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20220805 肥料の価格高騰についてその2

2022-08-08 00:35:59 | 食・農業

改革・創造みらい「株式会社JAアグリエール長野」視察

 

■JAアグリエール長野

(会社概況)

・平成22年「株式会社くみあい運輸」と「長野県農協肥料株式会社」が合併し、「株式会社JAアグリエール」が発足した。主に運送事業と肥料の製造販売事業を行っている。

(肥料事業部)

・BB肥料(Bulk Blending=粒状の原料を2種類以上、化学反応を伴わず、物理的に混合した肥料)を、令和3年実績で36,825t出荷している。

・アグリエールの機械=マゼッタでは、20種類の肥料を配合することができる。有機質のNPK(窒素・リン酸・カリ)、速効性NPK,肥効調節NPK,緩効性NPK,土づくり肥料、微量要素(苦土・マンガン・ホウ素など)を混合している。

・BB肥料は、①地域の土壌・作物に適した経済的な肥料、②施肥の省力化ができる、③環境にやさしい、④土づくり、⑤きめ細かなニーズ(わたしの肥料)に対応

(土壌診断事業)

・高品質な農産物を生産し、施肥コスト削減することができる。

・県下14JAより有料で分析を受託している。

 

■JA全農長野のお話

(1)主原料の調達

①輸入の規模と現状

・日本で肥料製造に使う主要原料は海外からの輸入に依存。2021年輸入量は尿素30万t、リン安50万t、塩化加里50万t。

・主要輸出国である中国やロシアが輸出量を制限、ロシアのウクライナ侵攻により世界的に肥料の需給圧迫への危機感が一層高まっている。

・全農は、尿素はマレーシア、塩化加里のカナダなどからの輸入を継続しながら、リン安は中国からモロッコへ輸入先をシフトするなどして例年並みの原料を確保する方針。

②国内生産原料 略

 

(2)主要原料の国際市況

<全般>ロシアのウクライナ侵攻により、肥料の国際市況は再び急騰しており、特に欧米における市況上昇が顕著。

・尿 素 2021年2月360ドル/t→2022年2月980ドル/t

・リン安 2021年2月500ドル/t→2022年2月900ドル/t

・塩化加里 2021年2月260ドル/t→2022年2月1000ドル/t

*ロシア・ベラルーシで世界の輸出量の4割を占めている。

 

(3)輸入先変更による掛かり増し

①輸送費:中国やロシアからの小型船輸送から、遠隔地からの大型船輸送となることで、日本到着後、港湾からメーカー工場への直送ができず、国内輸送コストが高くなっている。

<例>中国60~70ドル/t→モロッコ140ドル~150ドル/t

<国内輸送>数千円~1万円/t増加

②保管料:早めの原料確保が必要となり、国内の港湾倉庫での保管手数料が増加している。1トン当たり1500円~2000円程度増加

*国の原料調達支援事業費100億円により4~10月期の秋肥は見込んで農家の負担が増えないように価格設定している。

 

(4)国内の肥料流通

・日本国内の複合肥料(国内生産品)の出荷量は、年間180万t。全国では秋肥40%春肥60%だが、長野県内では秋肥23%春肥77%。

 

(5)秋肥の肥料化価格 全農5月31日発表

・複合肥料で、春肥比較で55%の上昇。

 

<当面の課題・要望>

 海外からの化学肥料の原料がストップするということではない。中国、ロシア、ベラルーシからの輸入が減る分、他の国へ輸入を求めている。そのため原料価格の高騰や輸送・保管コストが増加し、肥料価格が高騰している。

 問題は、肥料価格の高騰に見合った小売価格への転化ができないこと。朝日村では現在生産調整に入っており畑でレタスを潰している。野菜価格安定対策基金では再生産費が出ない。*170代以上の農家では、これ以上コストがあがれば利益が出ないことから農業をやめる人が出てくる。日本における食糧危機はそのような意味でとらえる必要がある。

 朝日村の若手農家は、高原野菜から他の付加価値の高い農産物への転換を検討している。あるいは、減化学肥料・減農薬による環境にやさしい農業や有機農業への転換を大胆にすすめ、付加価値を消費者に認めてもらい価格に反映させるなどの手立てが必要。

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