動物愛護後進国と言われる日本。WAPが発表した世界ランクでも日本はE。先進国の中では最下位です。(畜産動物に至っては最低ランクのG。) 当ブログのテーマである野良猫たちの過酷な環境の改善が、いつまで経っても進まないのはこのためでしょう。
シリーズ『ノラたちとの共存を目指して」を書き進めるに際し、「殺処分ゼロに向けて」あるいは「その先にあるもの」の項目まで来て筆が止まり、思いもかけぬ"膨大な量の調査"をする羽目になってしまいました。少しでも現実的な道筋を提案できなければ、結局は単なる夢物語に終わってしまうからです。
そして同シリーズの番外編や場外編等で、日本の動物愛護後進国たる要因が見えてきた。ノラたちに関して言えば直接的な原因は「猫捨て」にあるが、猫捨てが常態化した間接的な要因として報道の姿勢や世間の誤った常識がある。「野良猫が増えるのは野良猫自身に問題がある、」つまり自然繁殖が原因という考え方だ。それは誤りではないが2次的な問題で、本質的な要因ではない。根本的な原因は自然繁殖に匹敵するほどの猫捨てであって、それを防止しない限り、どんなに殺処分してもTNRしても野良猫は減らないのです。
野生動物と違い今では多くの保護団体やボラさんたちが活動している野良猫。猫捨てを防止できれば野良猫は必ず減ります。ボラさんたちの活動を無にしないためにも、そしてボラさんたちが疲弊してしまわないためにも、行政も報道も猫捨て防止にもっともっと焦点を当てるべきなのだと思います。

花屋に保護されて看板猫となったテンちゃん
それにしても、なぜ日本では"当たり前のように"猫捨てが横行するのか。袋や箱に詰めてゴミ捨てしたり、山中に放置したり、さらには川に投げ捨てるなどその方法も残虐極まりない。単なる報道だけではなく、SNSなどに捨てられた猫を拾った話が絶えないことからもわかります。ごく普通の人が猫を捨てる。自分の身の周りにも、皆さんの身の周りにも結構いると思います。自分はそういった話を集めているうちに、ある事実に気づきました。
猫捨てはれっきとした犯罪です。そのような人々(犯罪者)を取り締まる機関はどうなっているのか。政府(立法府)は、とりあえず関係法規(動物愛護法)を強化するという仕事をしています。前回(2019年)の改正では下記のように罰則も強化され、2020年から施行されました。
動物殺傷罪:5年以下の懲役又は500万円以下の罰金 (旧:2年以下200万以下)
動物虐待罪:1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 (旧:懲役刑なし)
動物遺棄罪:1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 (旧:懲役刑なし)
動物虐待罪:1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 (旧:懲役刑なし)
動物遺棄罪:1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 (旧:懲役刑なし)

甘えん坊になっても猫としての矜持を忘れなかった
さて、問題はここからです。
環境省が「動物の虐待事例等調査報告書」という報告書を作成公開しています。現段階で令和4年度版が最新とちょっと古いですが、ネットで調べれば他にも同様の報告をしているサイトがたくさんあります。それらを調べ上げていくと、衝撃的な事実(下記)に突き当たるのです。
1.警察が逮捕した犯人のうち、検察が起訴したケースは30%以下
2.過去の判例で懲役刑はすべて執行猶予付き(他犯との併合罪を除く)
3.罰金刑の実績は殆どが10万円程度で、最高でも30万円(他犯との併合罪を除く)
ご存知と思いますが、執行猶予付きの懲役刑というのは無罪と同じです。(猶予期間中に再犯しなければ懲役免除。) この結果から、前述愛護法の罰則が検察と司法(裁判官)によって如何にないがしろにされているのかよくわかる。犬猫を何百匹殺しても最高刑どころか、無罪同然の判決しか出さない裁判官。愛護法の罰則が強化された前後でも何の変化もなく、強化した意図がまったく反映されてないのです。
あるサイトに、環境省が動物愛護法実刑判決の例を紹介している、とあったので調べてみた。確かに殆どが最高刑の判決、でもそれは英国の話だったという笑い話にもならないオチだ。こういった事実を調べもせずにどこかの個人的な保護活動をスポット的に紹介して、動物愛護の機運が高まったと報道するテレビやネット関係者も結果的に視聴者を欺いているのではないでしょうか。犬猫の遺棄や虐待が重い罪となって大きく報道されるようになれば、そこいらの啓蒙活動より遥かに防止効果があることは間違いないと思うのです。

テンちゃんが目指したのは「人間との対等の付き合い」だった
関連過去記事
・死刑に処すべし 2019.6.7
・続・死刑に処すべし? ~死に体・動物愛護法の復活を期して~ 2021.7.21
・どうしてこんなに軽いのか <続・続・死刑に処すべし> 2021.11.10
・司法の壁? いやいや単に裁判官の怠慢でしょう 2023.2.3
・検察司法そしてメディアの問題点 ~動物愛護法を強化しても~ 2023.12.15
・ノラたちを救うために不可欠な警察・検察・裁判官の意識改革 2025.2.25