で、ロードショーでは、どうでしょう? 第110回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『ニューヨーク、アイラブユー』
オムニバス映画ではあるが、つなぎの物語にほかの物語のキャラクターが出てくるため、まるで一本の群像劇のようになっている。
ある意味で、ニューヨークの多面性を表現するには、非常に有効な方法かもしれない。
方法としては有効だったが、、実際のニューヨークが持っている多様性まで表現出来たかは、ちょっと疑問ですけどね。
ラストにクレジットがまとめて出るのも、多くのオムニバス映画が抱える視聴の集中の分断がないので、なかなか考えられていて、興味深い。
ほとんどの物語がかなり上質な上、愛の成就を描いている。
うまいつなぎで、2時間飽きさせないのは、『ラブ・アクチュアリー』に近いと思う。
ゲイの話がないことや、愛の裏面を描いていないことも合わせてね。
悲劇はないけど、コメディにサスペンス、ヒューマンにシュール、ハードとジャンルはいろいろ揃ってますしね。
ただ、スコセッシ、ウディアレン、スパイク・リーと言った、いわゆるニューヨーク派の監督たちの名前がないのは、少し寂しい気もする。
まぁ、新しい監督たちに門戸を開くのもニューヨークらしいともいえるのだけど。
アジア系の印象が強いのは、今のニューヨークがそうだからなのかもしれない。
岩井俊二のアメリカデビュー作(オーランド・ブルーム主演)ともなるし、ミラー・ナイール、シェカール・カプール、イルファン・カーンのインド系、チアン・ウェン、スー・チー、マギーQの中国系も登場する。
多くのハリウッドスターが出演していて、いつもとは少し違う役どころで、その演技の幅を楽しませてくれるし、数カットの出演でさえ印象を残すそのスター力は流石の一言。
なかでも、ナタリー・ポートマンは出演と監督もこなしている。
個人的には、老夫婦の話、元オペラ歌手のホテル滞在の話が好み。
あと、スリ師の話も。
今作は、『パリ・ジュテーム』の姉妹編となる。
ほかの都市でも作るのだろうか?
映画の元は、フランスのリュミエール兄妹のシネマトグラフ。
アメリカでは東部で始まり、陽の光を求めて西部へ移りハリウッドが誕生したので、流れ的には、ハリウッドなのかしら?
ただ、『カリフォルニア、アイラブユー』だと、 タイトル重なるしね。
まぁ、その頃のイタリア映画もかなり強力だったから、『ローマ、ティ・ラ・アモー』が有力かもしれない。
タイトルとしては、東京の場合は、『東京、愛してる』になるのかな?
ベルリンなら『ベルリン、イッヒ・リーベ・スィ』かね。
そういや、ロンドンだと、また『ロンドン、アイラブユー』か。
『ニューヨーク、アイラブユー』で、一番多く描かれるのは、愛の触れ合い。
肉体と意識の差を明確に描くのは今の作家の課題なのかもしれない。
冬の寒さには、ぴったりのハートウォーミングなショートストーリー集でずぜ。