で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1284回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『ワンダーストラック』
ある共通点を持つ孤独な1977年の少年と1927年の少女が、それぞれ大切な人に会うためにニューヨークへ向かい、半世紀を超え、縁を織りなす物語。
『ヒューゴの不思議な発明』(原作は『ユゴーの不思議な発明』)の原作者ブライアン・セルズニックのベストセラー小説を自身で脚色。
主演は、『ピートと秘密の友達』のオークス・フェグリーとオーディションで選ばれた新人、ミリセント・シモンズ。
監督は、『エデンより彼方に』、『キャロル』のトッド・ヘインズ。
物語。
1977年、ミネソタ州ガンフリント。
シングルマザーの母を突然の事故で亡くした12歳の少年ベンは、ある夜、母の遺品の中から『ワンダーストラック』という本と父がNYにいるという手がかりを見つける。
1927年、ニュージャージー州ホーボーケン。
生まれつき耳の聞こえない孤独な12歳の少女ローズ。離婚し、支配的な父に対しても心を閉ざしている。
彼女は孤独を癒すため、映画館に通う。目当ては、人気女優のリリアン・メイヒューの無声映画。
ある日、雑誌でリリアンがNYで舞台に立つと知る。
原作は、ブライアン・セルズニックによる絵と文の本『ワンダーストラック』。
脚本は、ブライアン・セルズニック。
出演。
オークス・フェグリーが、ベン。
ミリセント・シモンズが、ローズ。
ジュリアン・ムーアが、リリアン・メイヒュー。
ミシェル・ウィリアムズが、エレイン。
ジェイデン・マイケルが、ジェイミー。
トム・ヌーナンが、店主。
コーリー・マイケル・スミスが、ウォルター。
スタッフ。
製作は、クリスティーン・ヴェイコン、ジョン・スロス。
製作総指揮は、ブライアン・ベル。
撮影は、エド・ラックマン。
プロダクションデザインは、マーク・フリードバーグ。
衣装デザインは、サンディ・パウエル。
編集は、アフォンソ・ゴンサウヴェス。
音楽は、カーター・バーウェル。
音楽監修は、ランドール・ポスター。
あるものを探しにNYへ来た77年の少年と27年の少女を二時代を交差させて描くドラマ。
トッド・ヘインズによる児童挿絵小説の実写化。
原作のブライアン・セルズニックによる脚色で、さらに映画的な構成になっている。それは無声映画と70年代映画の融合。
聾や親という喪失が与える驚きの世界を点と点で繋げていく。ただ手を引くのではなく空白を用意し、観る者に隙間を埋めさせる。
孤独を歴史の暗渠に水を流し、同じように星を見上げた人々に気づかせる。それは映画の歴史もつなげていく
3人の子供の豊かな表情にワクワクが若返る。
当時の博物館の再現とミニチュアの広がりは圧巻。
本一冊、石一つ、そこに驚きを見出し、物語を生み、街は宇宙の広がりを持っていた子供時代を旅する宝作。
おまけ。
原題も、『WONDERSTRUCK』。
『不思議な一撃』。
上映時間は、117分。
製作国は、アメリカ。
映倫は、G。
キャッチコピーは、「いつだって、人生は驚きと幸せのワンダーランド。」。
定型文コピーですが、古典感も出ていて、昔が舞台なのでその雰囲気も示してはいます。
今作は、日本ではアニメ以外では絶滅しかけている児童映画。こういった作品は世界では当たり前に作られている。そのせいかどうか、下手するとちょっとした大人でさえ、こういった作品を大人向け映画だという見方をする方が増えた印象があります。
ハイティーン映画は豊かなメッセージを滅多に打ち出さず、大人向けでも社会と関りが薄い作品が増えた。
それを続けてきたことで、逆説的に、物理的には少子化しているけれど、精神的には多子化しているように感じなくもない。
ややネタバレ。
ブライアン・セルズニックは、デヴィッド・O・セルズニックと面識はないが親戚だそうです。
ミリセント・シモンズは実際に聾で、現在北米で大ヒット中の『A Quiet Place』でも活躍中。
ジュリアン・ムーアとトッド・ヘインズは4度目のタッグ。
ネタバレ。
リリアン・メイヒューの元ネタは、リリアン・ギッシュだろう。『嵐の娘』は『嵐の孤児』。
ほかにも『アパートの鍵貸します』など映画へのオマージュがありますね。
ブライアン・セルズニックもトッド・ヘインズもゲイを公言している。マイノリティへの優しい視点こそがこの映画を底支えしている。