日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

囲碁の世界における人口知能の発展から想う

2016年04月02日 09時48分21秒 | 日々雑感
 米IT企業グーグル傘下の英グーグル・ディープマインド社が開発したソフトウエア「アルファ碁」が、韓国のイセドル9段と対戦し4勝1敗で勝った。「アルファ碁」は、人口知能を応用したソフトで、過去の棋譜などをもとに自己学習を繰り返し強くなったという。

 人工知能 (AI:Artificial Intelligence )とは、コンピュータを使って、学習・推論・判断など人間の知能のはたらきを人工的に実現したものと定義される。この言葉は1956年に初めて登場したようだ。 この初期のAIの研究は、それまで単なる計算しかできなかったコンピュータが人間のような知的なこともできるのではないかと期待され、AIの春ともいうべき時期を迎えた。しかし、数年もすると、能力の限界が明らかになり1970年代は冬の時代であった。

 1980年代に入り、「エキスパートシステム」が登場した。特定分野に絞られるもののその専門家の知識やノウハウをルール化し、問題が生じた場合にその原因を即座に特定するなど、コンピューターに処理させようというものであり、一部実用にも供された。しかし、人間の知識は膨大であり、コンピュータに知識を教え込む限界が明らかになり、再び冬の時代を迎えた。

 2000年代に入ると、コンピュータ性能の飛躍的な 進歩があり、膨大な知識を高速のコンピューターを使って並列処理させ、統計的な処理によってコンピューター自身にルール生成をさせようという「機械学習」が登場し、再度脚光を浴びるようになった。2012年には、画像認識の分野でトロント大学のHinton教授のグループの「深層学習; Deep Learning」が注目されることになった。これは、人間の脳の構造をソフトウェア的に模倣し、人間が関与せずに学習を進めることを可能としたものであった。

 深層学習とは、専門的には多層構造のニューラルネットワークの機械学習、のことらしいが素人にはまったく理解できない。 チェスや将棋では、次に打つべき手および何手か先をすべて計算することが出来、理詰めで人間に勝つことが出来たが、囲碁は打つ手の選択肢が多く、スーパーコンピュータでも計算し切れなかったそうだ。そこで、アルファ碁は名棋士の対局記録を10万局覚え込み、3千万回もの自己対局で研究を重ねる「深層学習」で経験を磨き、人間を打ち負かしたとのことである。

 コンピュータが人間に勝つのはしばらく先のことと予想されていたが意外に早く実現されてしまった。AIの進化を象徴する画期的な出来事とのことである。学習するAIの今後の応用範囲は広いようだ。この技術により自動車の自動運転が可能になると聞けば、すぐに軍事利用に思い至る。自動運転には、周りの環境を素早く認識し、自分のとるべき行動を決定する技術が必要だ。戦争ロボットの実現がまた一歩進んだことになる。

 AIの軍事利用は末恐ろしいが、文学や芸術への応用はまだ夢がある。公立はこだて未来大学の松原仁教授のプロジェクトチームは、AIで小説を創作したとのことだ。先日行われた報告会では、人工知能を使って書いた4作品を星新一氏にちなんだ文学賞、「星新一賞」に応募したところ、一部が一次選考を通過したと明らかにした。

小説を書く際にはストーリーを考え出す能力と、そのストーリーに沿って文章を書く能力の2つの能力が必要となるそうだ。今回は、ストーリーは人間が与え、星新一氏の約1000作品をコンピュータに学ばせて文章を組み立てたということだ。

 ストーリーは、その小説の面白さの骨格をなすものであるし、その意外性が読者を魅了する。有名作家の作品を全部学習出来たとしても、発想が似たものになり、意外性に欠ける小説となろう。この点、新たなストーリー作りは、人間の創造力そのものであり、深層学習でも無理なような気がする。

そのうち深層学習も限界が明らかになり、人工知能も再び冬の時代を迎えるかも知れない。しかし、人間の知的好奇心は留まることを知らない。AIは、果てしなく進化を続けるに違いないが、人間の創造力には及ばないであろう。
2016.04.02(犬賀 大好-221)


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