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菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

その問いに近道はない。  『ミークス・カットオフ』

2021年08月22日 00時00分18秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1922回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 


『ミークス・カットオフ』

 

 

西部開拓時代のアメリカの荒野で旅団が近道をして迷う西部劇ドラマ。

『ウェンディ&ルーシー』のケリー・ライカート(監督)×ミシェル・ウィリアムズ(主演)の再タッグ。

共演に、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のポール・ダノ、『スター・トレック』のブルース・グリーンウッド、『アルマゲドン』のウィル・パットン、『ルビー・スパークス』のゾーイ・カザン。

 

 

物語。

1845年、オレゴン州。移住の旅に出たテスロー夫妻ら3家族は、道を熟知しているミークにガイドを依頼する。
2週間程度のはずの道程だったが、状況次第で、それは裏切られる。
旅をする一行の前に、インディアン(ネイティブ・アメリカン)の影が忍び寄る。

脚本:ジョン(ジョナサン)・レイモンド

 

 

出演。

ミシェル・ウィリアムズ (エミリー・テスロー)
ウィル・パットン (ソロモン・テスロー)

ブルース・グリーンウッド (スティーブン・ミーク)

ポール・ダノ (トーマス・ゲートリー)
ゾーイ・カザン (ミリー・ゲートリー)

シャーリー・ヘンダーソン (グローリー・ホワイト)
ニール・ハフ (ウィリアム・ホワイト)
トミー・ネルソン (ジミー・ホワイト)

ロッド・ロンデュー (ネイティブ・アメリカン)

 

 

スタッフ。

製作:ニール・コップ、アニシュ・サビアーニ、エリザベス・カスレル、デビッド・ウルティア、ビンセント・サビーノ
製作総指揮:トッド・ヘインズ、フィル・モリソン、ラジェン・サビアーニ、アンドリュー・ポープ、スティーブン・タットルマン、ローラ・ローゼンサール、マイク・S・ライアン

撮影:クリストファー・ブロベルト
美術:デイブ・ドーンバーグ
衣装:ビッキー・ファレル

編集:ケリー・ライカート
音楽:ジェフ・グレイス

 

『ミークス・カットオフ』を鑑賞。
19世紀アメリカ、旅団が荒野で迷う西部劇ドラマ。
西部劇を彷徨の中に閉じ込める。リアルからのアメリカ的神話。
「ミーク」はガイドの名前、「カットオフ」は近道ですね。
実は実話を基にしてるそう。
ケリー・ライカート×ミシェル・ウィリアムズの再タッグ。
ミニマムではあるが、けっこう豪華キャスト。ポール・ダノ、ゾーイ・カザン、ブルース・グリーンウッド、ウィル・パットンが出ずっぱり。
みな、なじんでいる。なじみ過ぎて、誰かわからんこともあるが。でも、こういう作品ではそうあって欲しいよね。
役者陣の砂埃に覆われた、たたずまい芝居のカッコ良さが流石。ロッド・ロンデューがそれを体現。こういう芝居ってなかなかできないんですよ。こういう役者を大事にしていってほしい。元スタントマンで、その体の使い方が堂にいってるんです。
神話的ながら、アメリカの今にも通じてる。人類が常に置かれている状況ともいえる。
そのリアルな旅の有り様は、時代的な時間の流れを味合わせてくれる。光も当時の感じなので、だいぶ暗い。これもまた体感映画。
クロエ・ジャオへつながるアメリカ神話の解体も見える。
その雄大な景色の意味が進むと徐々に変わっていく。西部劇はやっぱ大きめのスクリーンよねぇ。ケリー・ライカートはいつも狭めの濃縮画面でしたが、撮影も内容に合わせて、ちゃんと広くなってました。
その先をどう見るかの砂作。


 

 

おまけ。

原題は、『Meek's Cutoff』。
『ミークスの近道』。

カットオフ(Cutoff)の意味は、切断、遮断、(会計の)締め切り日、決算日、(パイプなどの)遮断装置、締め切り、近道、バイパス、膝のあたりで切ったジーンズ、みじっかうした銃身の銃など。

2010年の作品。

 

製作国:アメリカ
寿永時間:103分

配給:グッチーズ・フリースクール、シマフィルム

 

 

ケリー・ライカート(監督)×ミシェル・ウィリアムズ(主演)は、新作『First Cow』『Showing Up』でも組んでおり、現在4作を数える。

 

撮影のクリストファー・ブロベルトは、これ以後、ケリー・ライカート作品の目になってます。『First Cow』も彼の仕事。
『ブリングリング』や『mid90s ミッドナインティーズ』の仕事で知られています。

 

ロッド・ロンデューは、アメリカで今も活躍中の俳優。西部劇が多いようですが、2015年に『Mekko』のメッコ役で主演もしてます。

 

実話を基にしたもので派手さはほぼないが当時の状況を再現し、当時の気分に浸れるうえ、これは現在の混迷の状況を映す現代に生まれた西部劇ジャンルを懐かしまない現在進行形の硬派なリアル系西部劇。

 

 

 

 

 

 

 

ややネタバレ。

1845年に実際会った出来事を基にフィクション化。
史実では、ステファン・ミークというガイドで、約200のワゴンで約1000人の移民団が、砂漠を近道をしようとしたが、方向を見失い、迷ってしまったそう。
ミークは、実は道をよく知らなかったようで、移民団はミークを見放し、知恵を集め、大きな被害はなく、移動に成功したとのこと。

 

 

 

 

ネタバレ。

川から映画は始まる。

子供にアダムとイブの物語が語られるように、知恵の実がなった木に最後の木が重ねられ、人々は知恵を得る。
それは、誰かを信じ、断罪しないという神話。

そして、それは世界を知っているとうそぶく男と怯えつつもそれを疑い、信じられるものを見抜く女の話でもある。

それは、イブが蛇に騙されたから人は知恵を得た、という神話を反転させる。

悪魔の化身である蛇だが、イブに言ったのは神が「食べたら死ぬ」と言ってた禁断の実について、「実を食べても死にません」「それどころか、実を食べると賢くなるよ」と事実をいっただけだったりする。
神は嘘をついたのだ。
人のために?

そこで、人の無垢は失われたという。食べてはいけないものを食べてたという近畿を犯したことは変わらない。
ではなぜ神はその木を切らなかったのか?
洪水を起こせるような神は。
人を試していたのだろうか。
教えを守っている間は、無垢も守れるから。
ちなみに無垢を失って得るのは羞恥心。
無垢を与えるためには、目の前の禁忌と向き合わねばならなかったのだろうか。

その神話を反転させる。
蛇=ネイティブアメリカン、は事実を伝える。
神=ミーク、は間違える。
イブ=妻たち、は知っているであろう方を信じる。
アダム=夫たち、は妻の意見にのる。
原住民に助けられたのは、羞恥心となるのか?
生きてたどりつけたなら、実(じつ)を得たことになるが、そこをぼかす。

神は羞恥心を得たアダムとイブを叱る。そして、恥ずかしいだろうから、獣の皮でつくった服をあげる。

幼子が羞恥心がなくて、年齢を重ねると羞恥心を得る、人が大人になるようになったということよね。成長で無垢を失うなら、どちらがよかったのか。

神は試練を与えるから、蛇も神が送ったものではないか。

 

 

 

 

 

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