みかんの部屋

自分の趣味(映画・漫画など)に関しての雑記ブログです。

『桃太郎・海の神兵』観ました。

2017-02-03 16:00:00 | 劇場用アニメ
1945年公開・松竹動画研究所制作。 監督:瀬尾光世。 セルBDにて視聴。
2年ほど先に公開された姉妹編『桃太郎の海鷲』同様に、太平洋戦争時に海軍省からの
依頼を受けて国策映画として制作された劇場用アニメです。
その存在については時折り断片的な情報が伝えられるものの、実物をキチンとした形で
観賞するのは中々難しかったのですが、最近になってようやくBD化されたので購入してみました。
これまであまり情報が公にされてこなかったのは、思うに当時の軍国主義を重く想起させられると
いったあたりが原因なのでしょうね。
戦前の国民の一般的な感覚として、積極的に戦争を否定するような空気は少なかったようですが、
実際に戦争に敗けてみると、未曾有の困難が様々に日本中を襲い「もう戦争はこりごりだ」と
意識が変わっていったと思われます。

 
BD『海の神兵』パッケージ。            帰省一番に地元の神社に参拝する海兵たち。

ストーリーというか、内容は当時の兵隊さんの事情が良く伝わるもので、国民はこんな感じで
軍隊と接して暮らしていたんだなあと判ります。
現在の自衛隊は志願制になっていますが、当時は国民皆兵というか問答無用での徴兵制だった
ので、家族や親戚に一人も兵隊さんがいないケースの方がむしろ珍しかったかもしれません。

 
久しぶりに両親の元に帰る。             母親の淹れてくれるお茶はやはり美味しい。

士官学校出の将校とは違い、大半は赤紙一枚で招集された軍曹以下の者。
日々つらい訓練に明け暮れる日常だが、それだけにたまの休暇の嬉しさは無上のものだ。
まずは地元の神社を訪れて参拝(少なくとも建前は)。それからようやくそれぞれの家に。
家族の元で英気を養った後に、再び原隊に帰っていく。

 
南太平洋の重要地に海軍基地を次々につくる。    現地住民の協力で見る間に航空基地ができ上って行く。

太平洋戦争開始以降、各地での快進撃を続け、南太平洋の重要な位置に次々と飛行基地を
設置し続ける帝国海軍。
かつての大艦巨砲の時代は去り、いまや制空権の掌握が勝敗の結果を左右する時代に変わり
少しでも多くの飛行基地建設は至上命題となる時代だ。

 
完成なった基地に入る桃太郎隊。          現地に対する日化政策として日本語の授業。

当時日本はすでに太平洋戦争に突入しており、前作『桃太郎の海鷲』では真珠湾攻撃の大きな
戦果の様子が描かれていた。続いて本作では蘭印(現:インドネシア)での戦いが描かれており、
日本軍は相変わらず華々しい戦果を上げ続けている。
たしかにこんな映画ばかりを観ていたら、子どもに限らず大人だって、永遠に勝ちつづけるかの
ような幻想を抱いても不思議じゃないでしょうね。

 
桃太郎隊長。えらいデブ顔だ(^^;          いよいよ作戦命令が下る。隊長の訓示。

いよいよ重要作戦の命令が下る。訓示を垂れる桃太郎隊長。それにしてもこの隊長はデブ顔だ。
まあ当時は食料が慢性的に逼迫していた時代だから、太っている=まともに食事できている人、
という意味で憧れの対象だったのでしょう。
戦後しばらく男性のお腹の出具合を競うコンテストなんてのがあったのを思いだしますね(^^;
当時お腹の出ている人って現在ほどはいなかったです。腹が出ていると”貫禄がある”とかで
褒められるような風潮でした。いまだと単なるメタボ腹で片付けられてしまいますが(^^;
それに浮世絵(役者絵)という日本伝統の美男美女パターンが合体したのがこのデブ顔の絵に
なっているということでしょう。
BDパッケージの絵はせっかく凛々しい桃太郎なのに....惜しい(^^;

 
はじめは甘言を弄しアジアの国に取入る西洋人。   結局は植民地化して領土を乗っ取る西洋人たち。

西洋列強がアジアの各地域を侵略、アジアの富を吸い上げるパターンが当時は多かった。
それに対抗して”八紘一宇”とか”大東亜共栄圏”といったスローガンを掲げて
アジアから西洋列強の影響を排除するべく日本は立ちあがった....ことに建前はなっている。
もちろん同じアジア人としてアジアの状況をなんとかしなければ、という思いは確かに有った
でしょう。けれど甘い蜜を吸う立場を西洋人にとって代わりたかっただけという面もゼロでは
なかったでしょうね。

 
愈々出撃のとき至る。               蘭印の空に次々に開く桃太郎隊の落下傘。

太平洋戦争当初の日本軍が破竹の勢いだった頃の話のみを映画は語ります。
もっとも負け戦なんかを描くワケにもいかないでしょうけど(^^;
広い意味でこれはアニメ映画と言うよりは戦争映画なので、いくばくか以上の殺刹さは
感じます。ただアニメ(漫画)なので、滑らかな流れも同時に感じられますが。
なにしろ国策映画ですから、迂闊な作り方はできなかったでしょうし
当時のスタッフとしてはこれでぎりぎり精一杯という状況だったのでしょう。
蛇足ながらポパイっぽい敵兵が(ホウレンソウ缶詰が空っぽだったため)力が出ない、と
いったギャグ描写があり、ニヤリとさせられてしまいました(^^;

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