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興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

1型糖尿病の新たな治療に関する有望な進歩

2015-08-09 06:50:35 | 免疫
Promising progress for new treatment of type 1 diabetes

July 30, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150730081148.htm

ウプサラ大学のStellan Sandler教授の研究グループのPhD studentのDr. Kailash Singhは、1型糖尿病マウスモデル/T1Dでの制御性T細胞/Tregを研究した

このマウスでのTregは機能が変化していて、抗炎症性タンパク質のIL-35の代わりに、炎症性タンパク質を産生していた

※IL-35: Foxp3+Tregが恒常的に産生している抗炎症性タンパク質。CD4+CD25+Tregの増殖とIL-10産生を誘導し、エフェクターT細胞の増殖とTh17細胞の分化は抑制する


Sandler教授の研究チームはストレプトゾトシンによりT1Dを誘導したマウスモデルでは、T1D誘導後でもIL-35の投与がT1D発症を防いだ
2日間連続してconsecutive糖尿病にかかった状態diabeticだったマウスにIL-35を投与すると、血糖は正常化した

別の糖尿病モデルのnon-obese diabetic/NODマウスでも同様の結果だった
どのマウスモデルでも、IL-35を中断interruptionしても糖尿病が再発returnすることはなかった

T1D患者でもIL-35の濃度は低かった
研究者はTregの変化を説明する新しいメカニズムを発見した


http://dx.doi.org/10.1038/srep12633
Interleukin-35 administration counteracts established murine type 1 diabetes – possible involvement of regulatory T cells.

Abstract
MLDSTZでTregは増加したが、このTregは抗炎症性サイトカインが減少し (IL-10, IL-35, TGF-β)、炎症性サイトカインが増加した (IFN-γ, IL-2, IL-17)

※MLDSTZ:
複数回/頻回低用量ストレプトゾトシン投与によるT1Dモデル
multiple low dose streptozotocin induced (MLDSTZ) T1D model [27]


Introduction
PanらはIkaros転写因子ファミリーの一つEosがFoxp3とともにTregの抑制性機能の維持に必須であることを示した [26] が、Eosの自己免疫疾患/感染症における役割は研究されていない


Figure 11:
Tentative outline of IL-35 mediated protection against T1D in MLDSTZ.
仮説の概要




関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/06/140614192638.htm
Reversal of type 1 diabetes in mice may eventually help humans

以前、非肥満糖尿病マウス/non-obese diabetic miceでは自然免疫細胞に欠陥があり、TLR4がT1D発症の予防において保護的な枠割を演じることが報告されている
 

1型糖尿病を予防する腸内細菌

2015-08-09 06:13:52 | 免疫
Bacteria that prevents type 1 diabetes

August 6, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/08/150806112101.htm

(赤が膵島のCRAMペプチド。緑はβ細胞、青はα細胞)


INSERMの研究者は中国とスウェーデンの研究チームと協力して、
微生物叢がどのようにして1型糖尿病の発症から保護するかについて示した

彼らはカテリシジンのような抗菌ペプチドに注目した
抗菌ペプチドは保護的機能の他に、複数の自己免疫疾患に対して免疫を調節する能力も示しているからである


彼らはまず糖尿病ではないマウスのβ細胞がカテリシジンを産生することを観察したが、興味深いことに、糖尿病マウスではその産生に障害があった
彼らは仮説をテストするため、糖尿病マウスにカテリシジンを投与した

「カテリシジンの投与は膵臓の炎症を阻害し、自己免疫疾患の発症を抑制した」
INSERMのJulien Dianaは述べる


カテリシジンの産生は腸内細菌によって作られる短鎖脂肪酸によって制御されることから、Julien Dianaのチームはこれが糖尿病と関連するカテリシジン欠乏の原因であるかもしれないと考えて研究を進めた
事実、糖尿病マウスは健康なマウスと比べて短鎖脂肪酸のレベルが低かった

腸内細菌の一部を健康なマウスから糖尿病マウスに移したところカテリシジンは正常なレベルまで回復し、この微生物の移行は糖尿病の発生を減少させた



http://dx.doi.org/10.1016/j.immuni.2015.07.013
Pancreatic β-Cells Limit Autoimmune Diabetes via an Immunoregulatory Antimicrobial Peptide Expressed under the Influence of the Gut Microbiota.

 [腸内細菌]短鎖脂肪酸SCFA→[膵島]CRAMP→[Mφ,cDC]TGF-β→TGF-β/レチノイン酸→制御性T細胞
 [腸内細菌]短鎖脂肪酸SCFA↓→[膵島]CRAMP↓→[Mφ,cDC]TNF-α→IL-12→糖尿病誘発性T細胞
 CRAMP→EGFR


Highlights
・膵臓β細胞は「カテリシジン関連抗菌ペプチド/cathelicidin-related antimicrobial peptide (CRAMP)」を発現している

・CRAMPは、成体NODマウスにおいて保護的である(NODマウスは1型糖尿病のモデル)

・CRAMPは、膵臓において炎症性免疫細胞を調節性免疫細胞へと変換する

・腸の微生物叢は、短鎖脂肪酸short-chain fatty acids/SCFAによりβ細胞によるCRAMP産生を制御するgovern


Summary
抗菌ペプチドantimicrobial peptides (AMPs) は上皮細胞や免疫細胞によって発現され、その侵入してくる微生物に対する防御について広く説明されている

最近、その免疫を調節する機能immunomodulatory functionsが様々なコンテキストで強調highlightedされるようになっている
しかし、非免疫細胞によって発現されるAMPsがどのようにして膵臓のような末梢組織における自己免疫応答に影響するのかについては知られていない


今回我々は、インスリンを分泌するβ細胞が「カテリシジン関連抗菌ペプチドcathelicidin related antimicrobial peptide (CRAMP)」を産生し、
その産生が非肥満糖尿病マウス/non-obese diabetic (NOD) において欠陥があることを発見した
前糖尿病状態のNODマウスに投与されたCRAMPは膵島に調節性免疫細胞を誘導し、
自己免疫による糖尿病の発生を抑制したdampening


さらなる研究により、β細胞によるCRAMPの産生は腸内微生物叢によって作られる短鎖脂肪酸short-chain fatty acidsによって制御されることが明らかになった
それに合うようにAccordingly、NODマウスにおいて腸内微生物叢の操作manipulationsは
CRAMP産生ならびに膵島における炎症を調整した
このことは腸の微生物叢が直接に膵臓の免疫環境を形成し、自己免疫による糖尿病の発症に関与することを明らかにする


関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/7e4b9d26a728f97846ef1917fc26ef15
1型糖尿病を発症する乳児は、発症前に腸内微生物叢の多様性が25%低下していた

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/e1dc53fa2f44af13f2ede160c369842e
クロストリジウム属はIL-22を促進して腸の透過性を低下させ、アレルギーを防ぐ

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/9511d3372d8ee41a0fbeb937fbf108e4
健康な子供はクロストリジウム属が多く、1型糖尿病の子供はバクテロイデス門が多い

2015年2月13日

2015-02-19 22:34:14 | 免疫

免疫細胞はアレルギーを防ぐために自殺する
Immune cells commit suicide to prevent allergy



CNRS(フランス国立科学研究センター)、INSERM(フランス国立保健医学研究所)、リモージュ大学の科学者たちは、CNRS/リモージュ大学の共同研究所であるCRIBL(Controle de la Reponse Immune B et Lymphoproliferations; 免疫応答の制御 B細胞とリンパ増殖)[1] での研究により、Bリンパ球によるタイプE免疫グロブリン(IgE)の生成はその運動能を低下させ、細胞死メカニズムの開始を誘導することを証明した。

[1] がん微小環境研究所(INSERM/レンヌ第一大学)の免疫学者と協力して。

IgE抗体は量は少ないものの免疫システムにおける最も強力な「武器」であり、ほんのわずかでも濃度が上がるとすぐに喘息やじんま疹、アレルギー性ショックなどの非常に激しい免疫反応(即時型アレルギー)を引き起こす。2015年2月12日のCell Reportsにオンラインで発表される今回の発見は、我々の人体がどのようにしてIgEの生成を制限してアレルギー反応を阻害するについて説明する。



免疫はBリンパ球という細胞に基礎をおく。Bリンパ球は細菌やウイルスに対する「武器」、つまり免疫グロブリン/抗体(IgG、IgM、IgA、IgE)を作って分泌する。これらの「武器」は我々を保護しているが、時に我々自身を攻撃することもある。抗体の中で最も効果的なのはIgEである。IgEは極め少ない量でさえ(IgEは他の抗体よりも10万倍も少ない)、非常に激しいアレルギー反応を誘発する。

IgM、IgG、IgAを生産するリンパ球は非常に多く、容易に確認することが可能であり、長い間存在し続ける(「記憶B細胞」として)。しかし、IgEを生産する細胞はまばらで、その理由も不明であり、したがって研究の対象になることは非常に少なかった。

IgEを制御しているメカニズムを理解するため、科学者はまず初めに遺伝子工学を用いて強制的にこれらの抗体を大量に作らせた。その結果彼らは2つの主要なコントロール・メカニズムを証明することに成功した。

リンパ球は概して非常に機動的であるのに対して、Bリンパ球が細胞膜上にIgEを発現するとすぐに「凍りつき」、ふくらんで偽足を失い[3]、動かすことができなくなることを彼らは示した。さらに、そのBリンパ球はアポトーシス(プログラム細胞死)につながるいくつかのメカニズムを活性化することも科学者は明らかにした。免疫システムの他の細胞は最高で数年間は生き残ることができるが、IgEを発現するリンパ球の自殺はその迅速な排除を引き起こす。

[3] 偽足: 細胞が食べて「這う」ことを可能にする膜の変形(Deformations)。

このように、我々の人体は進化の間、その最も強力な免疫「武器」の1つであるIgEの周囲にいくつかの自己制限メカニズムを作り出した。IgEを発現する細胞はもはや動くことができないので、生き残ることができるのはわずかな短期間だけである。それは寄生生物や毒素などに対して保護するのにちょうど十分な長さである。そして彼らは一種の「切腹」を行うことによって自滅し、IgE生成を強く減少させてアレルギーの誘発を抑える。

科学者はこの自己制限を制御する異なる分子の経路を更に詳細に調査したいと考えている。実際、そのような経路は多くの新しい治療の標的となる可能性がある。薬理学的な活性化はアレルギーを阻害する可能性があり、リンパ腫に関与するBリンパ球を減少させるようなことさえ可能にするかもしれない。

記事出典:
上記の記事は、CNRSによって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.自制的なB細胞は、膜IgE発現の後に生じる。

Cell Reports、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/02/150213081519.htm



<コメント>
抗体を作るようになったB細胞/形質細胞は一定の割合で骨髄に移動して抗体を作り続けるものだと思っていましたが、どうやらそうではないようです。



2015年2月3日

2015-02-04 23:18:37 | 免疫

皮膚による免疫の秘密が明らかにされる
Skin based immunity secrets revealed



科学者たちは、皮膚の免疫細胞が人体の『国境警備員』として機能するための新しいメカニズムを発見した。これらの免疫細胞は、脂質または脂肪のような分子により『外国からの侵略者』の存在を感知する。この発見は、感染症やアレルギー、自己免疫疾患と戦う方法を改善する可能性がある。

今回の研究はメルボルン大学とモナッシュ大学、ハーバード大学の研究者によるもので、免疫システムが特に皮膚においてどのように機能するかについての理解を根本的に前進させるものである。



ヒトの皮膚には免疫細胞の広大なネットワークがあり、それは感染に対するバリアとして重要である。しかし、これらの免疫細胞が自分の体の細胞やただの食べ物を異質な物として認識してしまうと、不必要な副作用、例えば炎症やアレルギーが起きる可能性がある。

皮膚を中心とする免疫細胞上に存在するCD1aという分子は、このような免疫応答において重要な役割を果たす。CD1aは細菌に由来する異質な脂質(または脂肪の類似物)の分子に結合するが、それは自分自身の細胞の脂質にも結合して、免疫システムのTリンパ球に提示することで認識される。

CD1a分子は国境管理員のように働いて脂質分子をパスポートのように読み取り、その化合物が人体に属しているかそうでないかを特定する。このCD1aと脂質分子の相互作用が、メルボルン大学のDale Godfrey教授、モナッシュ大学のJamie Rossjohn教授、そしてハーバード大学のBranch Moody教授らによって解明された。

CD1aは30年前に発見され、ミコバクテリウムへの免疫やハチ刺されの後の炎症に関与することは知られていたが、CD1a分子と免疫システムがどのように相互作用するかはずっと謎だった。

「脂質は病原体やアレルゲン、自分自身の細胞によって産生され、免疫応答を強力に刺激する。免疫システムが脂質を検出する手段はタンパク質を認識するメカニズムとはまったく異なることを本研究は示す」、メルボルン大学Peter Doherty感染免疫研究所のGodfrey教授は言う。

Rossjohn教授とGodfrey教授はオーストラリアのシンクロトロンと連携して、免疫システムがCD1aと脂質分子の複合体を認識する方法についての詳細な分子的洞察を提供した。彼らは免疫細胞による認識について全く新しいメカニズムを明らかにし、さらに、免疫システムがどのように機能するかについての有益な洞察を提供した。この相互作用により、免疫システムは感染に対して免疫を増強するか、またはアレルギー反応と関連する免疫抑制の手段として免疫が操作されるという。

「ヒトの免疫システムが脂質を感知して応答する方法を理解することにより、我々はそれらの構造を微妙に修正して免疫応答の強さを変化させることが可能である」、モナッシュ大学のRossjohn教授は言う。

記事出典:
上記の記事は、モナッシュ大学によって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.αβT細胞の抗原レセプター(TCR)による、自己の脂質リガンドを提示するCD1aの認識。

Nature Immunology、2015;

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/02/150203104133.htm

<コメント>
脂質と結合したCD1a分子が、T細胞のTCRとどのように相互作用するかについて明らかにしたという記事です。CD1aはMHCクラスIと似ていますが、CD1aと深く結合した脂質分子はTCRと直接の接触はしないとのことです。

画像を見ると、TCRβ鎖の相補性決定領域(complementarity determining region)の一部であるCDR3βは、CD1aのE154とR73に阻まれて脂質分子のLPC(lysophosphatidylcholine)と直接は接触していません。



2014年12月29日

2015-01-02 16:28:52 | 免疫

幹細胞移植から3年後の多発性硬化症患者における寛解についての報告
Report on remission in patients with MS three years after stem cell transplant



JAMA Neurologyのオンライン版で発表された研究によると、多発性硬化症(Multiple Sclerosis; MS)の少数の患者が高用量の免疫抑制療法(high-dose immunosuppressive therapy; HDIT)の後に、自身の造血幹細胞を移植する治療を受けた。その3年後、患者の大部分は活動性の再発寛解型多発性硬化症(relapsing-remitting MS; RRMS)の寛解を維持し、神経機能が改善した。



多発性硬化症は変性疾患である。そして疾患修飾性(disease-modifying)の治療を受けたほとんどのRRMS患者は、治療効果の喪失(breakthrough disease)を経験する。

患者自身の細胞を用いる自己造血細胞移植(hematopoietic cell transplant; HCT)は、多発性硬化症において病原性の免疫細胞を除去し、免疫システムを初期状態に戻すことを目的として研究されている。再発寛解型多発性硬化症に自己の造血細胞を移植する研究(Autologous Hematopoietic Cell Transplantation; HALT-MS)では、RRMS患者に対するHDIT/HCTでの早期介入による効果を調べている。

プレスビテリアン・セントルーク・メディカルセンターのコロラド血液がん研究所(コロラド州デンバー)のRichard A. Nash医学博士らによる論文は、安全性と効能、そして処置後3年間の疾患安定の持続性について報告する。

患者は5年を通して調べられた。研究の結果、HDIT/HCTを受けた24例の患者のうち、全体での無症候生存率(event-free survival)の割合は3年で78.4パーセントだった。無症候生存の定義は「神経学的機能の喪失、臨床上の再発、または画像診断で観察される新しい病巣による死亡や疾患が存在しない生存状態」とされた。

無進行生存(progression-free survival)ならびに臨床的に再発のない生存(clinical relapse-free survival)は、3年でそれぞれ90.9パーセントと86.3パーセントだった。著者は、有害事象がHDIT/HCTに対して予想される毒性の影響と一致しており、治療と関連する急性の神経学的な有害事象は観察されなかったことに言及する。神経学的障害、クオリティオブライフと機能的なスコアの改善についても記した。



論説(Editorial): 多発性硬化症患者に対する幹細胞移植に関して、移動する標的(moving targets; 時間とともに変わる目標)

関連する論説で、ユタ大学(ソルトレークシティ)のM. Mateo Paz Soldan医学博士、そしてメイヨー・クリニック(ミネソタ州ロチェスター)のBrian G. Weinshenker医学博士は次のように書く:

「本研究ともう一つのフェーズ2単一群試験(single-arm study)の結果から、高用量免疫療法が短期的には活動性の多発性硬化症患者で大幅に炎症性疾患活動を抑制できることについてはほとんど疑いがない。多発性硬化症が長期間抑制されるといういくつかの証拠が存在し、治療に関連して罹患率と死亡率がどのように低下するかについての教訓が得られている。」

「しかしながら、小規模の研究でさえ死亡例が生じ、そして強力な処方計画はエプスタイン-バーウイルスと関連するリンパ腫という結果に結びついた。」



「Nashたちは、メモリーCD4+細胞の長期枯渇、ならびにCD4+が優位なT細胞受容体クローンの枯渇、そして『免疫再設定』のエビデンスを示す。」

「しかしながら、臨床的もしくは放射線学的な再発のエビデンスは、『免疫再設定』の免疫学的証拠に切り札で勝つ(trump)。そして本研究は、それらのエンドポイントが十分に達成されなかったという懸念を高める。多発性硬化症に対するHCTの妥当性と適応に関して、いまだ決定は下されていない(the jury is still out)」、と著者は結んだ。

記事供給源:
上記の記事は、JAMAネットワーク・ジャーナルによって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.再発寛解型の多発性硬化症に対する高用量免疫抑制療法と自己造血細胞移植(HALT-MS)。

JAMA Neurology、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141229164854.htm

<コメント>

再発寛解型の多発性硬化症(relapsing-remitting multiple sclerosis; RRMS)に対して、高用量の免疫抑制治療(high-dose immunosuppressive therapy; HDIT) を実施して、その後に造血幹細胞を移植 (HCT) する治療について3年後の成績を報告する記事です。

一見すると良い数字ですが、論説によればまだ解決すべき課題は残っているようです。


2014年12月17日

2015-01-01 23:28:36 | 免疫

多くのアレルギー反応は、単一のタンパク質に由来する
Multiple allergic reactions traced to single protein



ジョンズ・ホプキンスとアルバータ大学の研究者は、薬剤や他の複数の物質に対して起きる危険で苦痛を伴うアレルギー反応の原因として、単一のタンパク質を特定した。この問題となるタンパク質を標的にする新しい薬が発見されれば、前立腺癌から糖尿病、そしてHIVまで、あらゆる治療の円滑化を助けるかもしれないと研究者は言う。彼らの研究結果は12月17日にネイチャー誌で発表された。



先行研究では、様々な薬の注射部位で起きる痛みとかゆみ、そして発疹のような反応を追跡して、免疫システムの一部である肥満細胞まで行き着いた。本来、肥満細胞の表面上にある特殊な受容体が警告シグナルである抗体を検出すると、細胞は急速に活性化してヒスタミンと他の物質を放出して炎症を誘発し、その領域に他の免疫細胞を引き寄せる。

それらの抗体は細菌やウイルスなどの『脅威』に反応したB細胞やT細胞など他の免疫細胞によって作られるが、しかし「これらの注射部位の反応の多くがアレルギー性反応のように見えるにもかかわらず、奇妙なことに抗体が作られていないのである」、ジョンズホプキンス大学医学部で基礎生医科学研究所の神経科学部の准教授であるXinzhong Dong博士は言う。

その反応の原因を明らかするため、Dongの研究室のポストドクターであるBenjamin McNeil博士はまず初めにマウスではどの肥満細胞の受容体が薬に反応するかを明らかにしようと試みた。先行研究ではアレルギー反応の原因になりそうなヒトの受容体が特定されていたが、McNeilはそのヒトの受容体と同様にマウスの肥満細胞だけに存在する受容体Mrgprb2を発見した。

彼は次にラボで育てた細胞にその受容体を組み入れ、それらは実際に薬剤に反応して肥満細胞の応答を引き起こすことを明らかにした。彼はヒト受容体に関しても同様の結果を先行研究から発見した。先行研究はヒト受容体が原因である可能性を示していた。

「全ての薬が単一の受容体を始動させることがわかったことは幸運である。それはその受容体を魅力的な薬標的にする」、McNeilは言う。

受容体を消去することが本当にアレルギー反応を取り除くかどうかを明らかにするため、研究チームはマウスで疑惑の受容体をコードする遺伝子を無効化した。これらの「ノックアウト」マウスでは、遺伝的に正常なマウスが示したようなどんな薬物アレルギー症状も起きなかった。

研究者は現在、原因となる受容体(ヒトではMRGPRX2)を安全に阻害できる化合物を発見しようと研究に取り組んでいる。その化合物は本当のアレルギー反応、つまり抗体を産生するような反応は阻害せず、MRGPRX2によって引き起こされるアレルギー様反応(pseudoallergic reactions)だけを阻害する。

MRGPRX2を起動させる薬剤は、例えば抗がん剤のcetrorelix、ロイプロリド、オクトレオチド、HIV薬のsermorelin、フルオロキノロン類抗生物質のレボフロキサシン、手術中に筋肉を麻痺させるために用いられる神経筋遮断薬のロクロニウムなどである。

Dongの研究グループは、MRGPRX2が免疫性病態(例えば薬剤使用から生じていない酒さと乾癬)の裏にある可能性も調査している。

記事供給源:
上記の記事は、ジョンズ・ホプキンス・メディシンによって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.薬のアレルギー様反応にとって重要な、肥満細胞に特異的な受容体の同定。

Nature、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141217141035.htm

<コメント>
マスト細胞は抗体に反応してヒスタミン等を分泌しますが、薬剤アレルギーでは抗体がなくても反応が起きます。そのような薬剤アレルギーの原因がマスト細胞のMRGPRX2というGタンパク質共役受容体(マウスではMrgprb2。ヒトのX2のオルソログ/orthologue)であることが明らかになったという記事です。

Figure3Figure4で様々な薬剤が挙げられていますが、THIQ(Tetrahydroisoquinoline; テトラヒドロイソキノリン)モチーフに類似した構造が共通しているようです。


2014年12月18日

2014-12-22 22:41:31 | 免疫

免疫応答における内因性レトロウイルスの新しく有益な機能を特定する
Scientists identify new, beneficial function of endogenous retroviruses in immune response



レトロウイルスは、AIDSのような伝染性疾患や散発的ながんを引き起こすことが知られている。しかしテキサス大学サウスウエスタン・メディカル・センターの研究者とスウェーデンのカロリンスカ研究所の新しい研究によれば、内因性レトロウイルス(endogenous retroviruses; ERV)は一般的な細菌およびウイルス病原体に対する免疫においても重要な役割を果たす。

「ほとんどの科学者はレトロウイルスが概して有害であるという見方に慣れている」、2011年のノーベル賞受賞者、Bruce Beutler博士は言う。彼はテキサス大学サウスウエスタン宿主防御遺伝学センターのディレクターでもある。

「しかしERVは、少なくとも防御抗体の産生にとって重要な機能を果たすことが明らかになった。」



レトロウイルスは生殖細胞を含めた感染細胞のゲノムDNAの中に入りこむことができる。そうしたDNAへの挿入やレトロトランスポジションと呼ばれるプロセスにより、レトロウイルスはヒトのゲノムの大半を占めるようになった。人間のDNAの約45パーセントはレトロウイルスが起源であり、良く保存されたコピーのいくつかは「内因性レトロウイルス」(ERV)と名づけられている。

B細胞は細菌の多糖類のような大きい重合体抗原によって活性化されるとT非依存性タイプ2抗体産生応答(T-independent antibody response Type II; TI-2)により素早く防御抗体を生じるが、この応答はERVに依存的であることを研究者は発見した。

活性化したB細胞内ではERVのRNAコピーの発現は促進され、RNAは次に逆転写酵素という酵素によってDNAに複製される。ERVのRNAコピーはRIG-Iによって検出され、DNAコピーはcGASによって検出される。これらの2つのタンパク質はB細胞にシグナルを伝えて、活性化状態を維持して増殖し、抗体を産生し続けることを可能にする。

宿主防御遺伝学センターの分子生物学教授でハワード・ヒューズ医学研究所の研究員でもあるZhijian "James" Chen博士は、今回の研究で重要な2つのタンパク質、MAVSとcGASを発見した。

「これらの発見は、RNAとDNAを感知する経路が、ERVの検出ならびに適応免疫応答の活性化において重要な役割を果たすことを示唆する」、Chen博士は言う。

RIG-IまたはcGAS経路の要素を欠くマウスは、T細胞非依存性抗原タイプIIに対する応答の減少を示す。この2つの経路がどちらもないマウスは、抗体産生応答をほとんど全く示さない。さらに、逆転写酵素阻害剤もT非依存性タイプII抗体産生応答を部分的に阻害する。

宿主防御遺伝学センターのポストドクター研究者であり研究の筆頭著者でもあるMing Zeng博士は、通常は細胞質でレトロウイルスのDNAコピーを分解させるTREX1という酵素の突然変異が自己免疫疾患を引き起こすことを強調する。

「しかし、このB細胞を活性化するERV DNAの能力は生理的なようである: この種のT非依存性抗体産生応答は(常に)起こっているはずである。」




「いったんレトロウイルスが宿主の生殖細胞系の一部になると、ゲノムのあらゆる部分がそうであるようにそれが有益であるかどうかの「選択」を受ける。そして、自然免疫応答を活性化するウイルスの能力は宿主に利用されたようだ」、カロリンスカ研究所で微生物学・腫瘍・細胞生物学の教授であるGunilla Karlsson Hedestam博士は言う。

Beutler博士は、これが「良い」目的のために使われるERVの独立したケースであると証明されるかは疑問に思っている。そして実際には、そのすべてが良いとは限らない。

「おそらく、B細胞のERVの『生理的な』活性化は、炎症とがんの新しい関連を示す可能性がある。」

重要な受容体ファミリーを発見することにより2011年のノーベル医学・生理学賞を受賞したBeutler博士は言う。

学術誌参照:
1.T非依存性B細胞応答におけるMAVS、cGASと内因性レトロウイルス。

Science、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141218141057.htm

<コメント>
内因性レトロウイルス(ERV)はT非依存性抗原(TI-2)によるB細胞の免疫応答を増幅するために必要であるという記事です。

Abstractによれば、まずT非依存性抗原により刺激されて活性化したB細胞ではERVのRNAコピーが上方調節されます。そのRNAはRIG-Iまたはその下流のMAVS(mitochondrial antiviral signaling protein)によって検知され、次にRNAからDNAに逆転写されるとcGAS-cGAMP-STING経路によって検知されます。それによりB細胞はさらに活性化して増殖し、IgMの産生が増加します。つまり、ERVは生理的な機能の一部として組み込まれていることになります。

SLE患者のCD4陽性Tリンパ球、CD8陽性Tリンパ球、そしてBリンパ球では、ヒト内在性レトロウイルス(HERV)の中でも長い散在性反復配列 (LINE) のL1のメチル化のレベルが低下していることが報告され、自己免疫疾患の発症に寄与する可能性が知られています。


2014年11月26日

2014-11-30 22:39:33 | 免疫

重要な免疫タンパク質の二面性の基礎が明らかになる
Study unlocks basis of key immune protein's two-faced role



ブリガム・アンド・ウィメンズ病院主導の研究チームは、長い間求められていた重要な免疫性タンパク質であるTIM-3のパートナーを特定した。このパートナーの存在は、免疫システムでのTIM-3の二面性を説明するのを助ける。

TIM-3は時には免疫を低下させ、別の時には免疫を刺激する。この新しく特定されたTIM-3のパートナーはHIVや自己免疫、癌のような疾患における免疫システムの内部の働きを明らかにするだけでなく、TIM-3を標的にする新しい治療薬の開発への道を開く。

「TIM-3に関する多くの混乱があった。TIM-3はどのようにして免疫システムを阻害しながら、活性化もするのか」、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院(BWH)の胃腸病学・肝臓学・内視鏡検査部のチーフで、論文のシニア・オーサーのRichard Blumbergは言う。



薬の標的としてのTIM-3に対する重要性は、ほとんどがその免疫を抑制する役割から生じる(特に癌において)。

免疫細胞は長い間刺激されるとTIM-3のようなシグナルのスイッチを入れて、自分自身の活性を低下させるのを補助する。この慢性的な活性化状態とそれによる「疲弊(exhaustion)」は、HIVのような慢性的なウイルス感染によって生じる免疫学的特質である。

そして「疲弊」は、癌にも共通である。もし薬理学的にTIM-3を阻害する方法があれば、それは免疫システムを解放して腫瘍を攻撃させることができるかもしれない。

このような重要性にもかかわらず、TIM-3がどのように作用するかについての詳細はこれまで不明だった。



Blumbergと、ハーバード医科大学院とBWHの免疫疾患EvergrandeセンターのディレクターであるVijay Kuchroo博士、そしてファースト・オーサーのYu- Hwa Huangによって指揮される同僚たちは、TIM-3の重要なパートナーであるCEACAM-1を特定した。

CEACAM-1の存在はTIM-3がどのようにふるまうかを決定する。CEACAM-1が存在すると、TIM-3は免疫を阻害するように作用する。CEACAM-1が存在しなければ、TIM-3は活性化因子としての特性を帯びる。

これらの2つの分子は協力して、これまで知られていなかった完全に新しい構造を形成する。加えてそれらは構造的にも機能的にもお互いにきわめて類似している。そして事実、この類似性によって、CEACAM-1は長い間探し求められていたTIM-3のパートナーであるとHuangが初めて提唱するに至った。



Blumbergと彼の研究チームは様々なアプローチを使用して、CEACAM-1の役割の本質を明らかにした。重要なことに、CEACAM-1を欠失するように設計された免疫細胞は炎症の増加を示す。結腸直腸癌のマウス・モデルにおいてCEACAM-1とTIM-3を両方とも同時に阻害すると、腫瘍に対する免疫応答が強化された。

「我々のデータはどのようにTIM-3を標的にするべきかについて示す。これは非常にエキサイティングだ」、Blumbergは言う。

「これは癌を治療するための完全に新しいパラダイムへと至る真の道筋を指し示す。もちろん、HIVのような他の疾患もである。」

記事出典:
上記の記事は、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院によって提供される素材に基づく。

学術誌参照:
1.CEACAM1は、TIM-3によって媒介される寛容(tolerance)と疲弊(exhaustion)を調節する。

Nature、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/11/141126094246.htm

<コメント>
TIM-3(T-cell immunoglobulin domain and mucin domain-3)が慢性的な感染でT細胞の疲弊(T-cell exhaustion)を引き起こして免疫を阻害したり、別の状況では免疫を活性化するようにも見えたのは、パートナーであるCEACAM-1(carcinoembryonic antigen cell adhesion molecule 1)の調節によることが明らかになったという記事です。

Abstractによると、CEACAM1はTIM-3とヘテロ二量体を形成して相互作用することでT細胞膜の表面にTIM-3を表出させ、炎症を抑制するように作用します。癌や慢性的なウイルス感染で疲弊したT細胞は細胞表面のCEACAM1とTIM-3が特徴であるようです。

逆にCEACAM-1とTIM-3を欠失させると過剰な炎症が生じて、癌に対する免疫が強化されます。



2014年10月19日

2014-10-20 23:21:37 | 免疫

子供の遺伝子は、母親の関節リウマチのリスクに影響を及ぼす
Children's genes affect their mothers' risk of rheumatoid arthritis



子供の遺伝子の構成は、母親が関節リウマチを発症するリスクの一因かもしれない。それは女性がなぜ関節リウマチになりやすいのかについて説明する。この研究はアメリカ人類遺伝学会(ASHG)サンディエゴの2014年年次総会で10月21日に発表される予定である。



関節リウマチは、種々の遺伝子ならびに環境的要因と関連づけられてきた。実際、免疫システムの遺伝子HLA-DRB1や感染症の経験は病態と関連する。そして女性は男性よりも関節リウマチを発病するリスクが3倍高く、そのピークの割合は40代と50代の間にある。

カリフォルニア大学バークレー校の大学院生であるジョバンナ・クルース理学修士(MS; Master of Science)によれば、関節リウマチが女性に偏っていることは妊娠に関する要因の関与を強く示唆するという。

「妊娠中の母親の体内には、胎児に由来する細胞が少数だが循環しているのが観察される(胎児マイクロキメリズム)。そして女性の中にはそのような胎児細胞が数十年もの長い間生き残る者もいる。

関節リウマチの女性は、そうでない女性よりも胎児細胞が残っている可能性が高い。このことは胎児細胞が関節リウマチ発症の潜在的な危険因子であることを示唆する」、クルースは言った。

「なぜこのようなことが起こるのかは不明だが、HLA遺伝子が関与しているのではないかと考えている」、彼女は説明した。

父親から関節リウマチのリスクが高い対立遺伝子(allele)を受け継いだ子供がいると、その女性は関節リウマチのリスクが上昇した。この影響は母親の遺伝子間での違いを考慮した後にも残った。

記事源:
上記の記事は、アメリカ人類遺伝学会によって提供される素材に基づく。

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/10/141019094605.htm

<コメント>
胎児の細胞は母親の血液中に何十年も残り(胎児マイクロキメリズム; fetal microchimerism)、それが関節リウマチ発症のリスクになり得るという記事です。

マイクロキメリズムはイヌにも見られるようです。


2014年10月8日

2014-10-13 22:14:42 | 免疫

皮膚が食物アレルギーのリスクに寄与する可能性
Skin exposure may contribute to early risk for food allergies



マウントサイナイによるマウスでの研究によれば、多くの子供はピーナッツを最初に食べる前にピーナッツアレルギーになる可能性があるという。

その原因の一つは、ピーナッツが皮膚に触れることかもしれない。



アレルギーの発症プロセスの初期において、食物アレルゲンへの皮膚の曝露は「感作(sensitization)」に寄与する。この場合の感作とは、皮膚がたびたびの曝露(exposure)によって抗原(例えばピーナッツ)に反応するようになることを意味する。

アレルギーが生涯にわたって続く傾向があることを考慮すると、ピーナッツアレルギーがどのようにして始まるかという問題は重要である。その反応のいくつかはとても激しく、有病率は集団の1~2パーセントと高い。

過去の研究では、母乳やハウスダストでピーナッツタンパク質に接触する時に初めて子供はアレルギーになる可能性があることが示された。しかし今回の研究により、その「罪人」のリストに「皮膚への曝露」が加わる。

マウントサイナイのアイカン医学部で小児科学の准教授であるセシリアBerin博士は次のように言う。

「マウスの皮膚で活性化される免疫経路を阻害すると、ピーナッツアレルギーの発症は阻止された。我々の次のステップはヒトでこれを確認することだろう。」

学術誌参照:
1.皮膚への曝露は、ピーナッツ・アレルゲンに対するTh2依存的な感作を促進する。

JCI、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/10/141008203750.htm

<コメント>
少し前に「茶のしずく石鹸事件」があり、当時のアレルギー・免疫誌で経皮感作について特集していたのを思い出しました。

それによれば、「2008年にイギリスのLack Gは食物アレルギーに関する新しい概念を提唱した。経口摂取は免疫寛容を促進し、経皮的接触はアレルゲンの感作を惹起促進するという概念である。この二重抗原曝露仮説(Dual allergen exposure hypothesis)は、これまで消化管での感作が主体であると考えられてきた食物アレルギーの概念を一新した」とあります。


2014年9月25日

2014-09-29 23:46:35 | 免疫

Epigenetic programming of immune system training unravelled
免疫システムの訓練とエピジェネティック・プログラミング



単球の活性化とマクロファージの分化は、病原体と感染のタイプによって異なることがありえる。

重度の感染症と敗血症の間の単球とマクロファージは、一時的に活性が低下する。このいわゆる「トレランス(tolerance; 寛容)」の状態の細胞は侵入してくる病原体に対して効果的に反応できず、宿主はより感染しやすくなる。

対照的に、他のタイプの感染、特にはしかのような予防接種後の単球とマクロファージは、より強く病原体に反応する。このプロセスを「訓練免疫(trained immunity)」と呼び、これは事実上の自然免疫の記憶を示す。

サイードたちはScienceで発表される研究で、免疫トレランスと訓練免疫を実行するのは別個のエピジェネティック・プログラムであることを証明した。加えて、これらのプロセスを誘導する新しい特定の経路を記述する。



「宿主の免疫応答は、我々が考えていたよりもずっと環境的要因によって調節されている」、ラットバウト大学メディカル・センターで実験医学の教授であるミハイNeteaは述べた。

「我々は、単球とマクロファージの設計図(blueprints)がどれだけ異なっているかを知って驚いた。それはそれぞれの肉体区画の強い影響を受けており、単球は侵入する病原体に対して急速に行動する一方、皮膚と腸のような組織に存在するマクロファージはよりトレラントであるように指示される。」



近年ヒト・ゲノムが解読されたが、それは肝心なことを理解するには不十分であることが明らかになった。DNAコードを解明してそれが染色体でどのように構造化されるかを知っても、そのコードがどのように細胞のアイデンティティを決定するために用いられるのかは分からない。

肉体の中には多くの異なるタイプの細胞が存在し、それぞれの細胞は同じDNA内容を持つが、それでも細胞はその外観と機能において非常に異なる。

それらは細胞外のシグナルや老化の結果として変化し、したがって遺伝情報の使われ方は各細胞タイプの間で異なるが、この差は部分的には、DNAが染色体中で凝縮(packaged)される方法によって決定される。

エピジェネティクスは、この「染色体の構造的な適応による凝縮」を解明することを目指す。凝縮は、DNAエレメントがどのように調節されるかを決定する。

この新しく得られた情報はそれぞれの細胞の特定のタイプに独特であり、「ゲノムのトップ」に位置して細胞の全体計画、設計図を形成する。

記事供給源:
上記の記事は、ナイメーヘン・ラットバウト大学によって与えられる資料に基づく。

学術誌参照:
1.単球からマクロファージへの分化ならびに訓練免疫のエピジェネティック・プログラミング。

Science、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/09/140925141137.htm

<コメント>
前回登場したミハイNetea氏についての記事です。



LPSやβグルカンなどの様々な外的要因に対する自然免疫細胞の反応は、ヒストンのアセチル化やメチル化の状態と、それに応じて動員される転写因子の違いを反映しているようです。

Abstractによれば、訓練免疫にはcAMPが重要であるとも書かれています。

>the inhibition of cyclic adenosine monophosphate(cyclic AMP)generation blocked trained immunity in vitro and during an in vivo model of lethal Candida albicans infection, abolishing the protective effects of trained immunity.

2014年9月26日

2014-09-28 22:09:52 | 免疫

訓練免疫の研究
Researchers contribute to study of trained immunity



一般的に科学者は、免疫システムを自然免疫応答と適応免疫応答という2つのカテゴリーに分割する。適応免疫はワクチンが疾患に対して長期の保護を与えることでよく知られている。そして自然免疫は、病原体などの差し迫った脅威に即時的な反応を示す。

しかしここ数年の植物と無脊椎動物の研究により、自然免疫も「記憶」するようだと科学者は気付き始めた。



「自然免疫システムは初感染に対する即時的で非特異的な応答であり、免疫記憶がないと一般的に考えられている」、ダートマス大学ガイゼル医学部で微生物学と免疫学の助教授であるロバート・クレイマー博士は言う。

「しかし、おそらく事実はそうではない。」



2011年、ミハイNetea博士たちを含むオランダの研究者は、自然免疫システムと関連する細胞に由来するが「免疫記憶」を伴う免疫応答を指して「訓練免疫(trained immunity)」という用語を造り出した。しかし、訓練免疫がどのようにして開始され、継続されるかというメカニズムは不明なままである。

最近の研究によれば、ある種の病原体やその抗原に触れるとエピジェネティックな変化が自然免疫細胞で生じるという。そのような変化は訓練免疫の重要な特徴であるが、訓練細胞と関連する特定の遺伝子と生化学的経路は知られていなかった。

今回のScienceの論文で、訓練免疫という表現型の重要な原動力は代謝の変化であることが報告された。エピジェネティック・プロファイル実験により、グルコース代謝に関与するHIF1αが訓練免疫にとって重要な遺伝子として特定された。



HIF1αは、代謝に関与する遺伝子の転写因子としての機能を果たす。自然免疫システムの細胞からHIF1α遺伝子を削除したマウスを用いて、代謝の変化が訓練免疫のために重要であるという仮説をクレイマーたちはテストした。

彼らは最初にマウスを真菌の多糖類抗原(polysaccharide antigen)であるベータグルカン(beta glucan)に触れさせ、訓練免疫の応答を誘発した。次に敗血症を引き起こす細菌の病原体をマウスに投与した。

その結果、正常なマウスは訓練免疫によって病原体から保護されたが、HIF1αのないマウスは保護されなかった。このことは、HIF1αの欠如が二次感染に対する訓練免疫の応答を阻害したことを示す。

クレイマーによれば、研究の次の段階は訓練免疫という表現型にとって重要なHIF1αの下流の遺伝子を特定することであるという。

学術誌参照:
1.訓練免疫の代謝性基礎としての、mTOR-とHIF-1により仲介される好気性解糖。

Science、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/09/140926112157.htm

<コメント>
自然免疫でありながら獲得免疫のように「学習」する第三の免疫、「訓練免疫」についての記事です。

詳しくはこちら



2014年9月10日

2014-09-11 21:24:58 | 免疫

単一の受容体の阻害が、関節リウマチを止める
Blocking single receptor could halt rheumatoid arthritis



関節リウマチは、関節に対する進行性の炎症性自己免疫疾患である。

進行する骨の喪失に加えて腫脹と痛みが疾患の特質であり、それらは関節に殺到するある種の細胞に起因する。

このプロセスは白血球にあるTLR5という単一の受容体を引き金として始まることをイリノイ大学シカゴ校(UIC)の研究者は示した。



「TLR5は、その全てをする」、UICのリウマチ学准教授のシバShahraraは言う。

TLR5(toll-like receptor 5; Toll様受容体5)は、血液から関節に遊走する「骨髄性細胞(myeloid cell)」という骨髄に由来する細胞の表面に存在する。

Shahraraと彼女の同僚は、TLR5受容体が関節リウマチ患者の関節の液体(joint fluid)、つまり滑液(synovial fluid)で発見される骨髄性細胞の表面上に非常に豊富であることを発見した。



先行研究においてShahraraたちは、TLR5受容体の活性化が関節リウマチ患者の関節に異常な血管形成を生じることを発見していた。

今回の新しい研究において、TLR5受容体はTNF-αという強力な炎症性分子を上方制御することが発見された。

TNF-αは、さらにより多くの骨髄性細胞を関節にリクルートして、そこで骨髄性細胞は破骨細胞(osteoclast)という骨を分解する細胞に変わる。



一連の実験により、研究者はTLR5受容体の活性化によって引き起こされる複数の病的プロセスを発見した。

研究者が関節リウマチ患者の滑液の近くにTLR5を発現する骨髄性細胞を配置すると、細胞は液体の中へと遊走した。

しかし、TLR5受容体を抗体によって阻害すると滑液への細胞の移動は著しく低下したため、滑液の何かがTLR5を持つ細胞を引きつけるのだろうと推測された。

その何かはおそらくTLR5に結合するタンパク質であり、それは関節リウマチに冒された関節に存在する。



さらに、関節リウマチ患者の滑液中のTNF-αのレベルは、TLR5が活性化した骨髄性細胞が存在するときに増加した。

抗TNF-α薬を服用する関節リウマチ患者は骨髄性細胞上のTLR5のレベルが低いが、それはTLR5とTNF-αの間に正のフィードバックループが存在することを示唆する。

「TLR5とTNF-αはお互いを調節するだけでなく、それらは関節にさらに多くの骨髄性細胞を引きつけるために相乗作用する」、Shahraraは言う。



関節リウマチのマウス・モデルにおいて、TLR5受容体を阻害する抗体を与えられた実験的マウスは、コントロールと比較して関節の腫脹と骨浸食を著しく低下させた。

TLR5抗体による治療は破骨細胞になるために関節に遊走する骨髄性細胞の数を低下させることによって腫脹を低下させる可能性がある。

学術誌参照:
1.関節リウマチと実験的関節炎において、TLR5の結合は、骨髄性細胞の浸潤ならびに成熟した破骨細胞への分化を促進する。

The Journal of Immunology、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/09/140910102826.htm

<コメント>
TLR5とTNF-αが相乗作用して骨を破壊する細胞を呼び寄せるという記事ですが、滑液中のTLR5を活性化する「何か」の正体はわからないままですね。

関連記事は今回と同じイリノイ大学シカゴ校によるもので、関節リウマチでのCCL28/CCR10による異常な血管形成についてです。


http://www.sciencedaily.com/releases/2014/05/140516111003.htm

>When the researchers added CCL28 to cells carrying the receptor CCR10, the cells organized into blood vessels.

>But if they chemically blocked the receptor and added CCL28, formation of blood vessels was reduced.


2014年9月8日

2014-09-10 11:27:15 | 免疫

幼少時に動物の毛皮の上で眠ることは喘息のリスクを低下させる
Sleeping on animal fur in infancy found to reduce risk of asthma



ミュンヘンで開催されている欧州呼吸器学会(European Respiratory Society; ERS)で発表される新しい研究によれば、生まれて最初の3ヵ月間に動物の毛皮の上で眠ると、その後の小児期に喘息のリスクが低下する可能性がある。

研究ではLisaplusと呼ばれるドイツ人出生コホートのデータが使われ、コホートには主に1998年に生まれた3,000人以上の健康な新生児がリクルートされた。

分析の結果、動物の皮の上で眠ることは喘息につながる多くのファクターのリスク低下と関連していた。

6歳児に喘息である可能性は、出生後に動物の皮の上で眠った小児ではそうでない小児と比較して79%低かった。

リスクは10歳までには41%に減少した。

記事供給源:
上記の記事は、欧州肺財団(European Lung Foundation)により提供される材料に基づく。

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/09/140908083750.htm

<コメント>
都市部であっても、生まれて3ヶ月以内の動物の毛皮での睡眠は、6歳児の喘息リスクの低下と関連するという記事です。

以前の記事でも、生まれて1年以内のネコやネズミアレルゲンの曝露と、3歳児の喘鳴の低下が関連するというものがありました。


http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/3d1c75030409e04bfe90b15db40f5d1b

>本研究はニューヨーク州ボストン市ボルチモアとセントルイスから467人の都心部の新生児の間で実施され、3年間の健康を追跡した。

>出生のすぐ後、1歳までにネズミとネコのふけ、ゴキブリ落下物のある家で育った乳児は、3歳で喘鳴の率が低かった。

>さらに、保護作用は相加的だった。1つ、2つ、またはアレルゲンのいずれにもさらされていない乳児より、全3つのアレルゲンにさらされた乳児はリスクが低かった。

2014年8月20日

2014-08-25 23:57:48 | 免疫

活動性結核の予防を助けるタンパク質が特定される
Study identifies protein that helps prevent active tuberculosis in infected patients



カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)を中心とした研究によれば、インターロイキン-32(IL-32)は、結核(TB)に対する十分な防御を示すバイオマーカーである。

IL-32はビタミンDの濃度が充分に高い時だけ、結核菌の殺菌を誘導できることが発見された。

「これまで、潜在的な感染者が活動性結核を発病しない理由を、生物学的な因子に基づいて予測する方法は存在しなかった」、UCLAのデニス・モントーヤは言う。

学術誌参照:
1.IL-32は、ヒト結核の宿主防御ネットワークの分子マーカーである。

Science Translational Medicine、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140820164311.htm

<コメント>
結核の防御に重要なバイオマーカーが明らかになったという記事です。

IL-32はマクロファージのTNF-α産生等を誘導し、さらにビタミンD依存的に抗菌ペプチドのカテリシジン(cathelicidin)ならびにベータディフェンシン2(Defensin beta 4A; DEFB4)を誘導します。

http://stm.sciencemag.org/content/6/250/250ra114

>IL-32 induced the vitamin D–dependent antimicrobial peptides cathelicidin and DEFB4 and to generate antimicrobial activity in vitro, dependent on the presence of adequate 25-hydroxyvitamin D.


ビタミンDの受容体はTCRの刺激により誘導され、PLC-γ1の発現増大につながる(~75倍)という関連記事もあります。

http://www.sciencedaily.com/releases/2010/03/100307215534.htm



今回と同じUCLAの関連記事もあり、結核とビタミンA、そしてコレステロールの関係についてです。

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/02/140225122218.htm

>The active form of vitamin A -- all-trans reinoic acid -- is responsible for activating the immune system.

>To investigate the role of this active form of vitamin A in immune defense, the UCLA team first compared its effects on cells to the effects of a similar nutrient, vitamin D, which the group had previously studied.

>The researchers thought the two vitamins might use the same mechanism to aid the immune system, but this wasn't the case. They found that when the vitamins were added to human blood cells infected with tuberculosis, only vitamin A decreased the cells' cholesterol levels.

>The researchers also discovered that the action of vitamin A was dependent on the expression of a gene called NPC2.

>Further experiments in the lab showed that even if an infected blood cell was stimulated with vitamin A, it would not be able to fight the tuberculosis bacteria if the cell couldn't express the NPC2 gene.

>"We were very surprised that this particular gene was involved, since it has traditionally been associated with cholesterol transport and not immune defense,"


>Cholesterol is stored in lysosomes, compartments in a cell that also play an integral role in fighting infections.

>If the lysomome is full of cholesterol, it supplies the bacteria with needed nutrition instead of killing it.

>Vitamin A induces the cell to express NPC2, which helps the cell effectively remove cholesterol from the lysosomes so the bacteria can't access it.

>This allows the lysomomes to once again become effective in killing the bacteria.


ビタミンA(ATRA)はNPC2の発現を誘導してリソソーム内のコレステロールを取り除き、結核菌がコレステロールを使えないようにするという内容でした。

ATRAはベータディフェンシン1の発現も誘導します