俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

インフォームド・コンセント

2008-10-13 10:31:23 | Weblog
 昨今、外科医に対してインフォームド・コンセントが義務付けられているが、内科医のインフォームド・コンセントこそ必要なのではないだろうか。
 しつこく書くが薬は毒物だ。デメリットよりもメリットのほうが大きいから薬として認められているだけで本質は毒物だ。
 毒物を処方するならその危険性を告知する義務がある。なぜ内科医は処方責任が問われないのだろうか。
 私は現在の外科医・小児科医・産婦人科医に対する責任追及は「行き過ぎ」だと思っている。マスコミは無責任なマッチポンプだ。医療事故を騒ぎ立てて、それが招いた産婦人科医などの不足を今度は「医療崩壊」と騒ぐ。医療崩壊を招いた張本人だという自覚は全く無い。
 一方、患者を薬漬けにして儲ける内科医の責任は驚くほど軽い。悪いのはメーカーと厚生労働省だけとされている。
 内科医は患者に対して薬のリスクを説明する責任がある。「煙草をやめろ」と言うよりも、その何百倍も危険な薬に依存することをやめるように患者に説明すべきだ。
 患者を薬漬けにすることで儲けが増える医療・保険制度に問題がある。薬漬けにされて健康を損なった被害者が告訴するしかないのだろうか?こういう問題こそマスコミが健全に機能して貰いたいものだ。製薬メーカーの圧力があるのならせめてNHKだけでも行動を起こして欲しいものだ。

潜在的犯罪者

2008-10-13 10:17:02 | Weblog
 凶悪な犯罪が起こるたびにマスコミは「なぜこんな犯罪が起こるのか?」と問う。私は全く逆に「なぜこの犯罪は日常的に起こらずに済んでいるのか?」と考えてしまう。人間は自分で思っている以上に犯罪傾向を持っている。
 「もし人間が一睨みで人を殺せるなら町は死体で溢れるだろう」と言ったのは多分ゲーテだったと思うが、充分な抑止力が働かないなら人はすぐに犯罪者になってしまう。
 ドストエフスキーの「悪霊」のスタヴローギンは陵辱した少女が自殺しようとしていることに気付きながら見殺しにしたことに対して「これは殺人と同じだ」と悩んだ。このテーマはドストエフスキーがしつこく書いており「カラマーゾフの兄弟」のイワンも、父が殺されるかも知れないと思いながら放置したことから「自分こそ本当の犯人だ」と主張する。他に初期の作品の「主婦」でも同じテーマが語られる。
 もし誰かを憎んでその人が交通事故に会ったことを大喜びするなら、彼は潜在的犯罪者だ。
 自分では手を下さずに他人の不幸を願う者と、自分で手を下して犯罪者として処罰される者との差は意外なほど小さいように思われる。
 伊藤博文を暗殺した安重根は韓国では今でも英雄扱いされているらしい。世論があと押しをしてくれるなら罪悪感を持たずに犯罪者になる。

枝里子のパズル

2008-10-13 10:03:01 | Weblog
 人間の脳は正解のある設問を好む。正解が無いか正解らしきものが多数存在する設問を好まない。この性質は試験制度を通じて補強される。たとえ低レベルであろうとも唯一の答が見つかるほうが脳にとっては快適なようだ。そのため難しい問題は考えたがらず易しい問題だけに取り組もうとする。その結果、重要だが難しい問題は放置されてしまう。
 こんな悪い癖が付かないようにかどうかよく分からないが私はパズルを愛好している。パズルは決して重要なテーマを扱う訳ではない。しかし偏見に捕らわれないことや発想の転換をもたらす非常に高度な知恵の遊びだと思っている。
 私が一番好きなパズルを紹介する。
 ある所に嘘つき村と正直村がある。嘘つき村の住民は常に嘘をつき、正直村の人は常に正直だ。Y字路の左右にこの2つの村がある。たまたまどちらかの村の住人が片側から歩いて来た。このどちらの村の住人か分からない人にたった1つの短い質問をして正直村へ行きたい。何と質問すれば良いか?
 実はこのパズルはタレントの楠田枝里子さんに教わった。彼女が東京理科大学の学生で、まだアナウンサーになる前のことだ。このパズルは10年ぐらい前まではパズルの本に取り上げられることは全く無かったから多分、東京理科大の学者か学生が作ったものだろう。
 私がこのパズルを解いたので彼女は「解いた人は初めて」と言って驚いた。その後私も多くの人にこのパズルを出したが誰も解けなかった。
 あなたは解けただろうか?答を見る前にもう1度よく考えて欲しい。
 答は「あなたの村はどっちですか?」だ。
 余りにもシンプルな答に誰もが驚くだろう。脳を活性化するためには簡単な知的作業をするよりは、推理小説やパズルなどの高度な知的作業のほうが有効だと私は思っている。