森出じゅんのハワイ生活

ハワイ在住のライターが、日々のあれこれをつづります。

「やさしくひも解くハワイ神話」こぼれ話2

2020年04月16日 | 神話・伝説


4月もちょうど半ばですね。今日もホノルルには素晴らしい青空が広がっています!

さて、前回のお知らせから間が空いてしまいましたが、今日は新刊から漏れてしまったとっておきの神話を、(こっそり)ご紹介します。これぞ本当の「こぼれ話」ですね。英雄マウイの神話、どうぞお楽しみくださいー。本邦初公開です!

注:未完の状態です。誤植があったらゴメンナサイ。

「ハワイの鳥たちとマウイ」

 蛇がいないため、ハワイには多数の鳥が生息しています。森を歩けば鳥のさえずりに包まれ、運がよければ黄色や赤、グリーンの小鳥たちに出会うことができるでしょう。ところが昔、ハワイの鳥たちは透明で、誰もその姿を見ることができなかったとか。そんな不思議な現象を破ったのが、ほかならぬ半神マウイでした。

 昔々の大昔。ハワイの森や山ではたくさんの鳥が飛び交っていましたが、人間たちはその姿を見ることはできませんでした。鳥の囁きや、小枝や葉がかさかさと揺れる音も聞こえるのに、どこを見ても何もいないという不思議な状況が続いていたのです。
 ところがハワイに1人だけ、美しい鳥たちの姿を見ることができる男がいました。半神マウイです。神通力を持つマウイだけは、太陽に輝く鳥たちの羽を愛でることができたのです。
 そもそも、ハワイの鳥たちがあれほど美しい羽を持っているのは、マウイが自分好みの色に塗ったからだという人もいます。
 さて、ある日のこと。南方の島から、男の神がマウイを訪ねてきました。2人はお互いの島の美しさを自慢しあい、その最中、日頃楽しんでいる鳥たちの美しいさえずりにふれたマウイ。
「小鳥たちの美しいおしゃべりを聞いたら、この訪問者もきっと感動するだろう」
 そう考えたマウイが鳥たちに呼びかけると、鳥たちがマウイの周りに集まってきました。その結果、一帯はすぐにチチチ…チチチ…という鳥のさえずりで満たされることになったのです。
 神々の周りでその様子を見ていた村人たちも驚き喜び、なかには床にひれ伏す者も出てくる始末。村人たちは、それが聖なる森の妖精の仕業と考えたのです。村人だけでなく南の島からやって来た神ですら、鳥のさえずりに感激し、紅潮しています。
「美しい歌声が天から降りて来るとは! なるほど、おまえの島は美しいな」
 人々の称賛を聞き、マウイはすっかり嬉しくなってしまいました。もったいないことに、この大勢の人々のなかで自分一人だけが可憐な鳥たちの姿を見ていることにも、フと気づいたのです。
「ならば、声だけではなく鳥たちの姿も披露することにしようか」
 きっと鳥たちも、自分たちの神々しい美しさをみんなに見せたいだろう。そう考え、鳥たちを包んでいた魔法のベールをサッと除いてやりました。
 すると突然、人々の目の前に、赤や黄色、グリーンの輝く羽を持つ鳥たちが出現! 麗しい鳥たちを初めて見た神と村人はどよめき、長いこと歓声をあげながら、鳥たちに見とれていたそうです。
 こうして、またしてもマウイのお陰で、ハワイの人々は世にも美しい鳥たちの姿を楽しめるようになったとか。その後長い間、人々がマウイに感謝したことは、言うまでもありませんね。 
 
コメント (2)
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