リッスン・トゥ・ハー

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ふたつめは今宵の月が僕を誘っていること4

2006-12-04 | 東京半熟日記
(沖縄編13)

ミクロレディは、賑やかな鍾乳洞内を、内臓を進む病原菌のようにうねうね進んでいきますと、ひときわ眩しいイルミネーションで飾られた鍾乳石があります。これでもかというぐらい重厚にイルミネートされている。その一帯の鍾乳石がすべて着飾っている。何か期間限定鍾乳洞のイルミネーションなんちゅら、という企画らしいのです。イルミネートされている中心街に、おきなわ玉泉洞と書かれた派手な文字。どうやら、記念撮影スペースらしいです。そうですか。
感じるのは主催者との果てしなく遠い距離感。
その間も電飾はむなしく光っている。

「そうしたら、飾ろうかね」
「そうですね、でも社長自ら飾ってくれるんですか?」
「わしが飾らないと、橘君では頼りない」
「きつい言葉だなあ、いい年して無理はよしてくださいよ」
「はっはっは、よし、みんないくぞー!」
 とたどり着きたる飾る場所。あらかじめ決めておいた、着飾るのに適当な場所。
 みんなそれぞれ電飾を飾り始めるのだが、社長はテンションが上がって、予定になかった電飾までやりだす。
「そら、こっちもだ、うふふうふう、こっちも綺麗、綺麗」
「しゃ、社長、ちょっとやりすぎでは」
「なにいっとるか、まだまだ綺麗、あたし綺麗」
「社長?」
「まあ、ええじゃないか、ええじゃないか」
「でも、いくらなんでも、せっかくの鍾乳洞が」
「今が、今が楽しければなんでもいいと思う、あたいいいと思う」
「社長?」
「なあ、今だけ、ちょっと子どもに戻ろうじゃないか、橘君、いや、シンジ」
「社長・・・・。いや、イサオ。そうだ、俺たちゃ、大切な何かを忘れてたようだ」
「そら、みんなどうした、手が止まってるぞ!」
 はーい。無邪気にありったけの電飾をつけ始める社員一同。

きっと誰も止められなかったんでしょうね。言い出してはいけない空気だったんでしょうね。だってふたりは仲良し。間に入り込む余地なし。まあ橘君だって最期はなんかやり遂げた感でいっぱいになったんでしょうね。社長だって良かれと思ってやったのでしょう。きっと、良かれと思って、観光客が楽しんでくれるだろうと思って、飾ったんだろうな。そう思うと可笑しいけど綺麗に思えてくるんです。

出口。この長い長いエスカレーターはあの惑星につながっているの?
ご入洞ありがとうございました。テープ音声が洞内にこだましている。


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