で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1075回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『タレンタイム~優しい歌』
2009年に51歳の若さで亡くなったマレーシアの女性監督ヤスミン・アフマドの遺作となる青春群像ドラマ。
多民族、多宗教で構成されたマレーシアの国情を背景に、高校の音楽コンクール“タレンタイム”に臨む高校生たちとその家族が織りなす恋、友情、葛藤と絆を瑞々しいタッチで綴る。
物語。
マレーシアの高校で、7回目となる音楽コンクール「タレンタイム」(才能の時間=タレントタイム)が開催されることをアティバ校長が決定する。
練習場所が限られているので、出場者は送迎者がつくことになる。
イギリス系マレー人のイスラム教で、ピアノの上手な女子学生ムルーは三姉妹の長女、おしゃべり好きで、明るい家庭にはいつも笑いが絶えない。
そんな彼女を送迎するのは、ひどく寡黙なマヘシュ。彼は、インド人のヒンドゥー教で、結婚式の前日におじさんがあるトラブルに巻き込まれていた。
アティバ校長を慕うアヌアール先生は彼女にいいところを見せようと友人のタン先生をムリヤリ誘ってタレンタイムの余興に出ようとする。
二胡を演奏する優等生カーホウは、中国系で家族からのプレッシャーも強い。だが、最近、転入生に成績で抜かれてしまう。
その転入生ハフィズは、ギターも歌も上手いが、転入してきたのには悲しい理由があった。
踊りが好きな同級生のメルキンは二人のぶつかり合いが気になる。
脚本も、ヤスミン・アフマド。
マレーシアの他民族多言語をそのまま脚本に盛り込んだのは、革新的でマレーシア映画だけでなく、マレーシアの文化的思想の発端となったそう。
出演。
パメラ・チョンが、ピアノの上手い長女ムルー。
エルザ・イルダリナが、次女マワール。
ハリス・イスカンダルが、ムルーの父。
ミスリナ・ムスタファが、ムルーの母。
マヘシュ・ジュガル・キショールが、送迎するマヘシュ。
ジャクリン・ヴィクトルが、マヘシュの姉パヴァニ。
スカニア・ヴェヌゴゴパールが、マヘシュの母。
モハマド・シャフィー・ナスウィップが、ギターの上手いハフィズ。
アゼアン・イルダワティが、ハフィズの母。
ハワード・ホン・カーホウが、二胡の上手いカーホウ。
アティバ・ヌールが、アティバ校長。
メインキャストは、本気で歌が上手い!
スタッフ。
撮影は、ロー・ケオン。
音楽は、ピート・テオ。
マレーシアの人気ミュージシャンで、劇中歌の方も手掛けている。
学校で行う音楽やダンスなどのコンテスト”タレンタイム”に挑む生徒とその家族の痛みと癒しの群像劇。
ヤスミン・アフマドの遺作であり伝説の一本が8年を経て、ついに公開。
多民族で多言語国家マレーシアの現状を4つの家族で描き、素晴らしい音楽と切なく優しい挿話で包みこむ。
実景や何気ないシーンの入れ方が特徴的で、それだけで胸が締め付けられる。
笑いと涙の山と谷を吹き続ける死の風に肩寄せ合うことの意味を見出す傑作。
おまけ。
原題は、『TALENTIME』。
映画祭などでの上映の際は、『タレンタイム』で副題はなかったそうです。
“タレンタイム”は、タレントタイムか、または“TALE N’(&) TIME”科、語源は分からないものの50年代からマレーシアでは定番のものらしい。
文化祭みたいなものですかね。
上映時間は、115分。
製作国は、マレーシア。
キャッチコピーは、「歌ってごらん 笑ってごらん すべてを越えて 心は届く」
ネタバレ。
マヘシュのおじさんに起きた事件は、実際にマレーシアで起きた事件を基にしているそう。
あの先生コンビの練習をちょっと見せて欲しかったな。
実際、いくつかの描写はマレーシアではかあんり珍しいことも含まれているようです。
中国系メイドがイスラム教徒とか。
ハフィズのお母さん役のアゼアン・イルダワティは、70年代から人気だった大女優。だが、2007年に乳がんが発覚し、治療に専念していたが、高額の治療費がどうにも払えなくなり、治療を中止することに。
それを聞いて、彼女のファンだったヤスミン・アフマドは彼女にそのままで出てもらうために役を作り、主演並みの出演料を用意し、出演することになった。
本作が遺作となり、2013年に逝去。
次女マワール役のエルザ・イルダリナは実娘。