日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

汚染水の海洋放出にはまず政府への信頼回復が必要

2020年11月04日 09時04分22秒 | 日々雑感
 福島第一原発では東日本大震災の時、津波で原子炉が破損し、溶け落ちた核燃料を冷やす為の水や原子炉建屋に外部から流入する地下水などが混ざった汚染水が現在も1日に約140トン増え続けている。東電はこれを多核種除去設備(ALPS)などで放射性物質を除去処理して第一原発敷地内に設けられたタンクに一時保管しており、既に約120万トン溜まっているそうだ。

 東電の今後のタンク増設計画では2022年夏ごろに満杯になると見込まれている。この溜まった汚染水の今後の処分法については、海か大気中へ放出することが考えられ、どちらにするか今夏ごろが判断の期限とみられていた。どちらにするにしても、準備に2年程度はかかると見られるからである。

 さて、ALPSでも除去できない放射性物質としてトリチウムがあるが、この物質は宇宙から飛んでくる宇宙線などによって自然界でも生成されるため、大気中の水蒸気や雨水、海水、それに水道水にも含まれ、私たちの体内にも微量のトリチウムが常に取り込まれているそうだ。

 また、国内外の原子力発電所では発生したトリチウムを各国の基準に基づいて薄めて海や大気に放出しているようだ。この基準に基づけば、動物実験や疫学研究からもトリチウムが他の放射性物質に比べて健康影響が大きいとは言えないと結論づけているようだ。

 しかし、この結論付けが誰にでも納得できるかが問題だ。恐らくある仮定の下での結論であろうが、この辺りを正直に丁寧に説明して、まず国民に安全であることを周知すべきであろう。

 政府は海洋放出がより現実的と判断し検討を進めてきたが、これに対して環境団体や漁業関係者から影響を懸念する声が上がっている。国際環境NGOグリーンピースは新たに発表した調査報告書の中で、放出される放射性物質が人間のDNAを損傷する恐れもあるとの警告を発した。また海洋放出は風評被害への懸念が強く、全国漁業協同組合連合会は「漁業者、国民の理解を得られない海洋放出は絶対反対」と表明している。また韓国政府は、放射性物質トリチウムを含んだ処理水の海洋放出には一貫して反対している。

 日本政府は早ければ10月27日にも関係閣僚会議を開いて海洋放出を決める方針だったが、23日関係省庁でつくる対策チームの会合で、チーム長の梶山経産相は月内の決定を見送る方針を表明した。

 政府は反発を和らげるには一定の時間が必要と判断し、風評被害対策などの検討を一層深めることを確認したそうだ。汚染水を海水で薄め海洋に放出することは世界各国で行われているが、日本における最大の問題は政府への不信感である。これまで、口では丁寧に説明すると繰り返し言うが、政府に都合が悪いことに関しては納得できるような説明を聞かされたことが無い。森・加計学園問題、桜を見る会、学術会議問題がその典型である。

 汚染水の海洋放出で政府に都合の悪い問題が発生した場合、恐らく政府は確証が無いとか、パニックを引き起こす懸念がある等の理由で隠蔽するだろう。何しろ原発の安全神話を信じ込ませた前歴がある。このような体質が改められない限り、反発の声は消えない。2020.11.04(犬賀 大好-648)


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