俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

歌唱賞

2011-01-14 15:41:37 | Weblog
 歌手にとって歌唱賞が最も名誉ある賞だろう。歌手としての能力が評価された賞だからだ。
 ところが昨年の日本レコード大賞は一体何だろうか。最優秀歌唱賞に近藤真彦氏が選ばれた。失礼ながら近藤氏は下手な歌手だ。歌手として下手なレベルではなく素人に混じっても並以下のレベルだ。そんな歌手がなぜ最優秀歌唱賞に選ばれたのか。ジャニーズ事務所の圧力とテレビ局の迎合以外にはあり得ない。これは金正日にノーベル平和賞を与えるような茶番劇だ。
 日本の芸能界は常に大手プロダクションが大きな権力を握っている。古くはナベプロ(渡辺プロダクション)であり、一時期はホリプロであり、現在はジャニーズ事務所だ。
 人気タレントを多く抱える大手プロダクションは陰に陽にテレビ局に圧力を掛ける。多分、新聞社や出版社にも圧力を掛けてスキャンダルや犯罪を揉み消していることだろう。大手プロダクションに所属するメリットは大きいから有望な若手が集まって更に強力になる。
 日本レコード大賞の権威は地に堕ちた。ジャニーズ事務所の取締役という理由で下手な歌手に歌唱賞を与えることは馬を鹿と言いくるめるようなものだ。多分日本人の半分以上は馬と鹿を識別できるだろう。

2011-01-14 15:29:46 | Weblog
 古臭い言い方だが私は自分の徳を磨くことに努めたい。
 個人こそ万物の尺度だ。ある物が美しいかどうかは個人が感じることであって社会が決めることではない。個人にとって重要なのは主観的事実であって客観的事実ではない。本人がどれほど恵まれた境遇にいようとも本人が不幸と感じているなら不幸であるということが事実になる。
 個人の心の中には多くの不純物が混じっている。社会によって教え込まれた常識や誰かによって植え付けられた偏見などが自分の心の一部になっている。これらを識別することによって本来の心が取り戻せる筈だ。
 他人を改善することは難しい。そんな小さな親切は大きなお世話でしかない。しかし自分を改善することは自分一人の意思でできる。
 他人の心を豊かにすることも難しい。しかし自分の心を豊かにすることは可能だ。心が豊かになれば世界の見え方も変わる。多分従来以上に豊かな世界が見えることになるだろう。
 幸いなことに日本は豊かな国だ。我々はミャンマーやハイチに住んでいる訳ではない。たとえ年金生活者であろうともそれらの国の上流階層の人々以上に経済的にも環境的にも恵まれているだろう。
 現状を是認する気は無いが、些細な幸せをちゃんと評価することを怠りたくない。

薬のリスク(3)

2011-01-14 15:11:26 | Weblog
 7日に東京と大阪の地裁で和解勧告が出されたイレッサ訴訟は薬害とは言い難い事件だ。もしそれが有害なだけの薬なら今も年間10,000人以上の患者に投与されている筈が無い。強い薬効を持ちながら強い副作用を伴う薬を使うかどうかという究極の選択だ。
 この肺癌治療薬イレッサは世界に先駆けて日本で承認された。新薬の承認が欧米より2年送れると言われる日本の厚生労働省が早期に承認したのは顕著な薬効が認められたからだろう。
 しかしその後が頂けない。どういう訳か重い副作用の無い夢の新薬として安易に使われて800人以上が死亡した。
 抗癌剤が重い副作用を伴うことは常識だ。医師も患者も抗癌剤の使用に対しては細心の注意を払う。そこにローリスク・ハイリターンと言われる特効薬が現れれば誰もが飛び付くのは当然のことだ。
 多分この薬は何千人あるいは何万人の命を救っただろう。薬とは人体に異常反応を起こさせる毒性物質なのだから、良く効く薬は副作用も大きい。メリットとデメリットを秤に掛けるしか無い。
 命に関わる病気に罹った人の多くは座して死を待つよりは大きな危険を冒してでもあらゆる可能性に賭けるだろう。その場合は副作用の危険性が高くてもよく効く薬が良い薬だ。
 厚生労働省が萎縮することを私は最も危惧する。「触らぬ神に祟り無し」とばかりに承認を遅らせていれば救える命が救えなくなる。ノーリスク・ハイリターンが理想だがそれはあり得ないのだから、ハイリスク・ハイリターンを避けて通ることはできない。安全だけど効果が乏しいローリスク・ローリターンの薬だけが求められている訳ではない。重病患者には自分の運命を選択する権利がある筈だ。