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長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ワンダー 君は太陽』

2018-06-27 | 映画レビュー(わ)


登場人物全員に等しく注がれた作り手の優しさが心地いい。R・J・パラシオによる同名小説を映画化した本作は今の時代に相応しい寛容性を持った好編だ。これは前作『ウォールフラワー』で自身の小説を映画化し、成功を収めたスティーブン・チョボウスキー監督のヒューマニズムによるところも大きいだろう。先天的に顔に障害を持った少年オギーの初めての学校生活を描く本作はいじめや、すれ違いが描かれるがそれぞれの視点から平等に語ることで、互いに歩み寄る事の大切さを教えてくれる。

真心のこもった演技を見せている俳優陣のアンサンブルが見どころだ。オギーの母親に扮したジュリア・ロバーツは飛ぶ鳥落した90年代よりも現在の方が俳優としての充実期ではないだろうか。さかのぼれば『クローサー』から僕は彼女の成熟した大人っぽさが好ましかった。
オギーの父親役にはオーウェン・ウィルソン。いつもウェス・アンダーソン映画でヘラヘラしていたイメージの彼が所帯を持っているだけで微笑ましく、そんな彼の個性がまるで友達みたいな父親像(年収も高くなさそう)につながっている。

『ウォールフラワー』でエマ・ワトソンを“脱ハリポタ”させたチョボウスキー監督なだけに、今回も20代若手女優のキャスティングでその慧眼が活かされている。オギーにかかりきりな両親を気遣うばかり“しっかり者の長女”にならざるをえなかったヴィア役イザベラ・ヴィドヴィッチや、そんな彼女と進学を機に疎遠になってしまったミランダ役ダニエル・ローズ・ラッセルが繊細な表情を見せており、スター誕生を予感させる。チョボウスキーは20代俳優を撮らせたら今一番信頼できる監督ではないだろうか。

また『サバービコン』で実質主演と言っていい活躍だったノア・ジュプ君も出演。オギーの親友になりながら一度は同調圧力に屈してイジメに加担してしまうジャック役で、本作の子役中でも一番複雑な演技を見せている。今年はホラー映画『クワイエット・プレイス』も大ヒット、今後しばらく引っ張りだこになりそうだ。

2017年はアメリカ映画の多くで親の不在が印象的だった。混迷の時代に範を示す者の姿はなく、それでも僕たちはしぶとく生きて、子供達に未来を託さねばならない。本作の正しい親の存在、友愛は楽観的と言われるかもしれないが、それでも作り手の温かい善意を僕は心から支持したい。


『ワンダー 君は太陽』17・米
監督 スティーブン・チョボウスキー
出演 ジェイコブ・トレンブレイ、ジュリア・ロバーツ、オーウェン・ウィルソン、イザベラ・ヴィドヴィッチ、ダニエル・ローズ・ラッセル、マンディ・パティンキン

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