みかんの部屋

自分の趣味(映画・漫画など)に関しての雑記ブログです。

『FOUJITA』観ました。

2016-11-28 16:00:00 | 映画
2015年:日・仏。 監督:小栗康平。 WOWOWからの録画。
戦前のフランスに渡り、その斬新な技法により忽ち大きな評価を得た”FOUJITA”こと藤田嗣治。
まだエコール・ド・パリという言葉が実際に生きていた時代のこと。
絵画の才能を武器に自らの運を切り開こうという若者が各国からパリに集まっていた時代だった。

 
女性の出入りが盛んなフジタ。           作品の制作に向けて入念なデッサン。

作品が評価され、人気者になった彼だったが、女の出入りもまた頻繁だった。
表面的には軽薄を装うフジタ。だが内心では彼なりの信念があった。
そして作品制作となると真剣そのもの。長時間のポーズを勤めるモデルたちもお疲れ気味。

 
夜は盛り場に出て顔を売る。            真夜中の大騒ぎ。それが街の関心と評判を呼ぶ。

夜になれば街の盛り場へ繰り出して遊び回る。人は彼を”お調子者”と呼ぶ。
しかしフジタは気にしない。常に人から噂の的にされ関心を持たれるように自ら仕向ける。
それは画業と同じくらい大切なことだという思いがあるからだ。
いくら良い画を描いていても、話題にもされないような面白味のない人間では
絵も売れない、という理屈なのだった。

 
姉妹の売るドールハウスに目を留める。       丁寧なつくりが気に入ってお買い上げ。

時間のある時には恋人と連れだって蚤の市の冷やかしに出る。
その日はたまたま少女姉妹の店に出ていたドールハウスに目がとまり、
丁寧なつくりが気に入って、買うことにするフジタ。

 
国策に沿い、戦争画の分野に身を置く。       五番めの妻・君代に反物を買ってあげる。

40年のころ、フジタは日本に帰国。本場フランス帰りの著名な画家フジタに
目をつけた軍部から国民の戦意高揚のための戦争画を描くよう依頼がくる。
これに応じてフジタはいずれも100号、200号級の大作をつぎつぎに制作。
観る者(国民)に対するインパクトも大きく、軍部の狙い通りの高い評価を得る。

 
戦争末期。カナモノ供出の風景。          ランスのノートルダム大聖堂に残るフジタの画業。

戦争末期。すでに日本の敗色は濃厚で、口に出さずとも国民の思いは同じだった。
激化した都会の空襲を避け、妻の君代と共に地方に疎開。
そこで日本の里山の深みある美しい風景にフジタは開眼してゆく。
(ここの場面はまるで遠野物語とか宮沢賢治の世界を鮮やかに視覚化したような、
素晴らしく美しい映像の連続。ついウットリと見惚れてしまいましたよ~)

戦後になると、多くの戦争画を制作したことを理由に戦争協力者として集中的に非難を浴びる。
時代の変化とはいえ手のひらを返したような態度に出る者が多く、彼には可なりこたえたようだ。
渡仏の許可が下りると、彼は君代を伴い直ちにパリに向う。以後日本に帰ることは無かった。

画家の半生を描いた映画らしく、画面の美しさは可なりのものと感じました。
ただ特に前半のパリ時代、当然ながらフランス語の会話(日本語字幕)で劇が進んでいきますが、
主役のオダギリジョーの話すフランス語はイマイチ流暢とはいえず、そのため棒セリフに感じられ
ノレませんでした(^^;
(相当にフランス語のレッスンしたんだろうな~ということは良く判りますけど....。)
各エピソード間の有機的なまとまりも今ひとつ。
ただ観ていて詰まらなかったかと問われれば、そういうことではないですね。
本作の画面的美しさもあって興趣が途切れず、退屈は感じなかったです。

『サイの季節』観ました。

2016-11-26 16:00:00 | 映画
2012年:イラク+トルコ合作。 監督:バフマン・ゴバディ。 WOWOWからの録画。
イランの近代史についてあまり知識がないので、本作で描かれている状況を正確に
把握しているかどうかは心もとないのですが....(^^;

 
サヘル氏の出版記念パーティ。           お気に入りの場所を妻と散策。幸せだったころ。

イランの詩人、サデッグ・キャマンガール氏の実体験をもとに構成されたということです。
革命だろうと戦争だろうと、ひとたび混乱の時代になれば、こういった悲惨な目に遭って
しまうケースが多く有るのだろうなという気がします。

サヘル氏は自作の詩を出版。著名人として人に知られ、実父は国軍の大佐。
まずはセレブ階級の人種と言えるだろう。

 
1979年、イランでのイスラム革命。        ホメイニ師を旗頭に政権奪取。

1979年02月。国王による専制政治に反対して、イラン国民によるクーデター
=政権奪還が行われた。
国王との対立から国外に亡命していたホメイニ師が急ぎ帰国、
以後彼は最高指導者の地位につき、国民の精神的支柱として機能。
特権的な階層に属していた高級軍人や高級官僚などがことごとく逮捕され特権を剥奪。
裁判にかけられ重罪の判決を下され投獄の憂き目をみる。
まあ世の中負けてしまえばアレですね~悲惨なものです。

 
一家は国王派と見なされ逮捕~裁判。        理不尽な尋問、そして拷問。

サヘル氏もやはり時代の波から逃れることはできなかった。裁判にかけられ投獄される。
判決理由に政治的な意図をもって作詩をした云々とありますけど、まあ単なる言いがかりですね。
理由なんかどうにでも付けられるものです。
ただしこの場合、ちょっと込み入った経緯がありまして。
かつてサヘル家でお抱え運転手として働いていた男アクバル。サヘル氏の美しい妻ミナに横恋慕。
貞淑な彼女からは拒絶され大旦那からはお仕置きを受け、サヘル家に対して恨みを含む。
この男がイスラム革命の混乱期をうまく泳いで戦闘部隊のリーダーとなり権力をもつに至る。

 
革命隊リーダーは妻を強姦。            30年後。ようやく妻の居所を探しあてるが....。

アクバル自らがサヘル氏を尋問し拷問を指示。一方ミナを獄内で強姦。
後になってミナは双子を出産し、さすがに彼女は出獄を許される。
そして間もなくミナは夫の死亡通知を受け取ることになる。
だが実はサヘル氏は獄内で生きていた。アクバルは偽の墓までつくってミナを騙す。

妻との再会の時まで頑張ると決めたサヘル氏は30年の刑期をつとめ抜いた。
だが彼の精神状態は長年の収監生活のためボロボロになってしまい
半ば抜殻のようだ....。

ハリウッドとは全く違う雰囲気の作劇ですが、こんな映画も偶に観ると凄く新鮮ですね。
また映画の音響ですが、これみよがしな効果は狙ってないと感じます。きちんと役割を
果たしつつさりげなく映画に寄り添う感じで、とても上質な感じを受けました。




「少女は自転車に乗って」観ました。

2015-09-05 19:00:00 | 映画
2012年:サウジアラビア・独。 監督:ハイファ・アル=マンスール。 WOWOWからの録画。
ちょっと一部に肯定できない部分もあるけど....まあ良作の部類だと思います。

 
近所の少年アブダラ。よく一緒に遊ぶ仲。      駈けっこ。

女の子は大人しく家の中で遊びなさいと言われてもどこ吹く風のおてんば少女ワジダ。
いつも幼な馴染みの少年アブダラと一緒に外で遊ぶのが大好き。
(最初の写真の左側は選挙ポスター。近く選挙があるようだ。それにしても立派な髭だなあ)
何かにつけて張りあう二人。駈けっこして負けたアブダラは今度は自転車に乗って
ワジダを追い越す。彼女の方も「自転車を買ったら競争よ」と凹まない。

 
負けたアブダラは自転車に乗って威張る。      ワジダも負けずに言い返す。

だが男の子に自転車を買い与えるのは問題ないが、女の子に自転車を買い与えるような
親はこの国には滅多にいない。
自分の力で何とかするしかないが、子どもには到底無理な金額だ。
しかしワジダは”やる”と決める。その決心は生活を一変させるほどの勢いだ。

 
ステキな自転車。800リヤルもする。         店主に予約?を申し込むワジダ。

しかしちょっとやり過ぎたようだ。
お金にさえなれば手段選ばずで級友たちから小銭を稼いでいたが、
あるとき軽い気持ちで小銭欲しさに級友のデートの手助けをしてしまう。
実際には騒ぐほどのことは何もなかったかもしれない。
だが未婚の男女が会っていたというだけで大きなスキャンダルになる国なのだ。
そうなるとその女性には一生マトモな結婚の口は無くなってしまう。
噂の広がらないうちにと周囲が強引に結婚させてしまう。

 
お母さん、そんなバカな(^^;             コーランの暗誦大会。優勝すると1,000リヤルの賞金。

そのうちにワジダの小銭稼ぎも限界をむかえる。
どうしたものかと考えているとき、近くコーランの暗誦大会があると、校長先生から
知らされる。優勝者には1,000リヤルの賞金が出るのだ。自転車が買える!

これまでイスラムの教えなどにはあまり関心のなかったワジダ。
だが賞金が出るとなると話は全く違ってくる。
それこそ彼女は全身全霊を打ちこみ、必死になって勉強を積み上げてゆく....。 

サウジアラビアという国の様子が垣間見られて興味深かったです。
しかしワジダの小銭作戦は級友たちからは半ば呆れられていたんじゃないかな(^^;

「終戦のエンペラ-」観ました。

2015-03-18 16:00:00 | 映画
2012年:日/米。 監督:ピーター・ウェーバー。 WOWOWからの録画。

これは良い映画ですね。観ていて面白いし観た後も充実感があります。
1945年、日本は敗戦の日を迎える。
米国占領軍は戦後の日本をどのように方向づけていくかという大きな問題があり、
そのためにも天皇の戦争責任の問題について早急に結論を出すべく腐心していた。

まあ有り体に言えば米国の言うことをよく聞く子分として調教するには
どうすべきかということなんでしょうけど(^^;

 
敗戦後、 日本の国土は焦土と化していた。               フェラーズ准将に天皇の戦争責任を調査すべく命じるマッカーサー。

 
占領軍総司令官マッカーサーは日本の再建に関して独自プランを持っていた。

  
近衛元首相に当時天皇に戦争の責任があったかを問う。         一方、フェラーズ准将には開戦前から愛し合う日本女性の存在があった。     
明確な答えは見つからないまま時間だけが過ぎてゆく。
 
彼女の名は "あや" 。 鹿島海軍大将の姪にあたる。           お互いに惹かれあいつつも二人が結ばれることはなかった。

日本社会の「物事の責任を明確に負う人間が誰もいない」という
特性について少々考え込んでしまいました(^^;
その悪い面が大きく出てしまったのが先の大戦だったかと思います。

あとフェラーズ准将とあやとのロマンスですが、やや比重がかかり過ぎて
いるような感じも受けます。
これは多少なりとも事実がベースにあるのかな?
それとも全くのフィクション?
それにしても島田あや役の初音映莉子さん、純和風の美人ですね。

「スノー・ピアサー」観ました。

2015-02-10 14:46:26 | 映画
2013年・韓/米/仏。 監督=ポン・ジュノ。 WOWOWからのBD録画。
人類は地球温暖化をストップさせるために、大気の温度を下げる化学薬品を開発。
ところが実際に薬品を使用した結果、地球は冷凍庫内のような過酷な状態になってしまう。
僅かに生き残った人類は特別な列車を仕立てて走らせる。
極寒の空気から遮断された列車内でのみ、人間は生きていられるのだった。

列車内には厳然とした階級制度が存在し、下層民はまともに人間扱いされない。
あるとき遂に我慢の限界を超えてしまい下層民の反乱が発生。

 
反乱により水システムを占領。ある程度の成果を得る。         更に戦うかどうかで世代により意見が分かれる。

 
奥に進むと植物園やアクアリウムが存在していた。

 
支配層側も体制を整えて反撃に出る。                 戦う人間たちを乗せて列車は極寒の中を走り続ける。

映画がスタートして少ししたら気がつくことですが、
人間たちを満載した列車が走る、というのは一種の比喩ですね。
人類で満杯になっている地球、という意味にとれるでしょう。
そう考えるとこの映画、色々なことがかなり解りやすくなると思います。

ラストは......やっぱり書かない方が良いですかね?(^^;