俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

リストラ策

2011-01-18 15:51:29 | Weblog
 企業は業績が悪化すると不採算部門を縮小・廃止する。赤字部門が減れば収支は改善される筈だが、奇妙なことに更に悪化する。なぜか?営業所や工場を閉鎖しても人は残るからだ。赤字部門の閉鎖は余剰人員の増加を招く。全く単純な話だがこのことに気付いていない経営者が少なくないようだ。
 ある小売店チェーンが不採算店を閉めれば物件費は減る。しかし人件費は殆んどそのままで収入が減る。これで収支が改善する筈が無い。閉めっぱなしにするのではなく新しい店舗を出店するスクラップ・アンド・ビルドの戦略が必要だ。
 営業所の閉鎖は他の営業所に勤務する従業員に対する脅しとしては有効だ。「収支を改善しなければポストを失うぞ」と脅迫された従業員はサービス残業や休日出勤をしてでも人件費を削って収支改善を図る。このことによって一時的には収支が改善されるがこれは全く一時凌ぎでしかない。
 逆に成長中の企業はどんどん営業所や工場を増やす。拡大策が好循環を生む。
 かつて、そごうという百貨店が快進撃を続けた時期があった。水島社長の浮動担保理論に基づき店舗を担保にして新店舗を作るという自転車操業のようなやり方で業容を拡大した。業容を拡大し続けていれば内部問題は表面化しない。日本の高度経済成長期や国内問題を誤魔化すためにも経済成長を続けざるを得ない現代の中国のようなものだ。
 事業縮小はその逆だ。縮小すればするほど内部矛盾が露呈する。日産のゴーン社長以来、事業縮小が肯定されているが、これが何を招くかよく考える必要がある。事業拡大が雇用に繋がるのとは逆に、事業縮小は必然的にクビ切り策に繋がる。

与謝野馨大臣

2011-01-18 15:33:50 | Weblog
 与謝野馨氏が菅内閣の経済財政大臣に就任した。自民党側はなぜあんな死に体内閣にと思っているだろうし、民主党側は小沢グループを差し置いて割り込んだ外様大臣と思っているだろう。どちらからも良く思われていない。
 自民党は民主党政権が失政を重ねるたびに大喜びをしている。国家財政も史上最悪の状態だ。内憂外患を抱えた菅内閣は近々崩壊して政権奪還は時間の問題だと思っているだろう。
 党利党略から考えればそれでも良かろう。与謝野氏は裏切り者だ。しかしちょっと待って欲しい。もし船が2隻あって民主党と自民党が1隻ずつ持っているのなら敵の失敗は味方の利益に繋がる。ところが日本という船は1隻しか無い。民主党が船をボロボロにしてしまったら自民党はそのオンボロ船の舵を取らねばならない。自民党は権力を奪い返して満足なのかも知れないが、迷惑を蒙るのは国民だ。
 氏はそれを座視できなかったのではないだろうか。現在の危機は民主党内閣の危機ではなく日本の危機だと思ったから孤立無援の状態に陥る危険を冒してでも入閣したのではないだろうか。
 与謝野氏は与謝野鉄幹・晶子夫妻の孫だ。政治家としての利害よりも詩人の末裔としての倫理がこの無謀な行動へと駆り立てたのではないかとも思える。
 氏の就任の本音は「民主党がバラ撒き政策を続ければこの国の財政は破綻する」という思いではないだろうか。しかし民主党内閣の一員としてそんなことは言えない。氏の答弁の歯切れが悪いのはこんな事情からだろう。
 これは過大評価かも知れない。ただ単に政治の中枢から離れていることに耐えられなかっただけなのかも知れない。

民営化

2011-01-18 15:17:57 | Weblog
 イギリスでは水道事業の90%が民営化されてその結果水道料金は平均60%も値上げされたそうだ。なぜ民営化がこんな酷い結果を招いたのだろうか。
 無駄の多い公営事業が民営化されれば無駄な支出が削減されるので料金が下がることが期待される。しかし実は民営化によって料金が下がる訳ではない。民間企業は1円でも多く儲けようと血眼になっている。民間企業とは利益を得るための組織だ。儲けるための組織に任せたら料金が上がることはあっても下がることは期待できない。
 しかし実際には民営化を通じて料金が下がった例は沢山ある。これは競争原理が働くからだ。複数の企業が切磋琢磨をするから価格競争が生じそれを勝ち抜くために仕組みが見直されて合理化が推進される。
 つまり民営化が料金値下げを生むのではなく、競争が料金を値下げさせる。競合他社に負けないために知恵を絞るからコストが削減される。
 競争の無い民間企業はどうしているか。印鑑業界が典型例だ。印鑑という日本独特の商品は海外の企業と競争する必要が無いから価格が高止まりしている。競争の乏しい業界では独占・寡占の弊害が出て価格が高くなる。
 消費者が自由に比較購買できる商品とは違って、水道のようなインフラ事業は自由競争の原理が働かない。独占事業になれば価格は高騰する。
 安易な民営化は国益(国民益)に背く。大切なのは民営化するということではなく、供給者側での自由な競争と利用者側での自由な選択が保証されるということだ。