菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

ハードな童話はどう? 『ザ・マミー』

2019年01月31日 00時00分03秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1438回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

『ザ・マミー』

 

 

 

行方不明の母を捜す少女を待ち受ける残酷な運命と想像を絶する恐怖を描き、世界各地の映画祭で多数受賞したメキシコ発のファンタジック・クライム・ホラー。

 

スティーヴン・キングやギレルモ・デル・トロから絶大な支持を受けた。

 

監督と脚本は、イッサ・ロペス。

 

 

 

物語。

現代、メキシコ。
11歳の少女エストレヤの母親は行方不明となる。その日から、彼女を不思議な出来事が起きるように。
同じ年頃の孤児の少年シャイネは仲間のトゥッシ、ポップ、ネロはギャングのカコへ怒りを燃やしていた。なぜなら彼らの組織は人を売るからだった。

エストレヤの家にシャイネが盗みに入る。
シャイネは、エストレイヤの母親がギャングに連れ去られたという。
エストレイヤはシャイネを頼り、母を探そうとする。
だが、シャイネは仲間に入るなら、連れ去ったカコを襲えと銃を差し出す。

 

 

 


出演。

パオラ・ララが、エストリア。

フアン・ラモン・ロペスが、シャイネ。

ハンセル・カシリアスが、トゥッシ。
ロドリゴ・コルテスが、ポップ。

ネリー・アレドンドが、ネロ。

 

テノッチ・ウエルタが、チノ。

イアニス・ゲレロが、カコ。

 

 

 

スタッフ。

製作は、マルコ・ポロ・コンスタンドセ。

製作総指揮は、イッサ・ロペス、フランシスコ・ゴンサレス・コンペアン。

撮影は、フアン・ホセ・サラビア。

編集は、ホアキム・マルチ。

音楽は、ヴィンス・ポープ。

 

 

 

 


現代メキシコ、母の消えた少女が三つの願いに翻弄されつつギャングと立ち向かうファンタジー・ホラー。
少年少女による対ギャング、対世界、対超常現象。
マジックリアリズムが機能するのは強烈な状況に置かれた時。
愛と憎の二重性が子どもたちを大人にする。
リアルかつハードな童話をベースに、想像力を掻き立てる恐怖を描き出す。実際に彼女らはいるのだと。
実際にそうである人たちがフィクションに浸れるようにジャンルは作用させているのかもしれない。
あえて、洗練させていないことでファンタジー性を担保しているのだろう。
パオラ・ララとフアン・ラモン・ロペスだけでなく、子供らの絶望と希望に生き生きした様が行き来する。
撮影・美術が素晴らしく、怖いけどそこへ行きたくなる。
虎は恐れないのでなく、恐れを知らないのだ。虎になろうとするなら、恐れを乗り越えなければならない。
墨で隅に追いやられる澄んだ瞳に住む棲作。 
 
 
 
  

 

 

 

 

おまけ。

原題は、『VUELVEN』。
『戻ってくる』。

英語題は、『TIGERS ARE NOT AFRAID』。
『虎たちは恐れない』。

 

2017年の作品。

邦題の『ザ・マミー』は、ホント勘弁してほしい。
内容をややバラシ(バレてもいいことではあるが)てるし、同名作品に似た題名がいくつもあるし。ネットで引きたくても、トム・クルーズの『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』が邪魔する。
ギレルモ・デル・トロは製作で『MAMA』ってのがあるし。

おいら案なら、『虎の子供たち』とか、『3つの願い』とか、『スタンド・バイ・ユー』とか、かな。

 

 


上映時間は、83分。
製作国は、メキシコ。

 

 

 

2019年1月より開催の<未体験ゾーンの映画たち2019>にて上映。

 

 

受賞歴。

2018年のモリンズ・デ・レイ・ホラー映画祭にて、最優秀監督賞をイッサ・ロペスが、受賞。

2018年のメキシコのアリエル賞にて、メイキャップ賞をアダム・ゾラーが、受賞。

その他に10以上の賞を受賞。

 

 

 

キャッチコピーは、「ママが殺しにくる」。

これ、イマイチです。

 

 

 

チノ役は、『闇の列車、光の旅』、『キック・オーバー』のテノッチ・ウエルタ。

 

 

 

「ホラーではない」なんていう日本の感想をぼちぼち見かけるが、彼らは自分の了見の狭さこそ疑うべきだ。多彩な恐怖を描くのがホラーというジャンルなのだから。
それはホラージャンルへの偏見だろう。泣けるから悲劇ではない悲しみを扱うから悲劇と同じように、ホラーは怖いのではなく恐怖を描くもの。コメディを喜劇と訳すように。(笑劇はファース)

もちろん、ジャンルの定義もどんどん変わるモノではあるだろうが。

この複雑な恐怖は直接的ではないのでホラー感度が高くないと怖さは薄いかも。

 

 


 
 
『パンズ・ラビリンス』や『シティ・オブ・ゴッド』と並べられるが、『コップ・カー』や『太陽の少年』、『マザー・ハウス』の系譜でもある。

 

 

 

 

 

ややネタバレ。

「2006年の麻薬戦争勃発以来メキシコでは16万人が死亡。5万3000人が行方不明に。一部の地区がゴーストタウンになった都市もある。死者や行方不明者が残した子供たちの数は明らかではない」から始まります。

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレ。

子どもにとって、母親が死んでいて、孤独なところに、その母が幽霊となって、自分を殺した相手を自分の死体のある場所まで連れて来いと子供に要求することの恐ろしさ(母は子供を守ろうとしている部分もあるが)こそ、ホラー=恐怖ではないか。

その上、少女の3つの願い、自分が願うことが不幸を呼ぶという自分否定も描かれる。

 

 

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2 コメント

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お願い (ジョニーA)
2019-07-09 05:27:10
マイブログにリンク&引用、貼らせてもらいました。
不都合あればお知らせください(削除します)。
なにとぞ宜しくお願いいたします~。
返信する
どうぞ。 (ひし)
2019-07-10 00:10:53
>ジョニーAさん
はじめまして。
どうぞ、どうぞ。
この映画が届いて欲しい人に届くことを。
返信する

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