リッスン・トゥ・ハー

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ボディペイントをする女アザラシ

2010-03-25 | リッスン・トゥ・ハー
くうくうないている、声は天を貫き世界をわける。わけたらでてきた黄身はじゃぼんと地面に落ちてきて一面を黄色に変えた。アザラシは乙女で、人間にしてちょうど20歳、ほてった頬が愛くるしい年頃。ひげをぴんと伸ばせば文明開化の音がする。彼女は落ちてきた黄身を身体に塗りたくり、モンシロチョウの絵を描く。東京ドームにして8個分ほどの大きさの黄身だったから、すでに彼女も黄身色に染まっていたわけであるが、それでも何かを探しているように自分の身体にモンシロチョウを描いている。一心不乱。生物はすでに窒息してしまった大半、息をするのは彼女と空の太陽と、吹いて北風さ。彼女はやがて綺麗な(と思われる)モンシロチョウを一羽描くことに成功し、満足感から睡魔が鈍器で殴り掛かり突っ伏して寝る。眠ってしまったアザラシの彼女のちょうど右の脇腹の部分とまったモンシロチョウ、羽を広げて、彼女が眠っている好きにはたはたはばたいて、少し強い北風がぴゆうと吹いてきたその瞬間に飛び立つ。青い空に黄色のモンシロチョウははたはたはばたいて、わたしはそれを虫網でおいかけたのです。


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