長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『チャーリーズ・エンジェル』(2019)

2020-09-24 | 映画レビュー(ち)

 現在、ハリウッドはアカデミー作品賞ノミネートの資格に一定数以上のマイノリティの雇用を義務付ける等、ダイバーシティの拡充を急ピッチで進めている。2018年のアカデミー授賞式ではフランシス・マクドーマンドによってインクルージョンライダー(包摂条項)が提唱されたのも記憶に新しい。これは俳優が出演契約の条件にマイノリティの雇用を含めるといったものだが、問題はそれが作品の質を担保しないという現実だ。もちろんハリウッドが長年、あらゆる人種の才能豊かなクリエイターを育ててこなかった事に原因があり、2001年ブレイク組の『ワンダーウーマン』パティ・ジェンキンス監督や『ムーラン』ニキ・カーロ監督らの遅咲きもその一例だろう。彼女らは男性監督とは違い、女性であるがためにたった1度の失敗でキャリアを潰されてきたのである。

 今後、この状況を打破する重要な役目を担うのがプロデューサーだと僕は思っている。今年はアメコミ映画『ハーレー・クインの華麗なる覚醒』で主演製作兼任のマーゴット・ロビーが多用な人種の女性をメインキャストに起用し、監督にはアジア系の新人監督キャシー・ヤンを抜擢した。ここで彼女は“ナメられないように”とアクションスタントに『ジョン・ウィック』シリーズのチャド・スタエルスキー組を招聘。あえてR指定クラスのハードアクションにする事で娯楽映画としての面白さを担保したのである。

 2003年の『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル』以来、16年ぶりの続編となる本作は『ピッチ・パーフェクト』シリーズで大成功を収めた女優エリザベス・バンクスが製作、脚本、監督を務めているが、残念ながら期待に応えているとは言い難い。『チャーリーズ・エンジェル』と言えば個性の違う3人の活躍に面白さがあったが、本作はエンジェル結成前のため表立って戦うのは実質2人だけ。稚拙なCGを多用したアクションは前述のスタエルスキーらが確立したフィジカルアクションのトレンドに逆行しており、バンクスも見せる術を心得ていない。

とはいえ温度の低いイメージのクリステン・スチュワートがメインストリームでおちゃらけセクシーキャラを演じているのは目新しく、ファンとしては有りか。新鋭エラ・バリンスカは180cmの身長に長い手足が迫力満点で、トレーニングを積めばアクション女優としての開眼に期待が持てた。

 この機会に2000年代のシリーズ2作を見直してみたが、本作よりもずっと今風だった。キャメロン・ディアス、ドリュー・バリモア、ルーシー・リュー(この組み合わせ考えた人、天才か)がひたすらキャッキャと遊んでるシスターフッドは映画としてはデタラメでも無性に楽しい(製作はバリモアが兼任)。あんまり言いたくないが、新作は118分間「コレじゃない」感がつきまとって仕方がなかった。


『チャーリーズ・エンジェル』19・米
監督 エリザベス・バンクス
出演 クリステン・スチュワート、エラ・バリンスカ、ナオミ・スコット、パトリック・スチュワート、ジャイモン・フンスー、サム・クラフリン、エリザベス・バンクス


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