リッスン・トゥ・ハー

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理由

2007-10-07 | 掌編~短編
だから言ったんだわたしはなにも無理に手をつなぐ必要ないし、そうしたって何も変わらないでしょう。手をつないでいるところを見られたらそちらのほうがもっとややこしくなるし、どういう方向のややこしさかと問われると言葉に詰まるけれど、わたしのクラスメイトなんてガキんちょなのだから、はやし立てるに違いない。幼児から小学生にかけてやるそれとは違って、もっと陰から陰湿に、わたしたちの耳に届くか届かないか、というぐらいちいさくはやし立てるに違いない。そしてそのうち、学校中の誰もが知っている事実になって、わたしたちの一挙手一投足が注目されてあーあ、わたしは登校できなくなってしまい、お先真っ黒だよ。それもこれも手をつなぎたいだなんていいだす奴が悪い。どうしてくれるのわたしの楽しい学園生活を返してほしいわ。なに?その顔、何か文句があるというのか。文句など言えないはずだから、だって、わたしは別につなぐ必要ないし、といった。確かに言った。つなぎたくないわけじゃないから、つなぎたくないわけじゃないから、それだけは確認させて、私は手をつなぐということ自体は反対しているんじゃない、例えば南国の無人島にて、お付の3人以外誰もいない無人島にいるのなら、手をつなぎますよ。つながない意味がない、でもね。でもね、何も地元の知り合いがいつ通るか分からないような交差点で、手をつながなくていいでしょう。そりゃ見られるわ。何度も言ったでしょう、私、やめよ、って。こういう場所ではおとなしくしておいたほうがいいから。無難に過ごせば、いずれ結ばれるんだから、何かあったら知らないけれどね。とにかく、何も起こらなければ結ばれるんだから、そんな手をつないであせることなかったの。あせったんじゃないかもしれないけど、まあ、あれはあせりでしょう。あせってもいなかったら、静かにゆっくりと育んでいけばいいのに。いきなりこんなところで手をつなぐだなんて。百歩譲ります、譲って手をつなぐのはよしとしましょう。しかし、よ、あの場所はないでしょう。あの場所はありえないでしょう。おかげで現在に至るわけでしょう。まったく始末におえない。あーあ、さあ明日からどうしましょう。すぐに広がって、わたしたちはそれぞれの頭の中でねちゃくちゃにされて、想像力たくましい男子などにかかれば、わたしなんて、ただの淫乱女になってしまうのでしょうね。やだやだ。こんなにも清純なのに。
ん?なにちょっと、それどういうつもり、泣かないでよ、泣きたいのはこっちなんだから。
もう、やめてよ、そんな顔しないで、いや、そういうとこ嫌い、泣いてしまえばこっちは何もできなくなるじゃないの。それが狙いでしょ?ずるい。ずるい、ダメそんな目で見ても、だから、嫌いなんじゃないから。もう何度も言ってるでしょう。何度も、いわせるのいや。そんなんじゃもてないよ。もてたくない?魅力ない男なんて嫌い。もーおー、泣かないでって。好きだから。まったく、いいかげんにしてよほら。

といって私は彼の手をとり、ぎゅうと握って夕暮れの町。彼もすごい力で握り締めてきた。離れそうにない、が私は、さほど嫌ではなかった。

ピヤノアキコ/矢野顕子

2007-10-07 | 若者的図鑑
とてもシンプル、歌とピアノだけ。

歌ピアノのアルバムから選んだ曲を集めたベストアルバム、+ばらの花(!)
声の強さを感じます。この声があれば何も食べなくていいぐらい。
飯5杯ぐらいならぺろり。食べとるがな。

曲目も、中央線、しようよ、恋は桃色、雷が鳴る前に、など、有名な曲ばかりですよ。

なんといっても注目は、ばらの花。
独特のアレンジがしてあって、一見オリジナル曲かと思うけれどああばらの花だ、と気付いて、ピアノがざんざん、歌の急な高低揺れ動いてヤノアキコさん。
完全に自分のものにしてしまったこの分じゃオリジナルを食うぞ。

未発表ライブ音源も入っていて、これが秀逸。
アドリヴで飛ばして飛ばして、ついて来れなくなった観衆に向けて、やさしく、響かせて待つ余裕。アーチスト。

レイハラカミさんとのyanokamiもさぞよろしいのでしょう。
こりゃかなわん。