リッスン・トゥ・ハー

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実はほとんど役に立っていない人体の部分

2010-08-23 | リッスン・トゥ・ハー
「どこなんですか?」

「たくさんあるけどね、一番役に立たないのは、弁慶の泣き所だね」

「弁慶の」

「あれは、狙われるばっかりでろくなことがない」

「そうなんですか」

「あれがあるために、致命傷をうけることもしばしばあるという」

「誰が言ってるんですか」

「格闘家だよ」

「じゃあ一般の人にはあんまり関係ないんじゃ」

「何を言っている、油断してたらかつんと蹴られるぞ」

「そんな危険な国じゃないですから日本て」

「嘆かわしいなあ実に嘆かわしい、日本ももうそこまでデンジャラスだ」

「そうですかねえ」

「とにかくあって欠点しかないものは弁慶の泣き所だ」

「役には立たないんですね?」

「それがね、役に立つこともある、さすがに」

「だったら、存在する意味があるじゃないですか、どんな役に立つんですか?」

「弁慶と出会った時だよ」

「弁慶と?」

「そう、弁慶に森で遭遇したときに」

「弁慶森にいるんですか?」

「森にいる、そしてたまに人間を襲ってくるんだ」

「弁慶人間じゃないんですか?」

「人間じゃないねえ、襲ってきたら危険だろう?」

「そら、危険ですよ、無傷じゃあいられないでしょうな」

「そこで弁慶の泣き所だよ」

「どうつかうんですか」

「泣き所を掲げる」

「掲げるって、どうやって?」

「それは誰かに手伝ってもらって掲げてみよう」

「誰もいなかったらどうするんですか、ひとりで歩いていたら?」

「そのときは、弁慶に手伝ってもらえばいいじゃないか」

「弁慶手伝わんでしょう、襲いにきたんだから」

「意外といいところあるから、お願いしたらきっと手伝ってくれるよ」

「じゃあ、手伝って掲げたらどうなるんですか」

「弁慶が悲鳴を上げて逃げていく、そして森の片隅でそっと泣いているんだ」

「そんな気持ちになるんですか」

「けんけーん、と泣いているんだ」

「きつねみたいなやつですねえ」

「そのとき以外には役立たないよ」

「ほぼ役に立たないですねえ」

「だろう?」


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