で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2297回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『ただ空高く舞え』
元空軍パイロットらがインド初の格安航空会社創業に挑むビジネスドラマ。
2003年にインド初の格安航空会社エア・デカンの創設者G・R・ゴーピナート大尉の自伝的著作をベースに、かなり脚色して映画化。
原題は、『SOORARAI POTTRU』。
『勇者を讃えよ』。
製作年:2020年
製作国:インド
上映時間:150分
映倫:G
配給:インド映画同好会
主演は、タミル語映画界のスターのスーリヤ。
監督は、『Irudhi Suttru(ファイナル・ラウンド)』のスダー・コーングラー。
物語。
2000年代インド、空軍士官ネドゥマーラン(通称マーラ)は、広大なインドを速やか安く移動できる、インド初の格安航空会社(LCC)を立ち上げようと空軍時代の同期三人が気炎を上げていた。
しかし、資金が足りなかった。
だが、彼らは新しい発想(1ルピー:約10円の特別運賃や新しい予約方法など)に自信があった。
そこで、インド中の投資家にプレゼン絨毯爆撃をしかけることに。
動き出した彼らの夢を、風習、企業、国家、民衆が阻んでいく。
そこに、マーラの結婚話が持ち上がる。
スタッフ。
監督:スダー・コーングラー
製作:スーリヤ ジョーティカー
原案:G・R・ゴーピナート
脚本:スダー・コーングラー
撮影:N・ボンミレッディ
編集:サテーシュ・S
音楽:G・V・プラカーシュ・クマール
出演。
スーリヤ (ネドゥマーラン/マーラ)
アパルナー・バーラムラリ (スンダリ/ボミ)
パレーシュ・ラーワル (パレーシュ・ゴースワミ/大手航空会社ジャズ・エアラインス代表)
クリシュナクマール・バラスブラマニアン (チャイタニヤ・ラーオ)
ビベーク・プラサンナ (セバスチャン)
カーリ・ベンカット (カーリ)
モーハン・バーブ (ナイドゥ)
『ただ空高く舞え』を観賞。
2000年代インド、元空軍パイロットらがインド初の格安航空会社創業に挑むビジネスドラマ。
エア・デカンの創設者G・R・ゴーピナート大尉の自伝的著作をベースに、インド映画的にかなり脚色して映画化。
ビジネスドラマを中心にアクション、ダンス、ラブストーリーもちらほら入ってきます。
ほとんどは、いわゆるビジネス的な書類作業や交渉、資金や人材や機器獲得なのに、がっつりドラマチックでサスペンスフルなのだもの。
『半沢直樹』とは別方向的濃いビジネスドラマを味わえます。
150分にドラマ10話分くらいの熱量がぎゅうぎゅうですが、不思議なことにダイジェスト感がない。これぞ磨きあげられたローカル作劇の技。
その秘訣の一つは、インド映画なので、途中でインターミッション(休憩)が入る前後編方式。前半はインド映画っぽいこんもりエンターテインメントで、後半はきっちりビジネスドラマにしているの。
苦悩と障害は山盛りですが、実話が基だから成功すると見れる安心感。
でも、「お金がない!」「法律変更に阻まれる!」「飛行機をどう調達する?」「大会社が立ちはだかる!」とか出てくる障害の高さに、どうやって飛び越えるのよ、とワクワクしちゃう。
それを支えるのが、スター力で、スーリヤの身体性が画面にエネルギーを発散し、空高く舞わせるのよね。そして、その羽はスンダリ役のアパルナー・バーラムラリの発光かつ発酵する肝っ玉溢れまくるキャラクターぶり。このボディに翼、それを尾翼となる仲間、燃料となる身内で、まずは飛行機にしている。けども、映画を飛ばすのは、やっぱり向かい風、つまり敵。これがすごく大時代的で、ちょっとわらっちゃうぐらいですが、徹底的なので、もうすっごく憎たらしい。歪みまくった思いをまっすぐ伝えてくるセリフが金棒。それでもう「こいつをギャフンと言わせて」と素直に思える。これ大事。
ちゃんと航空周りも描く、画面の納得力もばっちりの娯楽映画力満載。
でも、今作でおいらが一番楽しめたのは、ベタじゃないラブストーリー部分。スンダリのパワフルかつ主役級の存在感で全然うまくいかないのがたまらなかったな。大人の少女漫画コメディなのよ。
行く前は、どうだろうなぁな疑心暗鬼な新スポーツに行ってみたら、最後汗だくで時間忘れちゃった感じ。
熱々アチチ火がボーボーの炎の熱血な一本。
解説。
マーラは、2003年にインドで初めての格安航空会社エア・デカンとその創設者G.R.ゴーピナートがモデル。
ベースとなったのはG.R.ゴーピナート本人による著作『Simply Fly: A Deccan Odyssey』。脚色の例では、エア・デカンをデカン・エアにしたり、名前や事象は変更されている。
ゴービナートの生まれ故郷の地はマイソール州(現カルナータカ州)だが、映画の方は言語に合わせてタミル・ナードゥ州に置き換えられている、など。
ネタバレ。
実際のエア・デカンはキングフィッシャー航空に吸収合併されている。