校に入学すると環境は一変する。カリキュラムにそった教育が行われる。子供の脳はまだ現実とファンタジーの境界は定かではない、そこへ児童文学はどのようにして入っていくのか、一般的な文学より困難な要素が多い、とぼくには思われる。この時期の生活環境はその人の将来の人間形成に影響を与えるとも言われているからだ。

物語は寝起きの良くない男の子が母親から布団を引っぱがされる描写から始まる。
元気に野原を走る彼がある地点に来ると急ブレーキで立ち止まる。前は学校、ちょうちょや自然と遊ぶのは楽しいが勉強は苦手なのだ。
利発で気の強い女の子、ちょうちょや花を慈しむ優しさを持っている、が黒いずきんを身にまとい心は閉ざされている。この二人によって物語は進められていく。 
10月としては珍しいながさきあげはちょうを見つけた、たかしが走ると黒いものもちょうを追いかける、みかん畑とその奥のまんじゅしゃげに気を取られちょうを見失った。
舞台は緑色のみかん畑や色鮮やかな花々に輝いている。勉強ができないのろまでどじ、教室でひとりっぽっちのたかし、と「広い額に濃すぎる長い眉とまつ毛、大きな目,結ばれた口、三日月のようにしゃくれた鼻」魔法使いのような三角形の黒いずきんを被ったナナ子。
舞台に立つ二人の心が触れ合うことはない。輝く自然の花々に囲まれて、尚一層ネガティブな黒いずきんで心を包み込み開こうとしないナナ子。何故、女の子が赤ではなくとんがった三角形の黒いずきんを被らなけばならないのか? 誰もがそんな疑問を持ちながら読み進めていく。
第2幕は、黄色い菜の花畑から始まる
年が明けて3学期の終わるころ、菜の花畑の間をシルクハットにスティックを持った背の高いおじさんが歩いていく、その前には菜の花に埋もれて黒いずきんだけを出して動いているものが見える。教室のドアが開けられる。そこで初めてナナ子は病気で長期欠席していたことが明らかになる。ずぅ~と空席だった たかしの隣がナナ子の席となる。少しずつだが時間をかけて二人の間合いが近づいていく。算数、国語、苦手な科目をそれとなくナナ子はたかしが理解し易いように手助けをしていった。たかしは勉強が楽しくなり先生から褒められるように成長していく。
そしてクライマックスへと進んでいく。二か所の伏線がある。二人のいたずらっ子が言う黒ずきんの中は「ひょうすんぼう」かっぱの皿で禿げ頭だという。もう一点は初めの部分「ながさきあげはちょうの一回目の孵化は四月」である、そうさらりと書かれている。三年生になった一学期の四月、いたずらっ子が黒ずきんを脱がそうと引っ張る。ナナ子は自ら顎のボタンを外しずきんを脱ぐ。ふわりとした黒い髪、その上には孵化したばかりのながさきあげはちょうがいた。ゆっくりと羽を広げるとまんじゅしゃげの花ような斑点が浮かび上がる。ふんわりと風に乗って浮き上っていく。そしてナナ子の上を旋回するとみんなの夢と一緒に教室の窓から自由な空へ飛んでいく。今まで閉じ込めていた心をナナ子は自らの手で開いた。蝶の飛翔に重ね合わせるかのように。
子供たちはみんな空を飛ぶものが大好きなのだ。網かごを持って蝶やとんぼや蝉を追いかけた、手に触れられる身近な生きものが子供たちの遊び相手なのだ。ぼくもその頃のことを思いだす。
ブランコで遊ぶ二人、初夏の爽やかな風に髪をなびかせるナナ子はもう再び黒いずきんを被ることはないだろう、心を閉じることも。光り輝く生命たち、自然に抱かれて、その笑顔は尊く美しい。

70枚ぐらいの作品でしょう。丁寧に構成され温かみと感性のある爽やかな文体で描かれている。
素晴らしい児童文学作品だと思う。

作品のタイトルのみ記します 「黒ずきんちゃん」 作 絵についてはアマゾンでお調べ下さい。
図書館でしたらカーリルで検索すると近くの図書館が表示されます。

         
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2 コメント

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ありがとうございます。 (ラブレター・コスモス)
2016-02-19 18:03:46
tomyさん

15日付けの「児童文学について」というタイトルを見て、
まさか、コスモスの著書を取り上げて頂けるとは思っていませんでした。

襟を正して出直して参りました。
さりげなく書いたナガサキアゲハ・・・でしたが、登場して最後を飾ってくれたナガサキアゲハのこと、
あの頃一番蝶の勉強をしました。書いたのは数行のことなのですが、蝶キチガイとまで言われた和田さんに数回お会いして、(京都にお住まいでした。)お話を伺ったり、国立の我が家に泊まって頂いて一晩徹夜同然で話し込んだり・・・で、駄作だったとしたら、酷い話ですよね。
なんだか、ホッとしております。
余分な話ついでに、黒ずきんちゃんは
ある大学の心理学の教科書に使って貰った作品です。
どの様に使われているのか、と思ったのですが、tomyさんの書いて下さいました内容から、自分なりに納得致しました。
情けない筆者ですね。
精魂込めて読んで頂きましたことを、とても感謝しております。

大切に保存させて頂きたいと思います。
返信する
よかった (tomy)
2016-02-20 22:12:54
風邪を長引かせておられたので心配していました
病のあと無理をなさいませんように

おいちゃん 元気なかねぇ~
壊れた頭がなぁ からっぽぅになってしもうとる
いつものことやけん しんぱいなかたい
そうやなぁ~

と いうことでちょっとお休みします
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