やあサクラ。まだ慣れないだろうけど、そっちの世界はどうだい?
こっちはいまだに、物干し部屋の前を通るたびにお前を探してる
オバンもそうらしい
それだけお前の存在は、夫婦の生活の一部になっていたからね

この夏は物干し部屋の片隅にいることが多かった
お前が旅立った次の日、病院に検査結果を聞きに行ったよ
突如かかった疥癬の治療と心臓の経過チェックだったのに
血液検査の速報値があまりにも悪すぎた
感染やコロナウィルスによる敗血症か、何らかの理由による造血機能の低下か
ステロイドの直接的な副作用は見られないが免疫機能の低下は避けられないと
それは今に始まったことでなくて、病魔は少しづつお前の身体を蝕んでいた
そしてついにお前の身体が耐えられなくなった、というのが先生の推測だ
別の病院で心不全の診断を受け、投薬で腹水が引いた時は手放しで喜んだけど
あの時、貧血という診断結果をもっと深刻に受け止めるべきだったんだ

亡くなる1週間前、心臓検査の予定だったがその直前に疥癬にかかった
サクラよ、今の自分は保護者としての後悔に満ちている
お前の表面的な様子に一喜一憂して、病魔の本質を見逃していたこと
お前は最後の日、昼頃から殆ど動かなかった いや、動けなかった
その時は既に身体が異常をきたしていて、苦しかったんだね
お前は声も出せず、心の中で何度も「助けて」と叫んだに違いない
でも保護者はお前が休んでいる姿に安心して、お前の叫びに気づかなかった
夕方にお前は最後の力を振り絞って廊下まで出たけど、それが精一杯
夜になってようやく気付いた保護者は動転して、お前の旅立ちをも見逃した
その自責の念がロス感情と重なって、今も胸を締め付ける
この保護者は一生、その日の自分の至らなさを責め続けるだろう
(※ 最後の日の様子は「サクラ、突然の旅立ち」をご覧ください)

愛くるしい目と長いシッポが特徴だった
でもなあサクラ、楽しいことだってたくさんあったよな
今は、そのひとつひとつを思い出すことに努めているよ
お前が家裏に現れたのはちょうど7年前(2018年)の8月
その春、リン一家を保護するとソトチビが消え、すぐにシロキとハリーが現れた
2匹の喧嘩声が問題となってハリーを保護したのに、シロキが鳴き止まない
やがてシロキは、臆病でなかなか姿を見せないお前にラブラブだとわかった
童顔で小柄なお前は当時は生後半年くらいに見えたけど
成長しても変わらない風貌を考えると、もっと上だったのかな

2018年初秋、初めて写真に納まったサクラ
家裏時代はいろいろあったね
秋にようやくシロキを保護すると、暮れになって子猫のキジロ(現ハチ)が現れ
翌年2月には若武者ルイが現れた
他にも怖い黄色系が2匹、お前とキジロは隠れながら恐る恐る食べてたけど
やがて怖い連中はルイが追い払ってくれた
ルイは何故か若いお前たちには優しかったね
しかしその年(2019年)の秋にルイがFIPで急逝、家裏はお前とキジロの時代となった

2019年夏、ルイ(下)が一緒に食べていた頃
お前たち2匹の家裏時代は随分長いこと続いた
キジロは温厚な性格だったけど、それでもお前は警戒心に満ちていたな
すぐに隠れるし、しかも超偏食・超むら食いのお前には本当に手を焼いたもんだ
キジロがほぼ皆勤賞なのに対して、お前には月に2日ほどの"欠勤日"があった
家裏に来て食べないことも多く、その都度FIPなど疑って案じたものだ
今日のサクラはどうだった それが夫婦の日々の会話にもなった
ある晩秋の頃、お前は5日続けて来なかったことがあったな
あの時はさすがに事故や閉じ込めなど心配して、あちこちに連絡しまくった
でも6日目にお前は何食わぬ顔でやって来て、ガツガツと食べまくったんだ

2022年、長年付き合ってきたキジロとようやく同じ写真に納まった
食の細いお前は大きくならず、いつまで経っても子猫のようだった
今にも消え入りそうな感じだったけど、よくまあ長く続いたもんだと思うよ
家裏は倉庫になっていて雨風が凌げるので、お前用に寝床を置いてみた
段ボール箱を2重にして、入り口をお前用に小さく工夫して、中に毛布を敷き詰めた
するとお前はすぐに使い始め、冬の間はそこで暮らすのが定番になった
夕方カイロを交換に行くとたまにお前が入っていて、迷惑そうに飛び出して
でも2mくらい先で作業の終わるのを待っていた
ああ、この子はもう立派なうちの子だ つくづくそう思ったよ

2020年冬、カイロ交換を待つサクラ(右手前が寝床)
お前の最大のピンチは2021年の秋、子猫のケンが家裏に現れた時だ
ケンは当初はお前たちの残飯を食べていたけど、やがて家裏に居座るようになった
ケンのいない間を縫ってうまく食べていたキジロ
しかしお前はケンが怖くて家裏に近寄れなくなった
少し距離を置いた物陰から物欲しそうに家裏のたたき(餌場所)を見つめるお前
たまにケンを追い払ったけど、それでもお前は近寄れない
お前も工夫して裏ではなく庭側に食べにきたり でもそれもケンに見つかった
ついにケンの保護を考え、嫌っていた捕獲機を動物病院から借りて初めて使った
予定外の保護だったけど一発でうまくいった
もしあのとき、捕獲機に入ったのがケンではなくてお前だったら・・
運命の分かれ道なんて、いつも身近なところにあるんだね

2022年、家中のちび太とは勝手口の空気孔を挟んで毎日鳴き合う関係に
お前に異変が生じたのはその翌年(2022年)の秋
その年の夏ごろからお前の様子がおかしかった
とにかく食べない 食べたそうなのに食べない 単なる食の細さとは明らかに違う
最初に疑ったのはFIP いつお腹が膨れてくるかとハラハラだ
このままでは何もしてやれない・・通院のための保護を考えた
でも殆ど食欲のないお前に捕獲機が使えるのだろうか
そんなある日、勝手口を開けるとドアの下にお前がうずくまっていた
衰弱していたのだろう、触っても逃げない 今がチャンス、今が決行の時だ
そっとお腹に手を回し、持ち上げてドアの内側へ、反対の手でドアを閉めた
その瞬間、お前は4年3ヶ月にわたる家裏生活に終止符を打ったんだ
推定ほぼ5才 産まれて以来のノラ生活との別れでもあった

家裏に来ても食べなくなった保護前
サクラよ、お前の生い立ちを自分は知らない
おそらく山の手の、旧農家さん宅の納屋に生息する猫たちの一匹が母猫なんだろう
寒い冬をそこで過ごして、春になって独り立ちしてわが家にやって来た
そして何かの縁でわが家の一員になった以上、必ずお前を幸せにする
お前を保護した瞬間、そんな気力が沸き上がってきたんだ
一方お前は自分の腕から逃げ出し、パニックになって家中駆け回った
勝手口に戻ったが閉まっている その横の棚の上に駆け上ってうずくまった
窮地のお前を救ったのは、日頃から勝手口の内外でお前と親交のあったちび太だ
ちび太はお前を見るとすかさず棚に上ってお前を舐め始めた
やがてお前は落ち着きを取り戻し、家中探検しつつ保護部屋に入った
部屋の入口を閉め、寝床やトイレを外から部屋に持ち込んで保護完了
お前の新しい猫生が始まった
(後編・「介護付家猫生活編」に続きます)

保護部屋では落ち着かない日々が続いたが、ちび太(左)が入ってくると大喜び
(オジンより追伸)
今、自分でも驚くほど強い無気力感や体調不良(「介護ロス症候群」)に襲われています
サクラを看取ってからというもの、サクラの事が頭から離れません
いくつもの重篤な病魔に襲われながら
暗い陰ひとつ見せずにヒョウヒョウと生きていたサクラ
毎日を生きることに一生懸命だったサクラ
猫といえども、そんな姿に感銘を受けていたのだと思います
こんな時、今回のように追悼記事を書いて思い出にどっぷり浸かると少し気が楽になる
「後編」も、ひとつひとつ噛みしめながらゆっくり書いていこうと思います
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