一期一会

日々是好日な身辺雑記

「米中もし戦わば」/ ピーター・ナヴァロ

2019年07月17日 | 雑記


株取引の懸念事項だった米中通商摩擦のアメリカによる第4弾の追加関税が見送られたので、当面の急落要因は無くなったと思い、
7/3にMRFにあった待機資金で小型株で化粧品&健康食品(北の達人)とバイオベンチャーの(総医研)を買った。
例年7月〜9月は値動きの少ないボックス相場になるが、10月末にはイギリスの合意なきEU離脱と日本の消費税増税と
株価に対する不透明要素があるので、それまでの短期運用として値動きの軽い小型株を買った。
一時休戦状態の米中貿易戦争も中国側は長期戦の構えだろうし、マーケットも慣れて常態化して受け止めている感じだ。

そんな中、先週は図書館に予約していた「独裁の中国現代史」と「米中もし戦わば」が届き、雨模様の天気が続いたので雨読の日々だった。
「独裁の中国現代史」は今春発売された新書で、副題が(毛沢東から習近平まで)となっているが、文化大革命や天安門事件での弾圧、
チベットや新疆ウィグル自治区での強権的な同化政策など、歴史的な共産党独裁による圧政が分かる本だ。
GDP世界第2位の経済大国となった現在でも、都市部と農村部では戸籍が分かれており、格差の原因にもなっているが、
豊かさの恩恵を受けているのが共産党員や都市部住民だけという、共産主義の理想とはかけ離れた国だ。



そしてもう一冊の「米中もし戦わば」は、トランプ政権の対中強硬派として知られる大統領補佐官のピーター・ナヴァロが
カリフォルニア大学の教授の時に著した本で、日本ではトランプの当選が確定した2016年11月に出版されており、
その時には米中衝突というのが現実味がなく抜粋読みだったので、改めてじっくりと読み返してみた。
「米中もし戦わば」という刺激的な題名だが、原題は「CROUCHING TIGER」で、ボクシングのクラウチング スタイルと同じ意味なのだろうが、
本の内容は(米中もし戦わば)という前提の下に、軍事力の分析、予想される戦争への引き金、中国本土への攻撃、海上封鎖などの戦術面での
分析などが、45章にわたって書かれている。

その色々な角度からの分析には国防省やシンクタンクのアナリストのレポートからも引用されており、
現在の中国への警戒感は、トランプ政権だけでなく民主党も含めた議会も共通認識なのがよく分かる。
中国の武力侵略は1950年にチベットとウィグル自治区の征服によって始まったが、鉱物資源に富んでいるこの地域は
中国の国土の30%を占めており、(歴史的にみて中国の領土)という主張も根拠のないものだ。
台湾もしかりで、昨年のこの時期に12日間の台湾一周旅行をしたが、行く前に何冊も台湾に関する本を読んだが、
(歴史的に中国の領土)という中国の主張を裏づけるものはなく、蒋介石が本土から逃げてきたという事実だけだ。

そんな中国の拡張主義で、もし台湾が攻撃されたら・・という幾つかのもしへのアメリカの軍事的対応策の分析が書かれており、
(エアシーバトル)という中国本土への反撃作戦と(オフショア・コントロール)という海上封鎖作戦の2つの戦略がペンタゴンや
海軍大学校、ジョージ・ワシントン大学の教授連の分析が述べられており、度々引用されているのが海軍大学校の
トシ・ヨシハラという日系人教授の意見で、中国海洋戦略研究家として名高いらしい。
もしの一つに(尖閣諸島の危機)が米中衝突の引き金として書かれており、日本の核製造能力についても触れている。

中国共産党の独裁体制が維持されているのは、経済の成長で不満を抑えているという面があるが、それを支えているのが石油で、
中国が輸入する石油の70%はマラッカ海峡を通るので、海上封鎖されれば中国経済は壊滅的なダメージを受ける。
石油禁輸措置はアメリカのお家芸のようなもので、現代史上最初に石油禁輸を実行したのは1941年に日本への禁輸措置だ。
禁輸や経済制裁で追い詰める戦略は古くは対キューバ、近年は対ロシア、対イラン、対ベネズエラでも取られており、
孫氏の兵法(戦わずして勝つ)だが、本家の中国に対しその戦略が通商摩擦で通用するかどうかは分からない。

この本を読んでると南シナ海の人工島造成など中国の拡張主義の背景が見えてくるが、現アメリカ大統領補佐官によって書かれたものである事が
刺激的な題名だけの本ではなく、現実に存在するアメリカの中国への危惧の共通認識でトランプ政権から代わっても米中摩擦は続くのだろう。
小雨降る肌寒い、株取引の無い休日に読むにはピッタリの本だった。