リッスン・トゥ・ハー

春子の日記はこちら

新世界

2007-05-15 | リッスン・トゥ・ハー
神戸居留地に咲く花は、下校途中にある公衆便所わきに突き出たもうすでに黄色になつてしまつた草と何の違いがあると言ふのでそう。貴方はそうつぶやいて、黄色の草を摘み取り、つ、と握り拳の中に閉じ込めた。私は、言葉に肯定も否定もすることなく、ぼうと立っている遠くの高層ビルディングの方へ目をやりました。やがて、握りつぶした草を放り投げ、といつても握りつぶされた草はそれほど遠くに飛ぶはずもなく、すぐにひろひろと落ちるのですけれど、貴方はにあと笑いました。私は気づきませんでしたが少し前まで誰かが乗つていたのでそうか、それとも風が吹いたからでそうか、向うのブランコがほんの少しだけ揺れていました。

欲望401~410(お稽古の神様)

2007-05-15 | リッスン・トゥ・ハー
・ついでに簿記2級取得

・0を見つけたインド人のように、新しい数字を見つける

・お気に入りの文具しか使わない

・キレイ好きです!と照れずにいえる

・なにげに書道は有段者

・なにげに黒帯

・なにげに器用貧乏

・だけど、悲しい時もある

・書いた文字をほめられる

・それをお世辞だと気づかない、一生気づかずにいる

センター、問合せまーす!

2007-05-14 | リッスン・トゥ・ハー
で丁稚は走る。ででっちは走る。残念なニックネームみたいだが、とにかくセンターへ走る。そこに情報があるらしい、から「問合せ」られたのである。丁稚は14才だった。親元を離れて、今日が初めての仕事だった。だから正直勝手が分からなかった。センターと言うのも実は良く知らなかった。だから、闇雲に走った。決して手を抜かないように、おとっさんからきつく言われていた。いつでも真剣に問合せるそれがおいらの仕事なんだ。闇雲に、西の方角へ走った。西へ向かって走るのがなんとなく好きだったから西へ向かった。貴方だけに言っておくと、西の方角にはセンターはない。だから、丁稚はいくら西へ向かって走ろうとも、永遠にセンターにはたどり着けないのだ。しかし、誰も指摘するものもいない、丁稚はただひたすら西へ向かって走っている。丁稚は、どうしてかテンションが上がってきた。だから、草履を脱いだ。着物も脱いだ。ふんどしも脱いだ。裸で西へ向かって走る14才の丁稚は猥褻物陳列罪の対象になった。警察が追ってきた。警察のおじさんは決して怒ることなく丁稚をお縄した。とてもやさしい目をしていた。丁稚は、センター問合せはできなかったが、とても充実した顔であった。

うず

2007-05-11 | リッスン・トゥ・ハー
眠りたくない夜だったので、TVプログラムをやんやん言わせて、深夜にいる。深夜の底につっ立っている。そしてさきほどから、裂きイカを裂いては並べ、裂いては並べ、を繰り返している。裂きイカは規則的に机の上に並んでいる。髪の毛のようにうねうねしている、で気持ちが悪い。そうこうしているうちに何もすることがなくなったので冷蔵庫の奥に横たわっているミネラルウォーターをひとくちだけ口に含んで、右頬から左頬へと、左頬から右頬へと移動させる。静かな音が体中に響く。波ができる。歪みができて、渦になり、やがて、その渦の中心にある穴へと、私の身体は吸い込まれていく。

ヨーグルトを飲んで馬乗り

2007-05-10 | リッスン・トゥ・ハー
ちゅーちゅるちゅーちゅる。

いわせといてストローを噛む。噛んだ後に僕を見る。鼻で笑う。再び、

ちゅーちゅるちゅーちゅる。

といわせる。飲むヨーグルトの紙パックがクシャとなる。ぺコと腹が引っ込む。

ずずずずずず、ろずろろろろず。

空気を、紙パックの中に入っているありったけの空気を吸い込む。

ろろろろずず、ろろろおろろろおろろろおおろろ。

ヨーグルトを飲み尽くしたら手で丸めて僕のほうに放り投げる。

つとん。

額に当たる。角が当たって意外と痛い。

かつとん。

有無を言わさず、戦闘開始さ。

欲望381~390(モンローガール・ボーイ)

2007-05-10 | リッスン・トゥ・ハー
・分からない言葉があったらほったらかしにせず辞書を引く

・寝巻きのままで週末を過ごす

・あっちが5番なら、こっちはシャネルの8番をつけて寝る

・スケスケのネグリジェを着るといったら着るんだ

・図書館で働く

・図書館に住む

・ストックホルムで舞う

・痴漢を捕まえる

・痴漢の冤罪と闘う

・政府にたてつく

銀杏じじぃズ

2007-05-08 | リッスン・トゥ・ハー
銀杏じじいが対岸でひとつ伸びをして、ううんと唸り、どしんと音を立てて乱暴に寝転がったのを、私は少し離れて見ていた。銀杏じじいというのは、名前は知らないけれど、みんなからそう呼ばれているじいさんのことで、みんなといっても、私の周りのだいたい2、3人から呼ばれているだけなので、おそらく銀杏じじいと聞いて、誰も反応しないと思うから気をつけて。銀杏じじいは自転車に乗っていて、私たちが並んで歩いていると、銀杏の匂いを漂わせ、追い抜かしていく。私は、銀杏の匂いを知らなくて、酢の匂いやない?といったけれど、赤い眼鏡の春子があれは銀杏やわ、と譲らないので、銀杏じじい、ということになったわけだ。というても私は銀杏じじいを正面からちゃんと見たことがないような気がするし、いつも後姿しか知らないから、銀杏じじいを対岸に見かけたときに、あ、とすごく興味を持ってしまい、そのままなんとなく見ているのだ。変な子だと思われるかも知れないけれど、かまうものか。銀杏じじいが起き上がる。対岸と言っても、小さなドブ川なので、とても近くに見える。銀杏じじいは私のことなどちっとも気にせず、ぼぶという鈍い音の放屁をして、とめてあった自転車に跨った。そしてすぐに小さくなった。

欲望371~380(金屋ロックフェスティバル)

2007-05-07 | リッスン・トゥ・ハー
・君がサーフィンできるなんて知らなかった、とそっとつぶやかれる

・セクシーなビキニをつけてサーフィンし、砂浜のアイドルになる

・サーフィンなんてもう一生しない、と誓った翌日海へ来ている

・午前サーフィン、午後スノーボード

・イルカを追い抜かす

・サマーソニックとフジロックとロッキンジャパンのメインステージに立つ

・ロックフェスの出演者を決める権限をもらう

・出番前のバンドの円陣に加わる

・ステージの裏側でほくそえむ

・堅実に、ボランティアスタッフになる

欲望361~370(日本のスイッチ)

2007-05-04 | リッスン・トゥ・ハー
・工場が稼動しだすボタンを押す

・核ボタンを押す

・くす玉が割れるボタンを押す

・スペースシャトルが飛び立つボタンを押す

・舞台の幕が開くボタンを押す

・動きを止めるボタンを押す

・禁止でも右クリック

・奨励されなくとも左クリック

・エンター連打

・道端に落ちているスイッチを押す

コスモス

2007-05-03 | 若者的詩作
悲しい歌が流れる街に夕暮れ。沈む君の後ろ

うたをふたりで作った公園
ゆれるコスモス坂道のぼった
星座の土手に寝転ぶふたりきり
君の言葉で答えておくれ

ほんの些細な出来事でぼくらは
ずぅっと遠く離れてしまった
力なく声途絶えてふたりきり
君の笑顔はぼやけたままで
それから、君は新しい生活始めて
僕を忘れてしまう

ゆれるコスモス坂道途中
何度も後ろ振り返った
悲しい歌があふれる街並みに
夕暮れ
沈む君の後ろ

欲望351~360(ヒッチハイクヒッチハイカーヒッチハイケスト)

2007-05-03 | リッスン・トゥ・ハー
・一銭も持たずに国境へ向かう

・ヒッチハイクで捕まえたトラックの運転手と仲良くなる

・ヒッチハイクで捕まえたトラックの運転手にラーメンをおごってもらう

・ヒッチハイクで捕まえたトラックの運転手と、偶然、別の場所でもう一度会う

・飛んでいる蝿を箸で掴む

・とんでもねえ動体視力だ!と思われる

・いいバネ持ってるね、とスコアラーに言われる

・バリーボンズから空振り三振を奪う

・ランディジョンソンにインコースを突かれて決して逃げない

・胴上げされる