議会雑感

国会のルールや決まりごとなど、議会人が備忘録を兼ねて記します。

一事不再議の原則

2016-07-04 | 国会ルール
○国会法第56条の4

各議院は、他の議院から送付又は提出された議案と同一の議案を審議することができない。

ひとたび議院が意思決定した案件について、当該議決の背景となった事情が根本的に変化したとき等の特別の事由がない限り、同一会期中、議院は同一の案件を再び審議し又は議決することはできません。

この原則を一事不再議の原則といいます。

これは、同一会期中における議院の意思はひとつであるという概念に基づくものです。したがって、会期の独立性、あるいは会期不継続の原則と密接に結びついています。

仮に再議を許せば、同じ問題を蒸し返して際限がなくなり、議院の審議活動を不効率に陥らせるほか、前の議院の議決は、後に覆されかねない暫定的性格となってしまい、議院の最終的意思が会期終了まで確定せず不安定な状態におかれ、議院の議決機関としての機能が損なわれてしまうからです。

よって、一事不再議は、会議体としての議院が行う案件審議に通じる一般原則なのです。

かつて、一事不再議に引っかかりそうになった以下の例がありました。

第2回国会のことですから、致し方なかったのかもしれませんが、何とかうまく乗り切ったことがうかがえる会議録が存在しますので、紹介したいと思います。

[第2回国会昭和23年2月4日 衆議院議院運営委員会]

○衆院議運委員長

それで本案の取扱いは、本日図書館運営委員長の名において運営委員会に提案になるわけでありますが、昨日からの論議の中に、衆参両院同時提案という話も出ております。

これも関係筋から希望されたようでありますが、しかし案の同時提案といつても、どういうぐあいにしてこの効力を発する段階になるか、むずかしい議論もありまして、本日は定刻1時に開いて、参議院は2時だそうでありますから、衆議院を先にして参議院に送付して、事故が起こらないようにしたいという事務当局の希望もありますから、取扱方としては、さよう決定して御異議ありませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

これは、関係筋から衆議院と参議院の両方が同時に同じ案を可決することによって成立させるようにと指示があったことを示すものですが、仮に同時に同じ案を可決し、相互に送ってしまうと、一事不再議の原則に引っかかってしまい、可決することはできません。

苦肉の策として、衆参に同じものを提出したものの、その後は衆議院で先に可決し参議院に送付し、参議院は衆議院送付案を可決して成立させることにより、事なきを得た例です。

最近、ややもすると一事不再議に引っかかりそうな例を見つけてしまい、それがとても気になる今日この頃です。個人的に、とても悔しいです。

最新の画像もっと見る