核実験失敗の余震つづく

どうやら北の核実験は失敗に終わったようです。
爆発の規模が余りにも小さく、浮遊塵から放射性物質も採取されず、衛星からの電磁波の感知も認められず、米政府関係者も実験失敗の結論に傾いているようです。

それでも、北朝鮮が「核実験を行った」と宣言したことにより、北東アジアの安全保障環境は一変してしまいました。

あの頑迷固陋なノ・ムヒョン韓国大統領も、ついに「包容(太陽)政策の見直し」を宣言しました。中国の国連大使も「懲罰的措置が必要」と異例の制裁決議容認発言を行いました。米国は、国連安保理の強制措置を含め、核・弾道ミサイル関連の物資や技術の禁輸、北朝鮮向け船舶の臨検など憲章第7章に基づく制裁実施を求める決議案を準備。我が国も、さらに厳しい追加的制裁措置を検討しています。

とくに中国の姿勢がこれまでと一変していることは注目に値します。これまでは、北朝鮮のいかなる瀬戸際外交に対しても、同盟関係に基づく北朝鮮の擁護・支援の姿勢を崩しませんでした。7月のミサイル発射の際に国連の制裁決議に最後まで抵抗し続けたことが記憶に新しいと思います。しかし、今回の中国政府の姿勢は、中朝同盟を前提にしたものから明らかに逸脱しているようです。

実験実施直後に中国外務省がこれまでになく強い非難声明を出したことはもちろんですが、なお厳しい制裁には慎重な余地を残している点についても、かつてのような同盟関係にあることが理由ではなく、制裁が強すぎた場合に北朝鮮が崩壊してしまうことに対する「地続きの隣国」としての深刻な懸念の故であることが見て取れます。

北東アジアの戦略環境は、いよいよ北朝鮮の崩壊を視野に入れた新たな段階に入ったことになります。もちろん、「窮鼠の暴発」も可能性として排除できません。すなわち、この事態は、周辺事態安全確保法にいうところの「我が国周辺の地域における我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態」にほかなりません。制裁実施の先に来る事態についての周到な準備と対処の覚悟が必要なことはいうまでもありません。

とはいえ、状況が一直線に悪化するのを防ぐ道がないわけではありません。
それは、米朝間の直接交渉です。

それは、ブッシュ政権の政策を根本的に転換することになります。だから、これは無理!・・・というのが、これまでのセオリーでした。しかし、来月初めに中間選挙を控える米国内の様子は、日に日にブッシュ政権与党の共和党にとって耐え難いものとなってきています。まず大丈夫だろうといわれていた上院の過半数割れまで本気で議論されるようになりました。北朝鮮と取引して結果的に騙されたクリントン政権に代わって6年間、「悪事に報酬は与えない」と一貫して北朝鮮の瀬戸際外交を無視し続けてきたブッシュ政権。しかし、その結果が、核実験です。結局、米国のネグレクト政策は失敗だったのではないか、との非難が高まるも無理はないといえます。

これ以上北朝鮮を放置しておくことは、最悪の結末にいたる一本道です。すなわち、北朝鮮は、核実験を繰り返し、小型化に成功し、弾頭としてミサイルに搭載し・・・。悪夢のシナリオです。ジェームズ・ベーカー元国務長官が指摘するように、北朝鮮と交渉することは決して譲歩を意味するものではありません。検証可能な核開発の放棄を実現するため、制裁を強化しながら相手を真剣な交渉の場に引きずり出すのです。それが可能なのは、米国だけです。日本は同盟国として、ブッシュ政権に直接交渉へと促すべきだと考えます。
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