リッスン・トゥ・ハー

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書店のサイン会で突然殴られ

2009-11-02 | リッスン・トゥ・ハー
ただいまからサイン会がはじまります、という放送が流れた。著名な作家だという。わたしはその作家を知らなかった。サイン目当ての客が、小走りでサイン会場に向かう。波となり、関係のない、特に目的のなく書店にいた客も泳がせていく。著名なんだったらとりあえずサインもらっとこうかただだし、親戚の誰かがファンかもしれないし、との声が聞こえる気がする。わたしはその作家の顔を一度見て見ようとその流れに乗った。書店は広く、歩いても歩いてもその会場にたどり着けない。人波は途切れて、人通りは少なくなって、風が吹いてきた。ほこりが舞っている。ひとめ見たいわたしは汗を拭いて、辺りを見回す、誰もいない書店の一角、本棚に置いてある本を一冊取り出した。地味な色の背表紙の本を取り出して広げた。世界が詰まっていた。やがて、吸い込まれたわたしはサイン界へ向かう波を再び見つけて、天竺へ向かう。