リッスン・トゥ・ハー

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ビルの上の観覧車

2007-07-23 | リッスン・トゥ・ハー
あんなに高い所に行っていったいこれから先、どうすればいいのだろう、と君はつぶやいた。ぼくはそれを、聞こえなかったふりをして、目を閉じたままでいた。ゆっくりと、いや、じりじりと時間が流れる。それから何も言わなくなって、重いため息だけが聞こえる。分かった、と僕は突然言ってみる。「何が?」「何もかも全部分かった」「何も分かってない」「分かってないかもしれないけど、分かるようにする」「そんなんじゃない」やはり同じように、どうしようもないことなのだ。僕は煙草を取り出して火をつける。2週間ぶりに、煙が身体に染み渡っていくのが分かった。やめたはずだったのに。ビルの上の観覧車は動きを早めて、早めて、ぐるんと落ちた。