こんにちは「中川ひろじ」です。

みんなのお困りごとが私のしごと

そうだったのかTPP24のギモン Q13,遺伝子組み換え(GM)表示はなくならないのでは?

2016-10-26 14:45:46 | TPPと私たちの食・農・くらし

A13 表示はなくならなくても輸入は増えます

 遺伝子組み換え(GM)表示がすぐになくなることはありませんが、今の日本の表示は不十分です。より厳しい義務表示はできなくなります。
 現在、日本で流通するGM作物は大豆、とうもろこし、菜種、綿実で、これらを使った食品には「大豆(遺伝子組み換え)」などと表示することになっていますが、これを積極的に書きたがる企業はいません。GMと非GMを分別していない(混ざっている)場合は「不分別」と表示することになっているので、実際にはGMを使っているのに関わらず「遺伝子組み換え使用」と書く必要がないという、甘いルールなのです。また、油やしょうゆなど加工度が高いものは表示義務がないなど、抜け道がたくさんあります。
 こうしたなか、消費者からはより厳格な義務表示を求める動きもあります。しかし、TPPでそれはできなくなるでしょう。TPP協定の第8章「貿易の技術的障害(TBT)」には、各国が食品表示のルールを作る際の規定があり、「義務表示」など強制力のある表示を行う場合は、輸出国やGM企業なども利害関係者として関与できる仕組みがあり、必ず反対してくるからです。
 今後GMは、アメリカで承認され話題となったサケなど動物にも広がります。そうしたものに表示義務を課すことも難しくなるでしょう。
 さらに、未承認のGM食品・穀物がわずかに(5%以上)混入していた場合、「違法だから」とアメリカなど輸出国に送り返すことができず、「まず協議する」というルールも作られました。それらを日本が早く合法化するよう、輸出国が要求することも可能になります。日本は、ますます遺伝子組み換え大国への道を突き進むことになるでしょう。(山浦康明)

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そうだったのかTPP24のギモン Q12、国産表示があれば心配いらないのでは?

2016-10-26 14:43:14 | TPPと私たちの食・農・くらし

A12 アメリカでは牛肉の国産表示が禁止されました。

 じつは、アメリカではこれまで、国内法で牛肉や豚肉の原産国表示が義務付けられていました。米国民はどうしても国産肉を買うため、カナダやメキシコはそのぶん、自国の牛肉が売れなくなります。これは輸入肉に対する差別であり、公平な自由貿易を定めたWTOルールに違反するとして、カナダとメキシコはパネル(紛争解決のための委員会)に訴えました。
 2015年5月、パネルの上級審は、「必要とされる記載を超える負担のある表示」、つまり不当な貿易障壁に当たるとして、訴えを認めたのです。アメリカは敗訴し、原産国表示を廃止しなければならなくなりました。
 WTOの判断の元となった規定は、TPP協定の第8章「貿易の技術的障害(TBT)」にも準用されています。つまり日本の農産物も、原産国の表示ができなくなる可能性があることを意味しています。
 産地の表示ができればいいのでは、と考える方もいるかもしれませんが、それも難しくなるかもしれません。第18章「知的財産」では、地理
的表示が「一般名称として日常の言語の中で通例として用いられる言語」(例えば、「新潟県産こしひかり」や「宮崎県産マンゴー」などが考えられる)だと、利害関係者から表示の取り消しを求められる可能性があります。
 また、第8章の附属書にも、食品の包装の表示は「正当な目的で必要なものに限る」「正当な商業的利益が保護されること」とされています。こうしたことから、国産表示や産地表示が海外の利害関係者に不当であるとして訴えられ、日本が敗訴することは十分にあり得るのです。(山田正彦)

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そうだったのかTPP24のギモン Q10 漁業にも影響はあるの? Q11 林業は自由化されているから影響ないのでは?

2016-10-26 14:23:37 | TPPと私たちの食・農・くらし

A10 漁業補助金が出なくなる恐れがあります。

TPPは農業の問題としか考えていない人が多く、漁業者からも不安視する声は聞かれません。これまで日本は、漁港の整備や燃料に補助金を交付したり、漁船を造るために低利な融資を行ったりすることで、沿岸の零細な漁民をかろうじて守ってきました。
 ところがTPP協定の第20章「環境」では、「濫獲(乱獲)や過剰な漁獲能力に寄与する補助金」を規制し、削減・撤廃しなければなりません。政府は、日本は過剰な漁獲に当たらないので、「補助金はなくならない」と説明しています。しかし濫獲とは、「最大持続生産量(総量を減らすことなく漁獲できる最大量)を維持する水準」と定義されており、日本はアジやサバ、イカ、サンマなどを除いて、過剰な漁獲とされる可能性があります。しかもその判断は、国際機関やTPPの小委員会で行われます。参加国のなかに、伝統的な沿岸漁業に理解を示す国は見当たりません。
 もう一つの懸念は、外資系水産会社が漁業権に入札できるようになることです。第10章「国境を越えるサービス」の附属書では、例外は「漁業への投資、または漁業に関わるサービス」だけであり、「漁業」そのものは守られていないと考えられます。イギリスがEUを離脱したのは、沿岸の漁業が外資系企業に荒らされたのも理由の一つだったと報じられています。
 これまで日本の漁業は、いわばセーフガードともいえるIQ制度(輸入上限を定め、それ以上の輸入を禁じる制度)により維持されてきましたが、これも廃止されます。関税も、昆布を除いて即時撤廃または16年かけて撤廃です。このままではひどい打撃を受けるかもしれません。(山田正彦)

 

A11 国産材利用の流れに逆行します。

 たしかに丸太の関税は1964年にゼロになっており、合板の関税も高いもので10%と、すでに自由化は進んでいます。その結果、安い輸入材に押され、2002年には木材の自給率が18.2%まで下がってしまいました。
 しかし、国際的な森林資源や環境保全の動きで丸太の輸入が難しくなってきたことや、戦後植林した国内の森林が成長し、ちょうど利用できる時期になってきたこと、さらには国産材の利用を広げようと振興策が進められていることを受け、ここ数年で自給率は上昇。2014年には31%にまで回復しています。
 TPPでは、今残っている合板などの関税も長くても16年で撤廃されます。そうなれば、合板などの輸入がさらに増え、せっかく回復してきた自給率がまた下がってしまいます。国内の山林が荒れたり、国内外の環境に悪影響を与えたりする心配もあります。
 政府は、木材加工施設の大規模化やセーフガードで影響を防ぐと説明しますが、輸入相手国第3位のアメリカに対してセーフガードはなく、カナダとは4年後にセーフガードの存続自体を再検討することになっています。
 また、地方自治体などで木材の地産地消のために進められている地域材の利用振興策は、「輸入材を差別するもの」としてアメリカなどの企業・投資家からISDS条項で訴えられかねません。
 林業は、地域経済の再生や環境を守るうえでも、今後の日本にとって大切な分野です。しっかりと着目しなければなりません。(坂口正明)

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そうだったのかTPP24のギモン Q9,農産物は例外があるから守られたのでは?

2016-10-26 14:18:03 | TPPと私たちの食・農・くらし

A9 手をつけていない品目がないことを政府も認めました。

 守られたものなど一つもありません。TPPでは、これまでのFTAと異なり、関税の撤廃・削減をしない「除外」や「再協議」の規定が存在せず、すべての農産物が関税撤廃の対象となります。
 日本の農産物のうち高関税のものは、重要5品目(米、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖)などごく一部にすぎません。これらの重要農産物は、地域や国土の保全、国民生活に大きな影響を与えるため、TPPに関する国会決議は、関税の撤廃・削減をしないことを求めていたのです。しかし、政府はこの決議に反し、重要5品目の29%(170品目)で関税撤廃に合意しました。野党が「無傷のものはいくつあるか」と追及すると、政府は、税率を維持したとするものも含め、すべての品目に手をつけたことも認めました。重要5品目以外では、じつに98%の品目で撤廃されます。
 政府が「例外」とする、即時の撤廃を免れたものには、さまざまな悪条件を押し付けられました。牛・豚肉の関税は大幅に引き下げられ、輸入肉との価格差を考慮すれば実質ゼロで壊滅的な影響を受けます。米、麦、乳製品、砂糖については輸入枠が新設されます。日本は現在、水田面積の4割で減反しながら、WTOの下で年間77万トンの米を輸入していますが、TPPで輸入枠がさらに8万トン近く増えます。輸入が急増した際に関税を一時的に引き上げるセーフガードも発動が著しく難しく、すべて期限付きです。
 さらにとどめを刺すのが、日本だけが農産物輸出国5か国と約束した、発効7年後の見直し協議です。5か国の平均関税撤廃率は99.8%。日本がさらに厳しい譲歩を強いられるのは必至です。(岡崎衆史)

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そうだったのかTPP24のギモン Q8,じゃあ、TPPはどうやったら止められるの?

2016-10-26 13:41:11 | TPPと私たちの食・農・くらし

A8 日米が批准しなければTPPは発効しません。

 TPP協定は、全参加国が2年以内に議会承認など国内手続きを終えられない場合、国内総生産(GDP)の合計が85%以上を占める6か国以上が合意すれば、発効することになっています。このこと自体、GDPが重視された経済大国優先のルールといえます。
 TPP参加国ではアメリカと日本がGDPの8割近くを占めているため、両国とも批准しなければ発効できません。その意味では、日本はTPP発効の鍵を握ります。日本が批准しなければ、アメリカの結果を待つことなく、その時点でTPPは破棄となるのです。
 アメリカでは大統領選を控えTPP反対の声がかつてないほど高まっており、批准の見通しはまったく立っていません。その他の国は、2016年2月の署名後は国民への説明や影響試算などを行っており、またアメリカの批准が見通せない中で早期批准をする必要がないため、2016年8月現在で関連法まで含めて完全に批准した国はありません。
 こうした状況のなか、4月の国会、そして秋からの臨時国会で拙速に批准を進めようとする日本の姿は極めて異常です。十分な説明もなされないまま、批准の手続きを進めさせてはなりません。
 アメリカとEUの貿易協定(TTIP)や、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などのメガFTAも、交渉が大幅に遅れています。各国の異なる
状況を無視して企業や投資家に有利なルールを押し付けようとする交渉には矛盾と無理があり、また途上国政府や市民社会が強く反発していることが理由です。日本でも、いのちや暮らし、民主主義の観点からも、「TPPはいらない!」という声を上げ続けることが大切です。(内田聖子)

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そうだったのかTPP24のギモン Q7、政府の試算ではメリットもあると聞いたけど?

2016-10-26 13:37:50 | TPPと私たちの食・農・くらし

A7 恣意的な数字操作による試算といわざるをえません。

日本政府が2015年12月に出した影響試算によると、TPPの発効後10~20年でGDPは2.59%(13.6兆円)上昇、雇用は79.5万人も増えるとしています。2013年の試算に比べると4倍以上もプラスの効果が増えました。
 この試算の前提は、❶輸出入の拡大によって貿易開放度が上昇する、❷生産性の上昇によって賃金・労働供給が増える、❸所得の向上によって貯蓄・投資が増えて生産力が拡大する、というものです。しかし日本経済は、労働コストを下げることで生産性を上げてきました。自由貿易がさらに進めば、労働コストをさらに下げるしかなく、無理のある前提です。
 米タフツ大学が2016年1月に発表した、より現実的な試算では、日本はTPPの発効後10年でGDPが0.12%減少、雇用は7.4万人失われると分析。日本政府とは真逆の結果となりました。この分析に携わった経済学者のジョモ・K・スンダラム氏は、2016年5月の来日時に「日本政府の試算は驚くほど楽観的」と指摘します。「どの分野で雇用が80万人も増えるのか?」と質問すると、政府の担当者は「どの分野で雇用が増えるかという詳しい試算はない」と答えました。
 また、政府の試算は、農業への影響を過小評価しています。2013年の試算では4兆円の減少だったのが、2015年には1,500億円の減少と、20分の1以下に縮小。「対策をするから影響はない」というのが政府の主張ですが、影響額を出す前に対策費を入れ込むとは本末転倒です。東京大学の鈴木宣弘教授の試算では、農林水産業の減少額は1.6兆円にも上ります。
 このように、モデルや前提が変われば、試算の結果はいかようにも変わります。貿易を推進する立場にある米国政府の国際貿易委員会(ITC)の報告でも、「TPPによる経済効果はほとんどない」という結果が明らかになっています。日本政府の試算を鵜呑みにするのではなく、第三者機関や研究者による冷静な分析も踏まえた議論が必要です。(内田聖子)

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そうだったのかTPP24のギモン Q6,交渉過程が秘密なのは、外交だから仕方ないのでは?

2016-10-26 13:35:13 | TPPと私たちの食・農・くらし

A6 いまだかつてない秘密主義です。民主主義に反します。

 TPP交渉は、異常ともいえる秘密交渉が貫かれてきました。交渉参加前には「秘密を守ります」と約束する保秘契約書へのサインが求められ、交渉中は国民はもちろん、与党の国会議員でさえ協定文案を見ることができませんでした。一方で、アメリカの大企業やロビイストたち約500人は、「貿易アドバイザー制度」を通じて自分たちの要求を協定文に盛り込んできたのです。
 秘密主義の背景にはアメリカの意向が強くあります。WTO(世界貿易機関)や他のFTAと同じレベルで国民や業界団体、市民社会に情報を開示すれば、多様な意見が出てきて交渉がまとまらない、だから今後は秘密にする、というのがアメリカの考えでした。以降、多くの貿易交渉で秘密交渉がスタンダードになりつつあります。
 大筋合意後、TPP協定文は公開されましたが、日本語に訳されたものは3分の1程度。交渉の過程を記載した文書は発効後も4年間は秘密とされています。2016年4月のTPP国会批准審議で、野党議員が甘利氏と米国フロマン氏の交渉内容を情報開示請求したところ、出てきた文書は「真っ黒塗り」。政府は「外交だから仕方ない」と答えていますが、これまで日本が行なってきた貿易交渉の中でTPPほど秘密主義の協定はありません。
 2015年3月、野党議員が「TPPのように『秘密保持契約』に日本がサインをした交渉は過去あったのか」と質問すると、外務省の斎木尚子経済局長は「TPP以外に例はない」と答えています。日本はどんな交渉をして、何を得て、何を失ったのか? 国民の様々な疑問に対し、政府は答える責任があります。
 「知る権利」を奪い、民主主義の根本を揺るがすTPPの秘密主義を、改めて問われなければなりません。(内田聖子)

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そうだったのかTPP24のギモン Q5,アメリカの大統領候補も反対なんでしょ?

2016-10-26 13:31:44 | TPPと私たちの食・農・くらし

A5 さらなる要求を押しつけられるかもしれません。

 確かに、アメリカ大統領選の候補者であるヒラリー・クリントン(民主党)もドナルド・トランプ(共和党)もTPPに反対しています。背景には、アメリカ最大規模の労働組合や環境団体などがTPPに反対し民主党議員に強く働きかけていることや、北米自由貿易協定(NAFTA)での雇用喪失の教訓、さらに政府が出したTPP影響試算もほとんど経済効果がなかったことなどがあります。
 しかしどちらが大統領になったとしても、TPPが完全に葬り去られる可能性は五分五分でしょう。クリントンは以前に「再交渉する」とも述べており、トランプも就任後は産業界からの圧力によって完全にTPPを破棄できないかもしれません。再交渉となれば、日本には関税のさらなる引き下げや、畜産農家への補助政策の廃止、保険・共済などの分野でアメリカからさらなる要求を突きつけられる可能性があります。
 再交渉とならなくても、アメリカは「承認手続き」を用いて、署名から発効までの間に相手国の国内法や規制をチェックし、変更を求めてくることも考えられます。アメリカは中南米の国々とのFTAの中で数々の要求を行い、相手国の国内法を変えさせてきたのです。
 さらに、TPP交渉と並行して進んできた日米並行協議も危険です。TPPを再交渉に持ち込まなくても、2国間の交渉でアメリカが日本に求める内容を実現させることができるのです。ここで決めた規制緩和などの内容をTPP発効前に日本が実行してしまえば、TPPがなくなっても元に戻すことはほぼ不可能です。(内田聖子)

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そうだったのかTPP24のギモン Q4、日本のような先進国が訴えられることはないのでは?

2016-10-26 13:21:58 | TPPと私たちの食・農・くらし

A4 訴えられます。訴訟の濫訴防止も役に立ちません

 政府は、これまでの仲裁のように投資受入国が不利にならないよう、濫訴防止の規定を盛り込んだので心配ないといいますが、本当でしょうか。
 北米自由貿易協定(NAFTA)では、「公正かつ衡平な待遇」というあいまいな義務に対する違反が、多くの仲裁判断の根拠になったことへの批判がありました。そのためTPPでは、「公正かつ衡平な待遇」の意味を明確にしたとされます。例えば、「TPPや他の国際協定で違反があったとしても、公正衡平待遇義務の違反には必ずしもならない」とか、「投資家の正当な期待を裏切っただけでは義務違反にはならない」という規定があります。しかし、どうすれば義務違反になるのかという要件は明確にされず、恣意的な認定を防止することになっていません。結局は問題を放置したのです。
 また政府は、環境や健康のための規制はISDSの例外(留保)になるとも説明していますが、そうとはいえません。この規定は、ある規制が「環境、健康その他の規制上の目的に配慮したもの」であっても、投資章のほかの全ての義務をクリアしなければ、例外にはならないというものです。結局、この例外は機能しない、無意味な条項といわざるをえません。
 このように、「日本が訴えられることはない」、「濫訴防止の規定が盛り込まれたので心配ない」というのは誤りです。ISDSで訴えられれば、多額の裁判費用や賠償金を税金で負担することになります。国民の福祉や環境、健康のために制度を作ることを躊躇させかねません。これは「萎縮効果」(chilling effect)と呼ばれ、大きな問題になっています。(三雲崇正)

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そうだったのかTPP24のギモン Q3,ISDS条項って何が問題なの?

2016-10-26 13:01:47 | TPPと私たちの食・農・くらし

A3 企業や投資家から訴えられ、国の主権や人権が奪われます。

 ISDSとは「投資家対国家紛争解決(Investor State Dispute Settlement)」の略で、投資家が相手国の協定違反によって損害を受けたときに、仲裁申立てを行い、損害賠償を求めることができる制度です。わかりやすくいえば、外国企業が相手国の政府を訴えられるようになるということです。
 ISDSが貿易協定に入るようになった1960年代以降、約696件の仲裁申立てが起きましたが、そのほとんどは2000年以降に起きたものです。問題は、公的な裁判所ではなく、私的な仲裁廷で仲裁されるという点です。仲裁人は多国籍企業をクライアントとする弁護士などが担当するケースが多く、訴える側の大企業に有利な判断をしがちなのです。
 特に有力な15人の仲裁人は、これまで公開された投資仲裁の55%に関与し、係争額40億ドル以上の事件の75%に関与していたことが判明しています。このような「仲裁ムラ」にとっての関心事が、公共の利益よりも、顧客である大企業や仲裁ビジネスの繁栄にあることは明らかです。
 例えば、アメリカの大手石油企業「シェブロン」とエクアドル政府との事件では、現地子会社が環境汚染を引き起こしたシェブロンに対し、エクアドル地方裁判所が損害賠償命令を出していました。ところが、仲裁裁判所は、エクアドル政府にこの判決の執行停止を命じたのです。被害を被った地域住民の人権を救済するために、裁判所が損害賠償を命じるのは当然のことですが、仲裁廷はそれが投資協定に違反すると判断したのです。
 この事件では、仲裁裁判所が判決の執行停止をその国の政府に命じたことも問題です。近代国家では三権分立の下、政府は裁判所の判決に従わなければなりません。しかし仲裁裁判所は、その原則を破るようエクアドル政府に命じたのです。ISDSが国家の主権を何重にも侵害することは明らかです。
 このように、その国の民主主義や主権を無視し、社会的弱者を救済することが困難になる点で、ISDSには根本的な問題があるのです。(三雲崇正)

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