森出じゅんのハワイ生活

ハワイ在住のライターが、日々のあれこれをつづります。

ハワイ→インドのダライラマに想いを馳せて

2012年07月18日 | 日記


チベットの精神的指導者、ダライラマがハワイを訪れてから、早や3ヶ月。ダライラマはその後お元気かしら? と、ふと考えることもしばしばです。あれから、中国政府によるダライラマの毒殺計画の疑いをチベット亡命政府が公表したりなんだの…と、いろいろありましたからね。

そして今朝の新聞を読んで、また、ダライラマのことを考えてしまいました。日本でも報道されているかと思いますが、中国でまた、チベット僧が焼身自殺したんですね。18歳のチベット僧が。一連の抗議運動が2009年に始まってから、そのチベット僧で44人目の焼身自殺だったそうです。…なんと悲しいことでしょう! ダライラマの心も今、悲しみで曇っているに違いありません。

そんなニュースを読んで思い出したのが、4月、オアフ島クアロアビーチで出席した、ダライラマの記者会見での一こまでした。

4月にブログでもUPした通り、とにかく朗らかで人に心を開き、いつも笑顔を絶やさなかったハワイでのダライラマ。ですが私がダライラマに接した(見た?)3日間の中で、ダライラマが一度だけ、笑顔を捨て少し攻撃的な様子で人と対峙した時がありました。

その記者会見ではハワイのメディアの記者が順番にダライラマに質問をする機会があったのですが。最初の記者が、なんとも挑発的な質問を発したのです。

「チベット僧の焼身自殺について。なぜ彼らはこんなことをしているのですか」

それを聞いて、私は度肝を抜かれました…。なんというアグレッシブな発言を、聖なるお方に対してするのでしょう! これがアメリカのジャーナリズムなのか…(というか、こういう質問に愕然とする私は、ジャーナリストとして未熟児なのでしょうか?)。ドギマギする私の目の前で、ダライラマは冷静にこう、質問に答え始めました。

「あれは悲しい出来事です。ものすごく悲しいこと」

そして言いました。「でも、物事には遠因というものがある。それを深く見ていかないといけない」。その後ダライラマは、2008年以降、中国によってチベット人民が抑圧され、600人近くの市民が殺されていること。数多くのチベット僧が行方不明になっていること。中国はチベット人に政治教育を施そうとしていることなどを、話し始めました。

「チベット人は基本的に非暴力政策を信じる民族です。でも時には自己表現もする」
「中国人だって、中国は政治改革が必要だと言っている。民主改革が必要だと」
「中国政府はアジアには民主主義は合わないなんていっているが、それは嘘だ。インドだって日本だって台湾だって、みな民主主義を採用している」
「チベットは数千年にわたって特有の言葉を持ってきたのです。(チベットと)中国とは違うんです。でも中国によってずっと抑圧されてきた」

ダライラマは、冒頭の短い質問に対し、堰を切ったように話し続けました。一度、質問者がお礼を言って引っ込み、次の質問者が自己紹介をし始めていたのに、それでもダライラマはそれを遮ってもう一度、「それに、だよ。中国はチベットに対し…」なんて、また続きを話し始めたのです。チベット僧の焼身自殺、というキーワードに対し、きっとダライラマは話しても話しても話しきれないほどの想いを抱いているのでしょう。

その前日、前々日、一般を対象にした講演会にも出席した私ですが、その講演会でダライラマは、政治的な話をほとんどしませんでした。宗教の話も少なく、ただ、一人の人間として人の道を説く、といった感じで。ユーモアたっぷりに、聴衆を魅了したダライラマ。

でも記者会見で見せたように、本当は中国に対する、燃えるような想いも抱いているんですよね。それをふだんは見せないけれど…。だって自分はインドに亡命していて無事ですが、中国の支配下にあるチベットには、今だたくさんの同胞がいるのですから。下手に中国を刺激をしてチベットで大虐殺、なんてことになったら大変です。

生き神、生き仏のように世界で奉られているダライラマだって、一人の人間。記者に挑発されて本音を吐露することもあれば、きっと昨日のような悲しいニュースに接して、涙することもあるでしょう。…手元にある笑顔のダライラマの写真を眺めながら、いろいろ考えてしまいました。ダライラマ、そしてチベットの人々に、心の平穏が早く訪れますように!



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2 コメント

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チベット (lokelani.)
2012-07-23 21:36:53
JunさんAloha!

自分のブログにチベット問題をちょっと書いて
気分が重くなったので
JUNさんのブログをのぞきにきました~

最新記事を読んで、コメントしようとしたら
ダライラマのお写真が目に入りました!!

またもやシンクロ!

それにしても
その記者はどんなつもりで
そんな質問をしたのでしょうか・・・

皆に広く知らしめるため、あえてなのか
勉強不足なのか
文化の違いで、本当に理解ができなかったのか??

少しでも早く
なにか進展があるといいのですが、チベット問題・・・

ちなみに、私のブログの記事は、
6歳のときにチベットから亡命した少年の
ドキュメンタリー映画の紹介でした。

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Unknown (JUN)
2012-07-24 02:32:20
ロケラニさん、こんにちは~。
ホントにねえ…。私が思うには、けっこうアメリカ人ジャーナリストは、アグレッシブな質問をするみたいですね。
テレビなどを見ていても、それが目立つのですが…。
大統領選とかでも。
でもでもでも、ダライラマのような方には、それはナシだろうと思っていたんです。
じゃ、もしかしたらローマ法王にもあんな質問しちゃうのかな? (ああ、私はやはりジャーナリストとしてひよっこです)
チベットから亡命した少年のドキュメンタリー? 面白そう! チェックしてみます。
ちなみに、4月にダライラマがいらした時、ハワイのレンタルビデオの店では、「7 years in Tibet」が人気でした…。
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