で、ロードショーでは、どうでしょう? 第644回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『ザ・レイド GOKUDO』
世界中にセンセーションを巻き起こしたインドネシア発のノンストップ・バトル・アクションの続編。前作でマフィアとの死闘を生き延びた新人警官ラマが、今度はインドネシアマフィアや新興ギャング、日本ヤクザを巻き込む壮絶な抗争の渦に呑み込まれていく。
監督と脚本は、前作のヒットで一躍世界的に注目の存在となった英国の新鋭ギャレス・エヴァンス。
物語。
高層マンションでの壮絶な死闘を生き延びたラマ。
その2時間後、逮捕した汚職警官を連れて潜入捜査のチームに合流する。
だが、リーダーのブナワルは逮捕した汚職刑事を銃殺する。
彼は小物であり、黒幕がいるはず、それを捕まえなければ、とかげの尻尾切りで終わってしまう。
しかもラマもその家族も命を狙われると言われ、特別チームへ加わるよう持ちかけられる。
そんな時、ラマの兄が振興マフィアを率いるブジョに殺される。
兄の復讐と家族の命を守るため、ラマは潜入捜査に身を投じることに。
ラマは、前回のミッションは緊急参加だったので、死んだことにされ、ユダと名を変え、新しい身分になる。
そして、地元マフィアへ潜入し、汚職警官の証拠をつかむという任務につく。
地元マフィアのボスのバングンは、汚職警官のレザを配下に置き、ゴトウ率いる日本ヤクザと停戦協定を結び、街を分割支配していた。
ユダとなったラマはマフィアに認められるために、犯罪を犯し、刑務所へ入る。
そこで服役中のバングンの息子ウチョに接近するが・・・。
出演。
ラマ(ユダ)に、イコ・ウワイス。
今、トニー・ジャーと並び、もっとも戦闘能力の高いアクションスター。
独特の顔立ちは印象深い。
兄貴のアンディに、ドニ・アラムシャ。
潜入捜査チームのリーダーのブナワルに、コク・シンバラ。
汚職刑事のレザに、ロイ・マルティン。
息子のウチョに、アリフィン・プトラ。
ボスのバングンに、ティオ・パクソデウー。
後藤組組長ゴトウに、遠藤憲一
組員のケンイチに、松田龍平。
組員のリュウイチに、北村一輝。
ほとんど、おまけ。
対抗勢力のボスのブジョに、アレックス・アッバド。
殺し屋のプラコソに、ヤヤン・ルヒアン。
前作で強烈な印象を残したマッドドッグは当然出られないので、別の役での登場。
残念ながら、DEN版は少ないが、アクションの見せ場はある。
バングンの右腕のエカに、オカ・アンタラ。
殺し屋でナイフ使いのキラー・マスターに、セセフ・アリフ・ラーマン。
殺し屋兄弟で金属バット使いの兄バットマンに、ベリー・トライ・ユリスマン。
その妹の金づち使いのハンマー・ガールことアリシアに、ジュリー・エステル。
製作総指揮は、ランガ・マヤ・バラク=エヴァンス。
撮影は、マット・フラネリー。
なるべく1カットに見えるようにしたり、回転するなどの細かいアクション撮影は、飽きにくいが、時折、早すぎて見えづらいことも少なくない。
音楽のセンスが良く、アクションをうまく盛り上げた上、西洋風味もインドネシア風味もばっちりある。
アリア・プラヨギとファジャル・ユスケマルとジョセフ・トラパーニが共作。
アリア・プラヨギとファジャル・ユスケマルは『ザ・レイド』のインドエンシア版の音楽を担当していたが、英米版ではマイク・シノダとジョセフ・トラパーニのものに差し替えられた。
『2』では、トラパーニがぜひやらせて欲しいと申し出たそうで、3人での作業となった。
アクションシーンで流れる曲はインドネシア伝統の舞踊音楽レオグで、アクションを撮影するときにも流して、アクションにもそのリズムを取り入れたそう。
アクションの振り付けは、イコ・ウワイスとッヤンルヒアン。
カースタントは、ブルース・ローを香港から招聘している。
いままでのアジアン・アクションをそのバリエーションと残酷描写で数段引き上げた『ザ・レイド』の続編。
シンプルイズベストだった前作から複雑な裏社会の潜入刑事モノへとシフト。アクションを融合した香港と韓国風味のマフィアものになっているがアクションに比べて、脚本はあまりパワフルではない。
日本ヤクザは添えもの程度。
だが、とにかくアクションはさらに上げてきており、世界のトップレベルを見られる。
これを見ずして、今のアクションは語れない好作。
おまけ。
原題は、『THE RAID 2: BERANDAL』で
レイド(raid)の意味は、(占領目的ではなく、相手に打撃を与えるための)不意の襲撃、奇襲、空襲。または、(警察の)手入れ。
berandalはインドネシア語で“ならずもの”という意味があるそうです。
上映時間は、146分。
アクションもドラマもたっぷりあるが、アクション待ちになるのは否めない。
製作国は、前回と同じくインドネシア。
日本での通常公開版は、R15+だが、R18版があるようです。
キャッチコピーは、「マフィアvs.潜入捜査官vs.ヤクザ 全面抗争」
ややネタバレ。
日本のヤクザはほとんど出番がなく、全部で5シーンほどで約10分くらい。
対決もアクションシーンもない。
だが、第3作では、汚職警官とヤクザとの戦い戦いになるようです。
なので、邦題の『ザ・レイド GOKUDO』はちょっと的外れ。
実は、この脚本は『ザ・レイド』前に立てられ準備されていた『ベランダル』という映画のものを『ザ・レイド2』用に仕立て直したもの。
『インファナル・アフェア』、『新しい世界』、『イースタン・プロミス』、『ディパーテッド』などの潜入捜査官ものに既視感があり、やや冗長。
前作からきっちり続いている。
兄アンディが潜入捜査官を続ける決断をして別れたが、冒頭でブジョに殺される。
その復讐もあって、ラマは潜入捜査官になる、という部分もあるのだが、あまり伝わらない。
だが、こういった段取りを踏むことこそ、シラットの哲学らしい。
ラマたちが使うシラットは護身術であり、哲学のことでもあるそう。
単なる武術ではない。
正式にはブンチャック・シラット。
いろんな映画へのオマージュに溢れている。
北野武、石井輝男などが好きで意識したそう。
特に、プラコソを襲うクラブのシーンは、まんま『GONIN』からの引用。
日本映画への愛情がヤクザの登場につながった模様。
実際に、インドネシアではヤクザは幅をきかせている。
ハンマーガールは『オールドボーイ』だろう。
あと、妙に、『チョコレート・ファイター』に相似があったり。
ヤクザとか、しゃべりがおかしな殺し屋とかね。
アクションは前作から大きくは進化していないが、スケールは大きくなっており、インドネシアというジャンル映画に弱い国でこのレベルを保っていることは奇跡に近い。
ワイヤーやCGもほとんどつかわないセメントスタイルで、痛みや残酷表現も素晴らしい。
予算は潤沢ではなく、テイクも重ねられないなどの悪条件でありながら、人件費の安さや志で7ヶ月もの長期撮影で出来るうる限りのクオリティを維持している。
刑務所の泥まみれアクションは8日間かかったそう。
イコ・ウワイスはまだまだ芝居は弱いが、リアクション演技は悪くないので、期待が持てる。
キアヌ・リーヴスが監督した『ファイティング・タイガー』に出演したり、『スカイライン』の続編出演も決定し、今後スターになっていくので、制作費も大きくなるはず。
(ヤヤ・ルヒアンも売れつつあり、すでに数本の作品が動いており、その中には三池崇史の『極道大戦争』もある)
このまま作り続けることで、このチームのレベルはどんどん引き上げられるだろう。
次回作が楽しみ。
すでに『ザ・レイド3』は企画されており、『ザ・レイド2』のラストの2時間前から始まる、とギャレス・エヴァンズは語っている。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『ザ・レイド GOKUDO』
世界中にセンセーションを巻き起こしたインドネシア発のノンストップ・バトル・アクションの続編。前作でマフィアとの死闘を生き延びた新人警官ラマが、今度はインドネシアマフィアや新興ギャング、日本ヤクザを巻き込む壮絶な抗争の渦に呑み込まれていく。
監督と脚本は、前作のヒットで一躍世界的に注目の存在となった英国の新鋭ギャレス・エヴァンス。
物語。
高層マンションでの壮絶な死闘を生き延びたラマ。
その2時間後、逮捕した汚職警官を連れて潜入捜査のチームに合流する。
だが、リーダーのブナワルは逮捕した汚職刑事を銃殺する。
彼は小物であり、黒幕がいるはず、それを捕まえなければ、とかげの尻尾切りで終わってしまう。
しかもラマもその家族も命を狙われると言われ、特別チームへ加わるよう持ちかけられる。
そんな時、ラマの兄が振興マフィアを率いるブジョに殺される。
兄の復讐と家族の命を守るため、ラマは潜入捜査に身を投じることに。
ラマは、前回のミッションは緊急参加だったので、死んだことにされ、ユダと名を変え、新しい身分になる。
そして、地元マフィアへ潜入し、汚職警官の証拠をつかむという任務につく。
地元マフィアのボスのバングンは、汚職警官のレザを配下に置き、ゴトウ率いる日本ヤクザと停戦協定を結び、街を分割支配していた。
ユダとなったラマはマフィアに認められるために、犯罪を犯し、刑務所へ入る。
そこで服役中のバングンの息子ウチョに接近するが・・・。
出演。
ラマ(ユダ)に、イコ・ウワイス。
今、トニー・ジャーと並び、もっとも戦闘能力の高いアクションスター。
独特の顔立ちは印象深い。
兄貴のアンディに、ドニ・アラムシャ。
潜入捜査チームのリーダーのブナワルに、コク・シンバラ。
汚職刑事のレザに、ロイ・マルティン。
息子のウチョに、アリフィン・プトラ。
ボスのバングンに、ティオ・パクソデウー。
後藤組組長ゴトウに、遠藤憲一
組員のケンイチに、松田龍平。
組員のリュウイチに、北村一輝。
ほとんど、おまけ。
対抗勢力のボスのブジョに、アレックス・アッバド。
殺し屋のプラコソに、ヤヤン・ルヒアン。
前作で強烈な印象を残したマッドドッグは当然出られないので、別の役での登場。
残念ながら、DEN版は少ないが、アクションの見せ場はある。
バングンの右腕のエカに、オカ・アンタラ。
殺し屋でナイフ使いのキラー・マスターに、セセフ・アリフ・ラーマン。
殺し屋兄弟で金属バット使いの兄バットマンに、ベリー・トライ・ユリスマン。
その妹の金づち使いのハンマー・ガールことアリシアに、ジュリー・エステル。
製作総指揮は、ランガ・マヤ・バラク=エヴァンス。
撮影は、マット・フラネリー。
なるべく1カットに見えるようにしたり、回転するなどの細かいアクション撮影は、飽きにくいが、時折、早すぎて見えづらいことも少なくない。
音楽のセンスが良く、アクションをうまく盛り上げた上、西洋風味もインドネシア風味もばっちりある。
アリア・プラヨギとファジャル・ユスケマルとジョセフ・トラパーニが共作。
アリア・プラヨギとファジャル・ユスケマルは『ザ・レイド』のインドエンシア版の音楽を担当していたが、英米版ではマイク・シノダとジョセフ・トラパーニのものに差し替えられた。
『2』では、トラパーニがぜひやらせて欲しいと申し出たそうで、3人での作業となった。
アクションシーンで流れる曲はインドネシア伝統の舞踊音楽レオグで、アクションを撮影するときにも流して、アクションにもそのリズムを取り入れたそう。
アクションの振り付けは、イコ・ウワイスとッヤンルヒアン。
カースタントは、ブルース・ローを香港から招聘している。
いままでのアジアン・アクションをそのバリエーションと残酷描写で数段引き上げた『ザ・レイド』の続編。
シンプルイズベストだった前作から複雑な裏社会の潜入刑事モノへとシフト。アクションを融合した香港と韓国風味のマフィアものになっているがアクションに比べて、脚本はあまりパワフルではない。
日本ヤクザは添えもの程度。
だが、とにかくアクションはさらに上げてきており、世界のトップレベルを見られる。
これを見ずして、今のアクションは語れない好作。
おまけ。
原題は、『THE RAID 2: BERANDAL』で
レイド(raid)の意味は、(占領目的ではなく、相手に打撃を与えるための)不意の襲撃、奇襲、空襲。または、(警察の)手入れ。
berandalはインドネシア語で“ならずもの”という意味があるそうです。
上映時間は、146分。
アクションもドラマもたっぷりあるが、アクション待ちになるのは否めない。
製作国は、前回と同じくインドネシア。
日本での通常公開版は、R15+だが、R18版があるようです。
キャッチコピーは、「マフィアvs.潜入捜査官vs.ヤクザ 全面抗争」
ややネタバレ。
日本のヤクザはほとんど出番がなく、全部で5シーンほどで約10分くらい。
対決もアクションシーンもない。
だが、第3作では、汚職警官とヤクザとの戦い戦いになるようです。
なので、邦題の『ザ・レイド GOKUDO』はちょっと的外れ。
実は、この脚本は『ザ・レイド』前に立てられ準備されていた『ベランダル』という映画のものを『ザ・レイド2』用に仕立て直したもの。
『インファナル・アフェア』、『新しい世界』、『イースタン・プロミス』、『ディパーテッド』などの潜入捜査官ものに既視感があり、やや冗長。
前作からきっちり続いている。
兄アンディが潜入捜査官を続ける決断をして別れたが、冒頭でブジョに殺される。
その復讐もあって、ラマは潜入捜査官になる、という部分もあるのだが、あまり伝わらない。
だが、こういった段取りを踏むことこそ、シラットの哲学らしい。
ラマたちが使うシラットは護身術であり、哲学のことでもあるそう。
単なる武術ではない。
正式にはブンチャック・シラット。
いろんな映画へのオマージュに溢れている。
北野武、石井輝男などが好きで意識したそう。
特に、プラコソを襲うクラブのシーンは、まんま『GONIN』からの引用。
日本映画への愛情がヤクザの登場につながった模様。
実際に、インドネシアではヤクザは幅をきかせている。
ハンマーガールは『オールドボーイ』だろう。
あと、妙に、『チョコレート・ファイター』に相似があったり。
ヤクザとか、しゃべりがおかしな殺し屋とかね。
アクションは前作から大きくは進化していないが、スケールは大きくなっており、インドネシアというジャンル映画に弱い国でこのレベルを保っていることは奇跡に近い。
ワイヤーやCGもほとんどつかわないセメントスタイルで、痛みや残酷表現も素晴らしい。
予算は潤沢ではなく、テイクも重ねられないなどの悪条件でありながら、人件費の安さや志で7ヶ月もの長期撮影で出来るうる限りのクオリティを維持している。
刑務所の泥まみれアクションは8日間かかったそう。
イコ・ウワイスはまだまだ芝居は弱いが、リアクション演技は悪くないので、期待が持てる。
キアヌ・リーヴスが監督した『ファイティング・タイガー』に出演したり、『スカイライン』の続編出演も決定し、今後スターになっていくので、制作費も大きくなるはず。
(ヤヤ・ルヒアンも売れつつあり、すでに数本の作品が動いており、その中には三池崇史の『極道大戦争』もある)
このまま作り続けることで、このチームのレベルはどんどん引き上げられるだろう。
次回作が楽しみ。
すでに『ザ・レイド3』は企画されており、『ザ・レイド2』のラストの2時間前から始まる、とギャレス・エヴァンズは語っている。