ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅          No2 Ward・・・・・32

2013-11-15 | 3章 デリー中央第一刑務所No2Ward

  12月30日(金曜日)
 デリーでも12月~1月の夜は冷える。鉄扉を打ち鳴らす金属音が眠りから現実へ引き戻す。暖かい毛布から抜け出すには少しの時間と気持ちの切り替えが必要だ。ざわざわと動き出した収監者の機嫌は一様に悪い。着た切りのジャージの上にジャンバーを引っ掛け出口に向かう。行き先は毎日同じバラック周りの下水用側溝だ。トイレに電燈は必要ない、夕方6時から12時間鉄格子は施錠され使用できないからだ。放尿が終った者からバラックの入口に集まった。全員が出てしまわないと中へは入られない、誰もが早く暖かい毛布の寝床へ戻りたいのだ。バラックの中に残って頭から毛布を被っているのはドイツ人のトーマスとマーシャルだ。毎朝のことだ。刑務官に呼ばれようと皆のブーイングが続こうと毛布に包まって出て来ない。刑務官が毛布を引きはがそうとするがしがみついて放そうとしない、結局諦めて2名を確認して入口から入る者を3名から再度人数のカウントを始めた。これが日常化していく。
毛布に潜り込んで暫くするとティー当番の
「ティー、ティー」
と言う声がした。食器の音がガチャガチャしてグループ毎にティーを受取りに行っているのが分かった。ぼくのグループはディクソン、ショッカン、セガ、サンダーのスリランカ人、アミーゴとダニエルそれにぼくの7名の大所帯だ。今朝はサンダーがティーとトーストを運んで来た。サンダーとダニエルそれにぼくの3名で食事だ、他の者は戻って来ない。ほかのグループでご馳走になっているのだろうか、売店に行けば塀の外と同じ美味しいティーが飲めるし炊きたてのカレー炊込み御飯が5ルピーで食べられる。温く冷めたティーは臭いがして不味い、トーストもぼろぼろだ。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする