リッスン・トゥ・ハー

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イングランド・ウォルコットがまさかの落選

2010-06-02 | リッスン・トゥ・ハー
イングランド・ウォルコットは確実に当選すると思われていたし、本人もその気でいて、議員バッチの位置の確認なんかを問い合わせていた所だった。電話は鳴り、彼女の落選を手短に伝えた。あまりにも素っ気なく抑揚なくー相手からしたら当然だ一刻も早く伝えて電話を切ってしまいたいー、それは伝えられた。彼女は「冗談でしょう」という暇も与えられず言われたことを頭で理解する前に早々に電話は切られた。じわじわと実感として落選したことが彼女の中に広がっていく。まず周りの反応はどうだろう、と彼女は考えた。まだいい、と念を押していたのにもう祝賀会の準備を始めているジョージに伝えなければ。議員にふさわしい車に乗るんだと購入契約を結ぼうとしているハリスに伝えなければ。目を描いてもらいたがっているだるまに伝えなければ。忙しい。気疲れする。当選したのなら、こんな気疲れは皆無だろうが、落選は重い。相手が気遣われるのが目に見えていて、それがとても厄介だ。しかしやらないことにははじまらない。彼女はまず夫であるガルベスに伝えることにした。
「ハロー?」
「ああ、あたしよ、あたし」
「おーなんだい?そろそろ結果が届く頃だと思ってたけど、それだろう?そのことだろう?」
「ガル、ごめんなさい、そのことだけど、あなたが思ってるのと180度違う結果よ」
「Hahahahahaわかってるわかってる、君の上品なユーモアは議員になってもきっと有効さ」
「ちがうの、いい、ガル、聞いて」
「オーケーオーケー、言わなくていいよ、まずご両親に伝えておこうかい、さっきからパーティ用のナゲットをつまんでは笑ってるよ」
「なんですって!もうパーティの準備できてるの?」
「善は急げって言うだろ、もうかれこれ昨日からできてるんだ、早くこっち来いよ」
「ガル、お願い、今すぐ中止して、いい、ちょっと聞いて」
「いいから、はやくきなよウォルコット、落選した君を励ますパーティさ」
「まあ、ガル、知ってたの?」
「君が当選するわけないだろう」
「先読みしてくれてたのね、ありがとう。じゃ、いますぐそっちいくから待ってて」
「ああ、涙の味のナゲットは格別だぜ」