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長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『BFG ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』

2016-09-19 | 映画レビュー(ひ)

 スピルバーグがロアルド・ダールの児童小説を映画化する。それも「ET」を手掛けた盟友メリッサ・マシスンの遺稿で。この報を聞いた時「リンカーン」以来“娯楽映画は撮らない”と宣言し、新境地に入りつつあった巨匠がどんなアプローチでファンタジー映画を撮るのかと興味は尽きなかった。ひょっとしてスピルバーグを語る上で重要な1本になるのでは…と大いに期待が高まったが、これはどうしたものか。全米ではディズニー製作にも関わらず興行的に大惨敗。批評も取り立てて注目を集めるには至らなかった。

確かに(珍しい事だが)間の悪さを感じはする。CGが多用されたランドスケープは昨今、顕著であった伝統的シネマスコープに逆行し、魅力を減じてもいる。時に説明的過ぎるきらいもあったスコアも耳に残るようなメロディラインを奏でてはいない。前作「ブリッジ・オブ・スパイ」で製作キャスリーン・ケネディが離脱したような穴があるのかと思いきや、編集マイケル・カーン、撮影ヤヌス・カミンスキー、作曲ジョン・ウィリアムズという鉄壁の“スピルバーグ組”だ。

スピルバーグが子供向けファンタジー映画を撮るには老成し過ぎた、というのもあるだろう。親のいない子供と巨人の友好といった相変わらずのモチーフを使っているが、この映画世界はいずれ終わりが訪れると明確に(セリフで)謳っている。かつて映画という永遠ファンタジー世界を創り上げてきた人がマーク・ライランスの素晴らしいモノローグに乗せて幸せな子供時代の後に大人になる事の楽しさを語っているのだ。

スピルバーグ映画で育った僕ら観客もまたファンタジーを楽しむのに歳を取り過ぎてしまった。今や70~90年代のスピルバーグ映画に触発された“スピルバーグチルドレン”達が次々と台頭し、娯楽映画のスタンダードを更新し続けている。僕ら観客がより新しい刺激を欲している事も確かだろう。

「BFG」はいみじくもスピルバーグの老成のみならず、僕ら観客が無邪気に映画を楽しむ少年時代を終えた事も証明してしまったような気がして、少し寂しいのだ。


「BFG ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」16・米
監督 スティーブン・スピルバーグ
 出演 マーク・ライランス、ルビー・バーンヒル
 

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