ムジカの写真帳

世界はキラキラおもちゃ箱・写真館
写真に俳句や短歌を添えてつづります。

きよきくはしめ

2018-01-28 04:19:20 | 短歌





ゐてならぬ きよきくはしめ をればこそ 人は憂き世を 荒し果てつれ





*「くはしめ(美し女)」は文字通り美しい女性のことですね。忘れ去られていた言葉でしたが、わたしたちが発掘して使い始めてから、結構使っている人もいるようです。「美人」というより響きがいいのでしょう。

このように古語辞典は宝の山です。面白い言葉やきれいな言葉がたくさんある。こんな分厚い古語辞典があるのはうれしいことだ。いつでも飛び込んでいろいろなものをさがしてみましょう。

ところで、表題の歌は、ある人の本音を知って詠んだ歌です。今年は喪中でしたが、夫の方針で数少ない身内以外にはそれを知らさなかったので、かなりの年賀状が届きました。そのうちの一枚から、こんな声が聴こえたのです。

美人でいい子のひとなんて、いたらみんなが困るのに、いるのよ。

ふしぎでもなんでもないですね。あなたがたにももうわかる。こんなものにも人の思いがこもり、感覚を注げば、その思いをこめた人の感情も読めるのです。

その年賀状をくれた人を、生前のかのじょはかなり愛していたのだが。その人はこういうことを考えていたわけです。未熟な人だ。きれいなのにまじめでいい人がいたら困るのはみんなではない、自分なのです。自分はそれほどいい子ではないのに、美人ではないからです。

かのじょと自分を比べて、いやな思いをすることもあったらしい。年賀状からはそんな恨みも見えていました。人間というのは嫌らしい。どんなにかひどいことをしてやろう、という気持ちも見えるのです。

なぜ自分が美しくないのか、それはひとえに、自分が何もしてこなかったからなのだが。そんなことを思うのは嫌なのだ。とにかく、なんでもきれいな女のせいにしたいのだ。あんなものがいるから、みなが苦しむのだということにしたいのだ。あんなのがいるのが悪いのだ。それで、なんとかして馬鹿にして、いやなものにしようと、あらゆることをして、結局殺してしまった。

苦いのは、結局きれいな女性たちは何も悪いことをせず、それほど不幸にならずに死んだということだ。

いやなことになって、いやなものになって、世界中に笑われて死ねばいいのに、そうはならなかった。むしろ、自分の方が、きれいな女に嫉妬して、馬鹿なことをしつくした馬鹿として、世界中に笑われ、嫌われている。

哀れなどというものではない。きれいな女性に嫉妬する、きれいではない女性の地獄とはいつもこうなるのです。結局は、自分が一層汚くてみじめなものになるだけなのだ。

そしてまた、きれいな人に嫉妬して、馬鹿なことをする。

もうこの構造がわかったら、その果てしない馬鹿のスパイラルから出てくる努力をしましょう。

悪いのはくはしめではない。しこめのほうなのです。






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