リッスン・トゥ・ハー

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僕が旅に出る理由なんて何ひとつない6

2007-01-16 | 東京半熟日記
(沖縄編34)

盆地暮らし23年燃え尽きて2年、なので席に座ると、前に座ってた連れが気分悪いってトイレに駆け込んでく。古酒をたらふく飲み、頭を揺らし激しく揺らしたもんで、酒が回りまわったようで、吐いててん。

「ちょっ、もう、か、帰るわ」
「そう?」わたしは名残惜しそうに答えます。
「みんな、まだおったらええよ、ひとりで、帰るから」
「いや、そういうわけにもいかんでしょう?」
「いや、悪いし、ごめんねえ」
「そう?」わたしは名残惜しそうに答えます。
「ほな」
「大丈夫?」
「うん、歩ける」
「大丈夫かいな?」
「うん」
と、店を出るKさん。
まあどう考えてもひとりでは帰れそうになさそうやしね、少し遅れてわたしたちも続いて店を出る。名残惜しそうなのは、歌ってる人や店の人も。「あれ、帰っちゃうの?」「ごめんさないねー」
で、Kはその辺彷徨ってました。ほらね。
で、かえって、すぐ寝ました。わたしも酔ってたし完全に。

で、さっきまで気にしてたハウトゥプレイザギター、
灰になる。

僕が旅に出る理由なんて何ひとつない5

2007-01-16 | 東京半熟日記
(沖縄編33)

彼らの、歌う時の表情がいい。
微笑を含む口元がきりりとしまりメロディを発する時、真っ直ぐに深い所にまで届くのです。

そしてこちらも負けじと、わたしたちの、踊っている時の表情がいい。「さあもっと踊ろうね!」という言葉のアクセントはあのアクセントで、「ええ、踊るー」と言う言葉のアクセントはこのアクセントで、それらが入り混じる空間が心地よかった。島に生きる人々の血が流れる音楽がオーロラみたいに宙を舞っている。沖縄を、歌を心から愛しているその気持ちがにじみ出ている。「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆ならおどらにゃ損損!」それはどっかちがうとこのじゃないのか!でもええねん。
いつの間にか店の人がハンディデジタルカメラでその様子を録画する。これ、広報誌に出すからねー!しらーん!けどいえーい!わたしは例えばサッカーワールドカップで日本が勝った時、実も知らぬ隣の人と抱き合って喜びを分かち合うシーンをテレビが映し出したのを、冷ややかな目で見ていた。つは、ありえん。でも今は、あの感覚、分かる気がする。魔法にかかったみたいに、沖縄の音楽、わたしは虜になってしまったんです。抱き合うのもいいかもしれない。身も知らぬ、人々に抱きつくのもいいかもしれない。そこに幸福があるのなら。かなり酔っている。強い泡盛を飲んでいるうえに、頭をガンガンに振って踊っているものですから、回っている。体中に泡盛がまわっている。走り回っている。正直、わけわからん。君誰やっけ?あ、はじめまして。「今日は若い人たちが来てるから調子に乗ってまだ続けるよー!」「おお!」さらに飲み歌う。しっとりと、なだそうそう、が流れる。涙が出そうになるんだ。帰りたくない。あんな寒いとこに、帰りたくなかった。住みつきたい。とさえ思う。僕が旅に出る理由なんて何ひとつない。

沖縄、もちろん他の場所も良かった。いちいち感動した。ひめゆりの事実は、バカンス気分の頭を殴られたような衝撃だったし、数々の世界遺産にそれぞれ圧倒された。
しかし、それらはただの前ふりだったのだとさえ思う。すべてはこの瞬間の為の前座でしかなかったのです。

決して巧くまとめたくないでおこうと思います、しかし気づいてしまったんだ。

音楽は、偉大だ!