雑文の旅

猫爺の長編小説、短編小説、掌編小説、随筆、日記の投稿用ブログ

猫爺の日記「停電」

2016-11-02 | 日記
 数日前の夜、停電があった。地震があった訳でもなく、雷も、台風どころか雨さえも降っていなかった。台所で食事の後片付けをしていての突然のことである。

 その瞬間、もしやブレーカーが働いたのではないかと思ったが、ブレーカーなら照明とコンセントは別系統のブレーカーになっているので、部屋中全部消えることはない。電灯が消えても、電子レンジ等のパイロットランプは点灯しているのである。

 日頃、停電に備えて幾つかハンドライトを用意しているのだが、その場所は知っていても、真っ暗闇でなかなか辿りつけなかった。電池式の予備灯もおいてあるのだが、普段やたらと点くのでSWを切ってしまっていた。

 用意万端のつもりでも、こんな調子で夜に大きな地震でもくれば、ガスの元栓を切って玄関に辿り着くまで時間がかかるだろう。「まさか自分の家は大丈夫だろう」と思わずに、もう一度災害時の対策は大丈夫だろうかと、点検する必要があるようだ。

 約10分程して、電気がついたのだが、PCがシャットダウンして書きかけでほっておいたデータが消えているは、消していた部屋のLED電灯が点いているは、風呂の設定がリセットされているは、AC電源の周波数で動作している(AC100ボルトの西日本地区の60ヘルツを逓減して1秒を得ている方式)LED表示時計がリセットされて12:00で点滅しているはで、全部直して終わったと思った瞬間、またしても停電。昔を思い出してしまった。

 猫爺の若い頃は、停電なんて日常茶飯事だった。そればかりか、電力会社の発電機が不安定だったのか、電圧低下も頻繁であった。「電圧が少々低下したところで‥」と思われるであろうが、蛍光灯が点いたり消えたり、はては全く点かなくなるのだ。当時、かなり気が悪かったと記憶している。

 映画館で映画を見ていても、しょっちゅう消える。こちらは、普通の停電ばかりではなく、映画館で使われている映写機の光源がアークランプであった為で、こいつは輝度は大きいが寿命が短く、映画が佳境に入ったときに限って画面がセピア色に変わり、やがて消える。観客も慣れたもので、ランプを交換する間、騒ぎもせずに温和しく待っていたものだ。

 アークランプは、かなり熱くなるようで、フィルムが引っ掛かって動かなくなると、やがてフィルムが燃え、スクリーンにメラメラとその様子が映し出される。そんなおりにも観客は騒がない。
   「あ、燃えた」
 悠然と炒った南瓜の種(売店で売っていた)を食べながら待つ。動じないというか、呑気というか、そんな観客の中に、自分も悠然と存在していたのだ。

 ところで、現在も映画館ではフィルムで放映しているのかな? すでにデジタル化しているのかな? 世情に疎い年寄りだが、ネットで調べると分かることだろう。
   「こらっ、調べてから書かんかい」
   「へい、すまんこってす」