飲み会があるということだから、私は全く乗り気でなく、むしろ全く行きたくなかったけれど、もろもろの事情で大変不服ながら出席しなければならないということで、いつものように自転車できこきこ、よいこらへと坂道を登って飲み会会場(チェーン店の居酒屋だった)に向かった。その途中で私はおばの家に寄る。こんにちは、と私が持っている声帯を最大限に使用して、耳の悪いおじにあいさつをする。おお、いらっしゃい、といつもと全く同じように返してくれる。台所にいたおばが、あらどうしたの?と手を拭きながらこちらに出てきた。ちょっと寄っただけや、と私は答えた。実際意味など、用などなくて、本当にただちょっと寄っただけだったし、すぐに飲み会があるからと座りもせずにじゃあまた、と家を出た。玄関をくぐると、空はまだ明るく、しかし、方角は全く分からないけれど、ふと見上げたところに、薄く星が見えた。それを私はろくに確かめもせずに一番星だと決め付けた。決め付けたらもう空は見ない、空を見たら別の星も見つけてしまい私が見つけた星が一番星じゃなかったということになってしまう。そうなるとなんとなく嫌だった。私はできるだけ下を向いて、何度か電柱にぶつかりそうになりながらきこきこと飲み屋に向かった。
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あなたが「一番星」と決めた星は、誰が何と言おうと他になにがあろうと、「一番星」です。
そこにある星がいつでもその人にとっての一番星というわけですね。
しかし、現代気象天文大辞典カッコええこと書きよりますね。
文学的用語だったとは。